ダメ資料になっていませんか?(写真:Ca-ssis / iStock)

案件の受注、新規プロジェクトの提案など、仕事でプレゼンをする機会は多い。そして、その際に使用するパワーポイントの資料は、時に仕事の正否に直結する。
そんな重要なプレゼン資料の作り方には、長年培われてきたセオリーがあり、それを無視して資料を作ってしまうと、どんなに提案内容が良くてもプレゼンで失敗する恐れがある。
マッキンゼー・アンド・カンパニーでプレゼン技術を学び、『外資系コンサルのプレゼンテーション術』を出版した菅野誠二氏が、ありがちなダメ資料の特徴を解説する。

プレゼンテーションとは何か。こちらのアイデアを聞き手にプレゼントし、受け取って態度を変容していただくように相手を口説く行為です。

そのための方法は、会議であったり、プレゼンテーションの実演であるわけですが、相手に手渡したりプロジェクターでスクリーンに表示する「資料」の出来映えは、時にプレゼンの正否に直結します。冗談めかしてではありますが、私はかつて顧客に「仮にそのアイデアを枚数割りすると、提案資料には1枚100万円以上の価値はあるか?」と問われたこともあります。

そんな重要なプレゼン資料の作成を、みなさんはどのようにやっているでしょうか。無手勝流で何とか作れるようなものではありません。通常の業務に使用する資料ならともかく、私が「勝負プレゼン」と呼ぶ、会社の業績や自分のキャリアに影響を与えかねない重要なプレゼンテーションを行う際は、それなりのルールを守り、作法に則り、資料を作成しなければなりません。

それらを無視してPCとパワーポイントを立ち上げて自分勝手に資料を作成することは、負けに繋がる「ダメプレゼン」への第一歩です。

ここからは、少なくともこの3つは押さえておきたいというチェックポイントについて注意点を解説しましょう。

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「あれもこれも伝えたい」と、ついつい1枚のチャートに文字を詰め込んでしまう人は多いものです。それに伴って文字の級数(ポイント)も小さくしてしまいがちですが、小さい文字で読みにくいチャートを作り、相手をいら立たせる事態は避けるべきです。会社の上位職の方は視力に弱点を抱えている場合が多いことを知っておくべきでしょう。

本文で使用する文字の級数は、最低でも16ポイント、できれば20ポイント以上にしましょう。会場の設定によってスクリーン上の資料の見え方が変化するので、リハーサルをする際には席の一番遠くに自分で座ってみて、視力が悪い方でも確実に読めるかどうか確認しましょう。文字の読みやすさに注意を払うことはチャート化の基本中の基本です。

また、そもそも文字数が多いチャートは敬遠されるので、目を細めて画面を見て、字で真っ黒と感じたら、大胆に文字数を削ります。

また、チャートで使用するフォントにもこだわりましょう。

脳科学者の研究によると、デザインの視認性とそれによって引き起こされる感情には関連があり、一画面に2種類以上あるいは3サイズ以上の書体があると、それ以下のデザインと比較して感情関与が顕著に阻害されるそうです。無秩序に多くのフォント(書体)と文字サイズを混合して使用しないことです。

明朝体ではハネ、英語ではTimesなどの書体にある、文字の端の小さな飾りを「セリフ」と言いますが、歴史を感じさせ、格調高い本やレポートには向いています。しかしながら、プレゼンテーションに使用するときは古臭い印象を与えます。

ゴシック体やサンセリフ体などセリフがなく、癖の少ない、現代的な書体を1つか2つ使用しましょう。似ていながら微妙に印象が異なる書体を混在させることは慎みましょう。個人的には、書体の「Meiryo」は見た目だけでなくスペース効率が良いので、文章をコンパクトにまとめることができますから、お勧めします。

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プレゼンの資料作成には「1チャート1メッセージ」という原則があります。1枚のチャートには一番主張したいメッセージを1つに絞り込み、それをタイトルにするのです。

言われてみれば当たり前のことかもしれませんが、意外にこれができていない人が多いのです。

たとえばあなたが飲料メーカーの社員だとします。そして、カテキンやアミノ酸を配合した機能性飲料市場が伸びていることを上層部にプレゼンで訴えたい場合、棒グラフなどでその推移を示すことがあると思います。その際に、その棒グラフが書かれたチャートのタイトルに「機能性飲料市場の推移」と書いたりしていないでしょうか?


ただの分析結果になったチャート

「機能性飲料市場の推移」は「メッセージ」ではありません。「分析名」です。これではグラフの解釈を聞き手にゆだねることになり、場合によっては「想像していたよりも伸びていないのでは」などと解釈されかねません。

もしそのグラフから市場の伸びを伝えたいのであれば、チャートのタイトルは「機能性飲料市場は過去5年で3倍に拡大」としたり、より注目してほしい事象を指摘したり、踏み込んだ解釈を込めたメッセージをタイトルにしましょう。


メッセージがチャートに意味を持たせる

たとえばチャートのタイトルを「2013年に競合A社の新製品Y`s投入で逆転後、差は1対10まで開いて、危機的状況」というメッセージにしておけば、次のチャートで「XX機能性飲料事業は、テコ入れすべきか撤退か、2つのオプションがある」などというメッセージに自然とつなげやすくなります。

ダメな資料――ビジュアルで騙そうとする

パワーポイントはビジュアルで相手に訴求する手段です。ビジュアルを効果的に使うことは奨励されてしかるべきですが、ビジュアルで騙そうとしてはいけません。

たとえば、見た目で騙すテクニックとして、以下のようなものが多用されがちです。

・ラインチャートやコラムチャートのY軸のベース部分を切り取って、売上のちょっとした上昇を過大に表現する
・主張したいメッセージに合わせてヒストグラムのX軸の小区分の間隔設定を意図的に調整し、印象がまったく異なるチャートにする
・ある年を意図的に基準点の100%としてそこからの増加率を指数換算し、パーセンテージ表記のラインチャート化する

聞き手が数字に強い場合、これらはまったくの逆効果で「なるほど、私を騙そうとしているのだな」と否定的な反応を引き出すことがあります。ビジュアルでの強調は良いですが、過度な印象操作はプロフェッショナルとして恥ずべき行為です。

図表のスケール選択では、基準点は0からを原則とし、軸を恣意的に切らないことです。ヒストグラムのX軸も両端の極端な値の排除以外は等間隔にすることなどは、守るべき原則です。

プレゼンの資料作成をする上での注意点は他にも多くありますが、まずは今回ご紹介した「文字を大きく」「チャートのタイトルにメッセージを入れる」「ビジュアルで騙そうとしない」だけでも心がけてください。少なくとも大失敗はしなくなるはずです。