日立製作所が1月31日に発表した2018年3月期第3四半期(2017年4〜12月期)決算は、収益力の向上を印象づけるものだった(撮影:今井康一)

「収益レベルは確実に上がってきている」――。 日立製作所の西山光秋・執行役専務CFOはこう自信を示した。

日立が1月31日に発表した2018年3月期第3四半期(2017年4〜12月期)決算は、調整後営業利益(IFRSで売上高から原価と販管費を控除したもの)が前年同期比27.2%増の4745億円、同利益率で7.1%、純利益も同35.2%増の2585億円。第3四半期累計の数字としては過去最高となった。

IT、社会・産業が改善、建機も中国で伸びる

前期の日立物流、日立キャピタル、日立工機の出資比率引き下げなど事業見直しによるマイナス影響や円安によるプラス影響を除く実質ベースで5%の増収。収益面では、情報・通信システム、鉄道など社会・産業システム、上場子会社の日立建機などが貢献した。


1月31日に日立製作所が開いた第3四半期の決算説明会で西山CFOは収益力の向上に自信を示した(記者撮影)

情報・通信では金融や公共・社会ビジネス向けのシステムインテグレーションが好調な上、約2年前から取り組んでいるストレージといったITハードの不採算製品からの撤退などの効果が着実に現れている。また、社会・産業でも鉄道の好調に加え、エネルギーや電力での赤字・低採算プロジェクトの終了が寄与する。加えて、特に中国需要の回復で建機の利益が大幅に伸びた。

日立は今回、2018年3月期の業績予想については第2四半期決算発表時点で引き上げた従来予想(調整後営業利益が前期比12.4%増の6600億円、純利益が同29.7%増の3000億円)を据え置いた。

これには営業利益で300億円、営業外で300億円のリスクバッファーを織り込んでいる。最大のリスクである為替に関しては第4四半期下期1ドル=110円、1ユーロ=120円を前提としている。ドルは若干円高にある反面、ユーロは余裕があり、「現時点なら(為替の)マイナスはない」(西山CFO)、「(為替以外に)第4四半期にプロジェクトが集中する社会・産業や中国ビジネスのリスクを見ている」(グループ財務戦略本部・加藤知巳担当部長)というが、現状ならば着地が上振れる可能性が高い。

日立は中期経営計画の最終年度となる来期(2019年3月期)に調整後営業利益率8%、純利益4000億円を目標としている。西山CFOは「十分に狙えるベースが出来た」とした上で「このレベルで満足しているわけではない」とさらなる収益アップに意欲を示す。

日立の収益力の向上が鮮明になればなるほど、2つの不安要因の影が濃くなる。

1つは、南アフリカでの石炭火力発電プロジェクトをめぐって、三菱重工業と争っている超過費用の負担問題だ(「好調日立を悩ます『南ア火力発電事業』の行方」)。


2014年2月に三菱重工と日立は火力発電事業を統合。当時の会見では、三菱重工の大宮英明社長(現会長)と日立の中西宏明社長(現会長)は固い握手を交わしていたが、今では両社は争う関係だ(撮影:山内信也)

2014年2月に三菱重工と日立は火力発電事業を合弁会社(三菱重工65%、日立35%)の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)に統合。事業統合に当たり、仕掛かりだった南アのプロジェクトは、統合前は日立が、統合後はMHPSが責任を持つことを前提に、三菱重工に譲渡された。しかし、最終譲渡金額の調整がつかず、昨年7月末に三菱重工が日立に対し、約7743億円の支払いを求めて日本商事仲裁協会(JCAA)に仲裁を申し立てている。

西山CFOは「仲裁プロセス入りしており守秘義務を負っている」とした上で「仲裁の場でわれわれの主張をしていくことと並行して話し合いでの解決を図る」と述べるにとどめる。この件では日立は前期までに一定の引当金を計上している。金額は非開示だが、仲裁判断次第で数千億円の損失計上のリスクがあると見られる。

英国原発プロジェクトが抱える数々のリスク

もう1つが、英国で進める原子力発電プロジェクト・ホライズンだ。

原発開発会社ホライズン・ニュークリア・パワーは日立の100%子会社で、同社が日立に原発を発注するスキームとなっている。つまり、発注者であり、受注者であるという利益相反の関係にある。建設費用が超過した場合、日立に逃れる術はない。また、プロジェクトのスキームが現状のままで非連結化を出来なければ、原発そのものをバランスシートに計上し続ける。内部取引になるので、原発メーカーとしての収益も計上できない。さらに原発による発電事業のリスクを抱え続けることになる。

このため、ホライズンへ出資者を募り、少なくとも日立の非連結とすることを、2019年内の最終判断でゴーサインを出す条件としてきた。今回も西山CFOは「最低でも持分法化し、資産をオフバランス(簿外)化するのが条件。英国政府との交渉や諸条件を総合的に判断する」とこの条件は変わらないとの見方を示した。


日立製作所の中西宏明会長は昨年末のインタビューで、「原子力事業は手放せない。この産業はいったん手掛けた以上、廃炉まで面倒を見る必要がある」と原子力事業に取り組む覚悟を語っている(撮影:梅谷秀司)

ただ、同プロジェクトについては日本政府も支援を表明しており、日本政策投資銀行(DBJ)や国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)など政府系金融機関の参加が検討されている。こうした動きは、プロジェクト推進や事業会社への出資者探しには追い風ではある。

反面、純粋なビジネスベースでの判断が難しくなる恐れはないか――さらに日本経済団体連合会(日本経団連)の次期会長に日立の中西宏明会長が内定したことで、その傾向が強まるのではないか――これが昨今、日立に対する消えない懸念だ。