スタートトゥデイの東京・青山オフィスで取材に応じる前澤友作社長(撮影:風間仁一郎)

予約受付から早2カ月――。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイは、昨年11月22日に発表した瞬時に採寸できるボディスーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の発送を始める。ゾゾスーツを活用し、オーダーメイドで製造するPB(プライべートブランド、自主企画商品)の「ZOZO(ゾゾ)」も発売される。
同時にスタートトゥデイは1月31日、2017年度の第3四半期(2017年4月〜12月)決算を発表した。ゾゾタウンに出店するブランドは6000を超え、商品取扱高1969億円(前年同期比33%増)、営業利益235億円(同22.1%増)に達した。ゾゾスーツやPBは、ゾゾタウン事業に次ぐ第2の柱になるか。PB発売を前に自らゾゾスーツを着用してインタビューの場に現れた前澤友作社長を直撃した。

あらゆる体型の人にフィットする服を提供

――それ、今着ているのってゾゾスーツですよね……。

今日は何社か取材を受けているが、自分たちのPBのTシャツをずっと着ていて、そろそろ飽きてきた。こんな格好でインタビューに出た人はあまりいないと思う。ファッションメディアでは「前澤さんだとそういうことをやるだろうな」と予想されてしまうが、逆にビジネス誌の取材だったら面白いのではないかと。取材を受ける寸前に決めた。

――当初の予定より、ゾゾスーツの発送とPBの発売が遅れた理由は?

ゾゾスーツに対する世間の期待が私たちの想像を超えてかなり高く、スーツの精度をもっと上げるべきだと判断した。(ゾゾスーツの予約受付を始めた)昨年11月の段階では、特殊な体型の人が着た場合に採寸の精度に誤差が見られていたので、その改修・バージョンアップをする中でお時間をいただいてしまった。より高い精度が担保できたので、配送を開始する運びになった。

――PB発売までの経緯を教えてください。

「PBをやるぞ」と言い出したのが約7年前。自社のブランドをやるなら、規模の大きな、世界の人たちをターゲットにするようなブランドにしたかった。誰にでも着てもらえるベーシックな衣料がコンセプトだ。今回はデニムとTシャツでのスタートだが、すでカジュアルシャツや、ビジネスシーンで着用できるものも裏では作っている。ゾゾタウンに出店するブランドとかぶらず、多くの人に届けるブランドにしようという考えがあった。

ベーシックで安価な商品は、ほかのブランドと同じものを作っても意味がない。あらゆる体型の人にフィットする、サイズバリエーションの豊富な衣料にしようという考えが出てきた。あらゆる人々の体型を把握しないといけないが、一軒一軒自宅に訪問したり、どこかの会場に集まってもらったりして、採寸するわけにはいかない。

ネットを通じてお客様の体型データを集める方法はないか。いろいろな人の体型を測る採寸技術を世界中で調査しているうちに何年もかかった。そんな中、ニュージーランドのストレッチセンス社の伸縮センサーの技術を見つけた。これをボディスーツに当てれば、自分たちがやろうとしていることができるかもしれないと、一気に話が進んだ。その後、出資をして共同研究の後、ゾゾスーツが出来上がった。


ゾゾスーツは上半身と下半身に分かれており、上半身には胸部にストレッチセンス社製のセンサーが埋め込まれている(撮影:風間仁一郎)

――PBへの具体的な投資額は?

ゾゾスーツはPBのためだけでなく、ゾゾタウンでの商品検索を便利にするところでも使えるため、これに対する投資をゾゾタウンの投資とするかPBの投資とするかでも違ってくる。今、会計上は両方で考える処理をしている。なので、PB単体でいくらの投資という数字はすぐに出せない。世界中のトップブランドに匹敵する規模、それを超えるような規模感で将来像は描いている。

――目指す売上高は1兆円や10兆円規模ということになりますか。

もちろんです。

――ゾゾタウン開始当初からPBをやりたいという考えはありましたか。

いつかものづくりをしたいと思っていた。ずっとゾゾタウンをやっていても、出店しているブランドが作ったものを売らせてもらう立場で、お願いをして売らせていただいていることが続いていた。

お客様が求めているものとブランドが提供するもののミスマッチを散々見てきたし、何より自分自身が身長も低く、自分に合う服を見つけるのが困難だった。ずっと、サイズが幅広くあるベーシック衣料に可能性を感じていた。その思いが融合して今回の実現に至った。

――ブランドとお客のミスマッチとは具体的に何ですか。

サイズがS、M、Lの展開をしているブランドが多く、背の低い人や、逆に高い人も買いづらい。僕らがどういう企業努力をしてもどうしようもない、自分たちが作るしかない、という状況でずっとジレンマがあった。

ファッションビジネスをやっていると、数センチ単位でのシルエットの大事さが分かる。ただ、それに見合うスペックや、いろんな体型に対応できるブランドがない。であれば、自分たちでやろうと考えた。ターゲットは老若男女、世界中のすべての人。おそらくデニムパンツは誰でも持っている。その人が履くデニムの中で、「こんなぴったりのもの人生で初めて履いたよ」と言ってもらえるようなデニムパンツを目指している。

アパレル企業のトップを超えたい

――目指す事業規模は数年以内に今のゾゾタウン事業を越える規模ということですか。

アパレル企業で世界のトップは約3兆円の売上高があり、そういう企業も越えていくつもりでやっている。数年内にPB事業が今のゾゾタウン事業の規模を超えていかないと、これも夢のまた夢で終わってしまう。

――リアル店舗でPBを売る可能性はありますか。

ネットだけで売る。ゾゾスーツがあることで、洋服がネットで買いやすくなる時代になる。その習慣をさらに広げていけるし、われわれはその責任を負うと思っている。

将来的にはスマホの普及率くらい、ファッションでのEC(=ネット通販)を普及させていきたい。ECで買うほうが魅力的になれば、そちらで買う。公衆電話よりもスマホのほうが便利だから使うわけで、魅力的なほうに人は流れていく。

――採寸データをPB以外でどう活用する予定ですか。

宝の持ち腐れにならないように、貴重なデータを皆さんのために有意義に使っていきたい。「スタートトゥデイ研究所」を作り、このボディデータを社会の発展のために使ってくれるような企業や研究者がいれば、ともに研究したい。研究所のテーマは、ファッションを数値化すること。ファッションは「かっこいい」「かわいい」と直感的に言うことが多いが、どういう人がどういう服をどう着こなせばかっこいいのか、数字で答えを出してみたい。単純なデータの外販は考えていない。

――体型に合わせた個別生産では大量生産に比べて手間がかかります。

オーダーでも、同じ生地を使うし、同じミシン、裁断機を使う。カスタマイズされて、ワンツーワン生産に適した機械が世の中には出始めている。そういうものを掛け合わせると、大量生産していたときと何ら変わらないコストや時間で、オーダーの大量生産ができる時代になりつつある。お客様の体型を知るというインプットと、その方に合ったものを生産するというアウトプットの連携がうまく取れて、初めてビジネスになる。

たとえばデニムはサイズパターンだけで数千パターンある。デニム1本で数千パターンをやった企業はないと思う。他のブランドがやっているのはセミオーダーが多く、事前に百種類程度のサイズを用意しておいて、その人にもっとも近いものを送るという仕組みだろう。

――在庫リスクはゼロといえますか。

ゼロではない。

あらかじめ、だいたいこういう体型の人からこれくらいのオーダーが来るだろうという量は見込み発注しているが、在庫を抱えすぎずに、ある体型の方からオーダーが入ったときにすぐに生産できる体制をとっている。

なのでリードタイムとして、在庫があるものは即日、なかったとしても生産から配送までに最大2週間程度しかいただかない予定だ。オーダーメイドであるという前提なので、今日中に欲しいというお客様は少ないのではないか。少し待ってくれる余地があると思う。ゾゾスーツを配布する中で、測っていただいた方の体型データがどんどん情報で入る。どういうものを用意しておくべきかおのずと分かってくる。

当面は品番数を広げるつもりはない。大事なのは、「ぴったり合うサイズってこんなに気持ちいい、こんなにきれいに見えるんだ」と体感してもらうこと。品番をむやみに増やして、「あそこにいけば何でも揃うね」と思ってもらう必要はない。

――ゾゾタウン事業は一見順調に見えますが、商品単価の下落や値引きでの誘客も目立ちます。ネットで価格競争が過熱する状況をどうみますか。

(セールを乱発し)定価で買った人が悲しむような商売は長く続かない。今は「定価で買うと損」という風潮になってしまっている。われわれのPBブランドは店舗もなければ店員もいないので、一般のブランドがかけていたコストがかからない分、最初から低価格で提示する。今までのアパレルから考えると、常識を逸脱するくらいの(高い)原価率で売る。

――アパレルの商品価格が下がるのは必然と言うことですか。

必然ですね。今までがおかしかった。将来的には各社が(定価の設定を見直すなどして)セールをしなくなり、在庫も効率化していくだろうから、値段は全体的にどんどん下がるかもしれない。

僕らからすれば相乗効果

――PBとゾゾタウン事業とのバランスをどう取りますか。

両軸で、相乗効果で伸ばしていきたい。PBが売れれば、ゾゾスーツが広まり、ファッションは楽しいと思う人が増える。ファッションが好きな人が増えれば、ゾゾタウンが売れる。ゾゾタウンでいくら探しても自分に合うサイズがなければ、PBを買ってみようとか。あらゆる面で相乗効果が生まれると思う。

EC(ネット通販)で買うのはサイズがわからず怖いが、ゾゾスーツという採寸できるスーツが出たらしい。じゃあ着てみて買ってみよう。ぴったりのTシャツが届いた。ECってこんなに便利なんだ、というのでも良い。ECを運営する会社が自社ブランドをやるのは、カニバリゼーションだと言われるが、僕らからすると相乗効果。よりファッション好きな人を増やし、両方を伸ばしていく思いでやっている。

――ゾゾタウンの事業には限界はないのですか。

アップルが良い例で、自分たちで製品を作りながら、プラットフォーマーとしての存在を確立している。iPhoneが売れればiTunesも流行るし、iTunesに良い楽曲が集まればiPhoneがほしくなる。われわれも「ファッションのアップル」ではないが、自分たちの商品もあり、プラットフォームもしっかりとある、というイメージを目指している。

「今はアクセルベタ踏み状態でやろうかな」

――前澤社長はブレーキとアクセルの使い分けがうまく、ここぞというときにアクセルを踏むと経営幹部の方から以前聞きました。今はどんな状態ですか。

服がもしかしたらネットで売れるなと思っていたのが20年近く前。ちょっとやってみたら反応がとても良くて、これはいけるということで始めて、今に至る。そのときと似た感覚が今現在はあって、「これはいける」という感触があるのでアクセルを踏んでいる。

この数年は、アクセルコントロールをうまくしながらカーブをコーナリングして、自分の考えたストーリーを調整していた。今は信じる新しいものが見えて、直線をベタ踏みで行っても怖くない。小石があってガタガタっとなっても、わき目も振らず、ベタ踏み状態でやろうかなと思っている。

ぴったりの服を自分も欲しいし、ぴったりの服を求めている人が世界中にいる。どうにもそれを実現できなかった。

”ぴったりの服なんてお届けできるわけがない”というジレンマがずっと続いていた。だが、ついにこの何年かで研究開発した結果、その両方を解決する手段を見つけて、一直線になった。だったらこの道路をべた踏みで突き抜けるしかないだろうという状況が今です。

――PB事業の課題は何ですか。

国内は顧客基盤もあって評価して頂いているので、あとはちゃんとしたゾゾスーツや商品を提供できればいい。何よりのチャレンジは海外です。ゾゾタウンなんて誰も知らないし、ゾゾスーツと言っても「SFの世界の話じゃないの」とみんな思っていて、これを認知いただくには相当なチャレンジが必要になる。今はロサンゼルスとベルリンに現地法人があり、シンガポールでも準備を進めている。まずはその3都市を中心に、世界中でどんどん広げていきたい。

――日本発のブランドが世界を変えるには相当な労力と時間が必要では?

意外とそうでもなく、すってんころりんファッション業界を変える可能性があるかもしれないと思っている。世界中の誰もが、自分にぴったりと合うデニムパンツを必要としているのに、実際に売っている人も手段もない。やっと見つけたという感じだ。ただ、最初にそれを認知してもらうために相当な努力が必要になる。

――現在、国内1番手のアパレル企業は「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングです。

まだまだ大先輩で背中を見ている状況だが、早い段階で並びたいし、超えられるチャンスがあるのだったら超えていきたい。

IT業界は若い方々が塗り替えているが、ファッション業界では昔ながらの重鎮の方々が世界を牽引している。そういうところに若い企業が入っていくべきだし、自分もチャレンジしたい。30〜40代では世界規模でビジネスを展開している人があまりいない。新しい世代で新しいマーケットに変えたいという責任感はある。そのきっかけに、ゾゾスーツがなるのではと期待している。

――副社長兼CFO(最高財務責任者)の胗澤孝旨氏が過去の東洋経済のインタビューで、「ライバルは強いて言えば百貨店」と話していましたが、前澤社長は競合をどう見ていますか。

読んだときに「何でこんな事を言っているんだろう」と思ったけど(笑)。僕はそもそも競争が嫌い。なので、人がやっていないことをやらないと飽きてしまう。誰もやっていない自分たちにしかできないことをやることでしか、存在意義がないと思っている。

――ゾゾタウンとPB以外の新しい事業の構想は?

今のところ考えていない。2つの事業に集中して、よりファッションの会社になっていく。プラットフォームばかりの会社を目指すだけでもないし、メーカーだけでもない。アップルのように、どちらもバランスを取って相乗効果が出せるようなビジネスにしていく。

イノベーションがあれば大企業病にならない

――上場10年で会社の規模も大きくなりましたが、大企業になることのリスクは感じますか。

まったく感じないですね。むしろ大企業になったからこそ影響力も出て、資金もたくさんある。認知もされて”いいことずくめ”としか思わない。僕の言ったことがなかなか伝わらなくなってきたり、組織がまとめづらくなってきたり、細かい大企業病のようなものはもちろんある。ただ、そんなことは微々たる話。

その状態が続く限り、いくら会社が大きくなったとしても、意思はひとつにまとめることができると思う。イノベーションが起きず、成長しないことが一番危機感を抱くべきところで、今はイノベーティブな取り組みをして、みんなが楽しく社会に貢献できています。

むしろ、何でもっと早く大きくしなかったのだろうと思います。悩んだこともあったんですよ。会社を大きくすると、いろいろとうるさいこと言われるな、上場なんて面倒くさい、とか。今となって思えば、もっと早く上場しておけば良かったのに。人生は短いから、今でもそこは後悔している。そういった後悔もあって、今はもうアクセル全開でやっていますから。

「週に3日しか会社に来ないくせに何を言っているんだ」と言われるかもしれないが、週3日しか会社にいないだけであって、頭の中は会社のことばかり考えている。普段、寝ているときも会社のことを考えています。

――元々バンド活動からファッション業界に入って、やりたいことは今、どれくらいできていますか。

まだ1%くらいですかね。

年を追うごとに、考える規模感が大きくなっていて。自分の小ささや実際にできないことも痛感しているので、満足する日は死ぬまで来ない。死ぬまで成長したいという思いがあるので、5年後10年後どうなりたいというのは言えない。早くもっと世界的に影響力のあるプロダクトを生み出していきたい。

音楽をやっていた時もそう思っていましたが、思ったよりCDも売れなくて、良い曲が生み出せなくて。それでビジネスを始めたら、思ったより良いビジネスが作れた(笑)。音楽よりこっちの方が得意だったということですね。