「自己流」でやっていいのは基本がちゃんとできてからです(写真:franckreporter/iStock)

今まで人材育成コンサルサントとして多くの経営者とお会いしてきましたが、冒頭、必ずこう聞かれます。「部下が、なかなか使える人材に育たない……どうしたらよいか」。いわゆる個の能力が高いリーダーの方々ほどこの悩みを抱えている印象があります。

私は、幹部自衛官を育成する目的で創設された防衛大学校(以下防衛大)を卒業しました。防衛大に入校する若者はほとんどが普通の学生で、もともと優れたリーダーシップを持つ者は一握りです。しかし4年間のリーダー教育を受けると(もちろん過酷な生活に耐えきれず毎年1割の学生が小原台を去りますが)卒業時にはみな立派なリーダー、国家防衛を担う人材として巣立ってゆきます。

私は、防衛大時代に叩きこまれたリーダーシップをメソッド化し、拙著『防衛大流 最強のリーダー』などにまとめていますが、このメソッドは特に新人には面白いように効きます。

「摸倣実践」新人にはとにかくマネをさせろ

新人にもいろいろいますが、まずは教えるというよりはデキる先輩のマネを徹底的にやらせることがいちばん良い。これは防衛大1学年時に痛いほど実感しました。防衛大には次のような標語があります。

「模倣実践の1学年」。模倣実践とは、とにかくマネをして、そのマネの実践を繰り返し続けることです。実践を繰り返しながら自分たちで創意工夫を行うわけですが、1学年時にはとにかく上級生のマネをすることを徹底させられます。マネすらできない学生は「ダメっ子」と呼ばれ、マネができるまでとことん指導されます。一方、4学年の標語は「率先垂範」です。徹底的に下級生を引っ張っていく。

つまり、1学年時にマネをして防衛大でやっていけるだけの基礎力を身につけ、4学年時、リーダーになったときに徹底的に下級生を引っ張っていくというリーダー育成課程なのです。企業でいえば、あいさつ、電話の応対の仕方から会社案内に至るまで、全部マネをさせるということです。社内のロールプレイングだけでなく営業にも一緒に連れていき、それこそ一言一句、マネさせます。あとは自分1人で営業したときにだんだんわかってきて、自分なりにカスタマイズしていくことになります。そしてキャリアを積んでいき、リーダーになったときには逆に部下を徹底的に引っ張っていけるでしょう。

ちなみに、「学ぶ」と「真似る」はもともとどちらも同じ「真似ぶ(まねぶ)」という言葉が語源だといいます。「真に似せる」の意味から「真似る」となったのでしょう。「誠に習う」から「学ぶ」が生まれたともいわれています。習うの「習」という漢字は、ひな鳥が羽をバタバタと動かして飛び方を習うことから生まれたので、繰り返し練習するという意味もあります。

防衛大では、入校したときはまったくリーダーシップを発揮できなかった学生でも、卒業時には立派なリーダーとなっています。その背景にあるのが1学年時に徹底的に上級生のマネをすることにより身につけた「基礎力」なのです。

基礎力がない者に応用力はない

防衛大では「私は人のマネをするのは嫌です」「自分のやり方でしました」なんてことを口にする1学年はまずいません。そんなことを言えば強烈な指導が待っていますし、そもそも入学前の高校生活とは次元が違いすぎて、先輩のマネをせねば生き抜けないからです。そして1年間で徹底的に身につけた基礎力がなければ、将来、幹部自衛官として優秀なリーダーになれないことが肌感覚としてわかります。

ですが一般企業となると、ごくまれにまったくの新人がエッジの利いたすばらしい発想を提案することがあるでしょう。それがいいアイデアで、周囲もやってみてうまくいくようなら、その発想を取り入れたいもの。そのような新人がいれば本当にありがたいかぎりです。

しかし、仕事には100%うまくいくという保証はありません。エッジの利いた発想を追い求めることは大事ですが、まずはビジネスパーソンとしての基礎力を身につけさせねばなりません。

まずは上司のマネをしてみて、得意先でそのマネを試してみて、うまくいけばそのまま使えばいい。でもお客さまも千差万別です。すべてがうまくいくことなんてありません。うまくいかなければ、そこからは自分で創意工夫をする必要がある。この創意工夫の連続は新人にとって貴重な経験となります。でもそのラインに立つには、どうしたって基礎力が必要なのです。

A・B・C・D段階の仕事があるとすれば、Cランクまでは基礎力で何とかなります。そこからBランク、Aランクに行くには、いずれにせよ自分たちでどうにかするしかありません。しかし、基礎力がなければ、DランクからCランクにも行けない可能性がある。Cまではマネで何とでもなるのです。

防衛大では、「マネ」によって最低限やっていける人間をつくります。使い物にならないままでは絶対に終わらせないというスタンスがあるのです。その経験から私は、新人には最初は徹底的にマネをさせ、その後、自分のオリジナリティをどんどん取り入れさせたほうが、成長スピードは速いと確信しています。

100%やれることを、100%やらせているか

防衛大時代、先輩から最も指導(今はないようですが、鉄拳制裁ふくむ)を受けたのは、「100%できることを100%やらなかったとき」でした。たとえば、防衛大の掟「ウソをつくな、言い訳するな、仲間を売るな」つまり「絶対に保身に走るな」というこのルールを破ったときは、こっぴどく指導されました。理不尽と思うときもありましたが、よくよく考えてみるとこれらは誰でも実行できるルールです。

ルールとは100%守らなければならないもの、そして100%守れるものだけが本来、ルールとして設定されるべきです。防衛大では、毎日の容儀点検前のプレスなど守るべきルールが多々ありますが、それらは「誰でも時間さえあれば100%できる」ことでした。極端な話、小学生でもできます。つまり防衛大では、「100%やれることを100%やれ」という教育が徹底的に行われるのです。

この考え方は一般企業でも役立ちました。私は入社2年目からトップセールスになりましたが、ほかの営業担当と比べたときに決定的な違いが「100%やれることを確実に行っていた」ということです。

ある日、上司から「毎月10件のお客さまとのアポイントを取れ」と指示されたとします。ここで大切なことがあります。それは「10件のアポイントを取るためには何をいつまでにどれくらいすればよいのか」ということをしっかりと定量化すること、そして、定量化したことは100%確実にやり切るということです。たとえば、5営業日で200件の営業電話をかけると自分で決めたとします。200件の電話をするということは、まぁ時間をかければ誰でも100%できるプロセスです。

私はこの「プロセス」にとことんまでこだわりました。10件のアポイントが取れようが取れまいが200件は確実に電話する。ほかの営業担当も多くが200件と決めていましたが、100件の電話で10件アポイントが取れてしまえば電話を途中でやめたり、100件やって1件も取れなければ、途中でほかの方法でアポイントを取ろうとしたりと、当初決めた「200件の電話をする」をやりきることが少なかったのです。


そもそも200件電話したところで10件のアポイントが取れるかどうかはわかりません。特に入社1年目はなかなか成果が出ません。たまたま、良い結果が出たときもあります。

ただ、良い結果が出ようが出まいが「結果に至るまでのロジックをしっかりと検証し続け、次に活かす」ということを大事にしました。100%やれるプロセスを100%行わずに、結果に至るまでのロジックを検証することはできないし、検証できないのであれば、当然次に活かすことはできません。

そもそも、たまたま出た良い結果に再現性はありません。2年目になると成果を出すまでのノウハウもたまってきます。何をやれば良い結果が出るのかがほのかにわかってきます。売り上げが上がるようになり、私はそのおかげでトップセールスを取ることができました。

“100%やれることをやらなかったら、ただじゃすまないぞ”防衛大時代のこの教えこそ、新人が結果を出すためにまず取り組む、そして上司が徹底的に守らせるべき、最初のルールなのです。