ドンキホーテHDの12月の免税売上高は過去最高だった

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 小売業が訪日外国人客(インバウンド)の“財布”を狙ってしのぎを削っている。訪日外国人客の国内消費額は2017年に4兆4161億円(前年比17・8%増)と、初めて4兆円を突破。客数は2869万人(同19・3%増)と増加が続く。政府は20年に訪日外国人客4000万人・消費額8兆円を目指しており、消費市場拡大が見込まれる。日本人の少子高齢化が進む中、訪日外国人客の旺盛な消費取り込みは死活問題だ。

閉店時間で泣き笑い
 「なくなることは考えづらい“堅いマーケット”になった」。日本百貨店協会の西田光宏常務理事はこう語る。百貨店業界における17年の免税売上高は前年比46・3%増の2704億円。“爆買い”ブームに沸いた15年の1943億円を大きく上回り、過去最高を更新した。

 百貨店業界全体の17年売上高は5兆9532億円。同0・4%減と4年連続のマイナスが続いている中、明るい材料と見る。「(訪日客に)化粧品や婦人向け服飾雑貨の人気が続いている。

 東京五輪に向け、上昇基調に変化はないのではないか」(山崎茂樹専務理事)と話す。化粧品は日本ブランドへの信頼が高い上、百貨店のカウンターでのコンサルティングサービスが支持を集めている。

 一方、百貨店の弱みは閉店時間だ。業界では19―20時ごろを閉店時間とする店舗が多いが、これでは訪日客が観光地を巡ったり食事をしたりした後に買い物などを楽しむ“夜遊び消費”を取り込むのは難しい。

 逆に夜遊び消費に強みを持っているのが、24時間営業が基本のコンビニエンスストアや、深夜まで営業しているドラッグストアやディスカウントストアだ。

 業界で深夜営業に革命を起こしたドンキホーテホールディングス(HD)の17年12月の免税売上高は過去最高を記録している。

 マツモトキヨシホールディングスやウエルシアホールディングスは運営するドラッグストアの一部で、24時間営業を実施。駅近くなど需要が見込める場所では免税手続きにも対応している。

 全国のドラッグストアでの購買データをもとに、訪日外国人客に人気の商品を分析しているTrue Data(東京都港区)によると、リップクリームや目薬といった定番品に加え、厚手のタイツや紅茶のティーバッグの人気が高まっている。日常で使える物や、土産としての需要増を反映しているという。

海外にない業態、コンビニに高い関心
 訪日外国人客は、多様な商品やサービスを扱い、海外にはない業態の“日本のコンビニ”への関心も高い。ローソンは17年1月、中国アリババグループの電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」の決済サービスを全店で開始。このアリペイの利用状況を分析すると、おでんの大根やフライドチキンの売れ行きが良いことが分かった。1年を通して温かい食べ物を好む中華圏の訪日外国人客の需要が高い。

 同サービス利用者の1月の購入単価は、前年同月比70%増の約1500円。非利用者の客単価は約540円(17年12月実績)であることを考えると魅力的な市場だ。

 ローソンは土産物として人気が高い抹茶菓子や爪切りなどの品ぞろえを充実したインバウンド対応店舗を、1月末時点で580店展開している。

 今月22日には、東京・銀座の商業施設「ギンザシックス」内の店舗で民泊向けの需要も見込み、鍵の受け渡しサービスを始めた。

 訪日の“前後”に着目する動きもある。観光客は訪日前に、インターネットなどで情報収集する。商業施設向けコンサルティングを手がけるリゾーム(岡山市北区)は「(若い世代らに対する情報発信力がある)インフルエンサーの意見は集客につながる」と見て、日本に住む中国人女性がショッピングセンターなどを案内する動画配信の提案を始めた。

 ドンキホーテHDは16年に越境EC(電子商取引)に参入。帰国後のリピート買いも取り込む狙いだ。

苦戦する総合スーパー
 一方、苦戦している業態もある。イオンやイトーヨーカ堂も運営する総合スーパーマーケット(GMS)の一部で、免税手続きを可能にするなど、訪日客に対応している。

 ただ、立地条件などの問題もあり、土産のまとめ買いなどの需要はあるものの、空港近くなどの店舗を除いて収益の大幅な拡大にはつながっていない。

 また、三越伊勢丹ホールディングスや高島屋などは16年以降、消費税に加えたばこ税や酒税、関税も免税となる空港型免税店を相次いで開業した。だが、帰国時に商品を受け取る空港が限定されるといった制約もあり、思ったような成果は上げられていない。

(文=江上佑美子)