「Thinkstock」より

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 男女平等ランキング114位――。

 世界経済フォーラムが発表する2017年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本はまた順位を落としてしまいました。私は10年前よりこの指数をみていますが、当時の日本は91位。この10年で23位もランクダウンしたことになります。

 しかし、これを「悪い」と結論付けるのは早計です。長期にわたり男女平等のありかたを見てきた身として、今だからこそ冷静にこの結果について考えてみようと思います。

●総合で114位、健康分野では1位という極端な国

 まずは男女平等ランキングの原本データにあたって詳細を見ていくと、驚きの数字が見られます。日本は「受けられるヘルスケア」分野での男女差別は世界で一番少ない国なのです。

 男女差別の激しい国では、「女児を妊娠した」と判明した時点で堕胎するケースも多くあります。さらに男性が治療で優先されることもままあるのですが、日本では男女がまったく同じようにケアを受けています。というより「治療で男女差別がある」などということを思いもしない方が多いでしょう。それくらい、ヘルスケア部門で日本は男女平等が浸透しているのです。

 それでも総合スコアで114位になった背景としては、政治への進出度、そして重役における女性比率の少なさが挙げられます。「日本の女性はきわめて健康だが、政界への進出や出世は諦めざるをえない」と、少なくとも大多数の国からは見えるのです。

●「男子相続」の地盤と現場環境不足

 一般的な認識としては「別に女性だからといって差別はない」とされますが、政治の世界でも二世・三世議員が多いなかで男子が「地盤の跡継ぎ」として優先されることは、否定できないでしょう。これは日本の大多数を占める中小企業、特に家族経営の企業でも似た傾向にあり、結果として女性の重役比率を下げています。

 また、議員や会社の重要なポストになっても女性は働きづらい環境に置かれます。つい最近、女性議員が乳幼児を連れて議会へ出席したところ退席させられる事態となりました。この議員は以前から「議会開会中に子どもを預ける場所がない。保育園やベビーシッター助成などの整備を」との要望を出していましたが、無視されてきたうえでの手段だったため、「突然子どもを連れてきた」とはいえません。

 ここで重要なのは、「日本社会は積極的に女性を差別しようとしているのではない。あまり考えずに慣習として男性を優遇していたところ、男女平等度で後進国となった」という点です。男性は女性を滅多打ちにしたい悪魔ではありません。また、女性も「女がそんなにがんばったって」と言って差別を助長することはままあります。

 私が新卒で外資系企業の総合職へ就いたとき、「女の子なのに働かなきゃいけないなんて、かわいそうに」と複数の男女を問わない同級生から言われました。「男は敵だ」でもなければ「女の敵は女」でもありません。

 男女平等ランキングも、悪化したというよりは日本だけ改善しなかったのです。この10年、日本は男女問わず「このままでいい」という気持ちでズルズルやってきたのでしょう。個人的には男女平等を促進したいという気持ちはありつつも、日本人の大多数が望んでいるなら仕方ない。「私は私で、男女平等にするメリットをささやかに伝えていこう」という気持ちでいました。

 それに、各国へ滞在するなかで「世界のどこにだって男女差別はある」という事実にも気づかされました。飲食店で女性へはメニューの価格を表記しないイタリア、共働きで家事もこなさざるを得ないイギリス、専業主婦が財布の紐を握るなんてあり得ないドイツ――。どの国にも課題があり、日本はある面で他国より男女平等が進んでいるともいえるのです。

●日本に外国人が来てくれない

 ところが、ここで問題が生じます。労働人口の減少です。日本は少子化が長期間続いており、今すぐに児童が増えても将来の労働力不足は防ぐことができないという見方が広がっています。となれば、税金を負担するためにシニアが活躍したり、移民を増やしたりするしかありません。

 しかし、海外の人々にとって「あそこって、男女差別激しいんだって」と噂になっている国へ行く気持ちは穏やかではありません。「嫌なら出ていけ」というのは勝手ですが、移民には医師や看護師など高齢社会に欠かせない専門職や、若者の代わりに活躍してくれるであろう肉体労働者も含まれています。いかに世界中でお国柄に沿った男女差別があるにせよ、「日本って、意外と男女差別ないんだよ」というイメージを植え付ける必要があるでしょう。男女平等はメンツや価値観の問題ではなく、世界の優秀な人材を誘致するための材料なのですから。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)