ビットコインをはじめとする仮想通貨は、価格が不安定なうえに不正アクセス事件も。草食投資隊は「まだ下がる可能性がある」と予想しつつも、今後の可能性についても言及(写真:sasaki106/PIXTA)

ビットコインをはじめとする仮想通貨が、今年に入ってから大暴落しています。1月26日には取引所の1つ、コインチェックで大規模な不正アクセス事件も起きました。仮想通貨は「一時的なバブル」で終わるのでしょうか。今回は仮想通貨に関して、価格の乱高下が株式市場に及ぼす影響や今後の可能性などを、草食投資隊の3人が考えます。

草食投資隊のまわりでも「億り人」が続出!?

渋澤:私の知り合いの話ですが、以前からビットコインを持っていました。ご存じのように、ビットコインをはじめとする仮想通貨は、昨年の秋口から暴騰しましたよね。それによって利益が4億円にもなったそうです。

藤野:いわゆる「億り人」ですね。


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渋澤:そう。でも、仮想通貨の利益に対する税金って雑所得扱いだから、儲けの半分近くが所得税として徴収されます。あと地方税ですね。その知り合いは税率の高さに憤っていて、シンガポールに移住しようかなどと言っていたのですが、まあでもしばらくすれば半分くらいに値下がりするかもね、なんて冗談も言っていたんです。それが本当になるとは……。

中野:私、あまり仮想通貨には詳しくないのですけど、勝てる戦略ってあるんですか。

渋澤:マイニングされても、供給が有限ですから、後から買う人がいるかどうかってことでしょうね。でも、私は思うのですが、仮想通貨の売買で得た利益って仮想利益みたいなものですよ。そもそも株式と違って、仮想通貨には本源的な価値がありませんしね。

中野:先日、卒業した学校のOB会に参加したんです。そこでOBを対象にした勉強会が定期的に開催されているのですが、今回、たまたま仮想通貨がテーマだったのです。で、OB会ではあったのですが、誰かの取り計らいで現役の学生も参加できるようにしたようで、参加者の半分が学生でした。若い人たちは結構、仮想通貨の関心が高いようですね。

渋澤:その学生たちは、実際に仮想通貨を持っているのですか。

中野:持っています。正直、そこで交わされていた質問は、私には全然理解できない「宇宙人の会話」のように聞こえました。

藤野:代表的な仮想通貨のビットコインは、昨年12月に1BTC=250万円を超えるところまで値上がりして、1月18日に一時100万円を割り込みました。確かに大暴落ですが、まだ10分の1までは下がっていない。この水準まで下げても、まだ含み益状態の人もいるでしょうから、まだ売られるかもしれませんね。この下げを目の当たりにしたら、含み益状態の人はさっさと利益を確定させたい気持ちになるでしょう。

仮想通貨とブロックチェーンは「自動車と道路」の関係

中野:学生からすれば、株式投資に比べて気軽にできるのが、仮想通貨取引の魅力なのでしょうね。でも、仮想通貨って投資というよりも、ギャンブルに近いのでは? 本来なら規制を強化すべきだと思うのですが、仮想通貨が「フィンテック」の1つのジャンルになっているから、金融庁も安易に規制の声を上げにくい面があるのではないかと勘繰りたくなります。

藤野:規制の網を掛けるにしても、仮想通貨と、そのプラットホーム技術であるブロックチェーンは別物として考える必要があります。

中野:仮想通貨とブロックチェーンって、イコールの関係にあるというイメージが強いですよね。

藤野:ブロックチェーンが道路で、仮想通貨が自動車という関係ですね。ブロックチェーンは将来の社会インフラになりうるもので、さまざまな商取引や、各種データのやりとりなどを記録していく技術です。仮想通貨の実現に必要な技術が、たまたまブロックチェーンだったわけです。今後は、この技術を通じて、さまざまな商取引、決済などが行われるようになるでしょう。

仮想通貨に関していえば、現状、原資産の価値を裏付ける担保がないという点で、その価格形成はどうしても投機的になりがちだし、価値が不安定なのですが、この問題さえクリアされれば強みを発揮するのではないでしょうか。以前、この連載で「アマゾンコイン」の可能性について取り上げましたが、アマゾンという世界最強の流通業者の信用力を背景にした仮想通貨が本格的に流通すれば、米ドルや円など法定通貨の存在すら脅かす存在になるのではないでしょうか。

渋澤:でも、よくよく考えてみれば、金本位制度から離れた今の法定通貨だってバーチャルですよね。紙という物質に数字が表記されているだけのものに対して、私たちが1000円とか1万円という共通認識を持っているからこそ、ただの紙切れでモノやサービスを購入できるわけですから。

中野:ところで、仮想通貨は押し並べて暴落状態が続いていますが、株式市場への影響はあまりないようですね。

藤野:一部では、ビットコインなどの仮想通貨が暴落したら、それにつられて株価も下落するのではないかと懸念されていましたが、実際のところ、株式市場はほとんど影響を受けていないようですね。思うにこれは、仮想通貨を売買している人と、株式を売買している人が被らないからではないでしょうか。株式を担保に入れて、信用取引のようにレバレッジを利かせて仮想通貨のポジションを持っている人が多ければ、仮想通貨の暴落が担保になっている株式の投げ売りにつながるため、株価が暴落するリスクが高まりますが、現状、この手の取引はほとんど行われていないようなので、株価との相関性がないのだと思います。

仮想通貨をめぐる混乱は、あと半年は続く?

中野:富裕層で仮想通貨に投資している人もいますよね。この層は、今回の暴落でどう動くと思いますか。

藤野:確かに、遊びで仮想通貨に投資している人はいます。でも、あくまでも遊びですし、富裕層ですから保有資産全体に占める仮想通貨への投資比率なんて微々たるものです。だから、今回のように暴落したとしても、慌ててほかの資産を売却するといった行動は取らないでしょうね。

中野:一時はビットコインETF(上場投資信託)が開始されるという動きもありましたが、今年に入ってSEC(米証券取引委員会)への申請を取り下げましたね。

藤野:おそらく、あと半年くらいは混乱が続くのではないでしょうか。ただ、これで仮想通貨そのものが消滅するようなことにはならないと見ています。どこかの段階で、また復活していくでしょう。今は投機的な側面ばかりが注目される仮想通貨ですが、ある種のバブルが一段落すれば、決済手段としての側面も注目されるようになり、混乱も一段落すると思います。

中野:でも、この手の暴騰・暴落の話を目の当たりにすると、つくづく残念に思います。

渋澤:それはどういうこと?

中野:草食投資隊を結成して、2018年は8年目。3人で日本全国行脚して、「10年目線の投資の重要性」「投機ではない資産形成の大切さ」を広めようと活動してきましたけど、それでもまだ世の中には、われわれの理念が浸透していないわけですよ。

ところが、仮想通貨はあっという間に広まりました。これって、どういうことなのでしょうか。結局、金融や投資って、人間の射幸心を煽ることでしか一般化しないのでしょうか。でも、それでは正しい「金融リテラシー(知識と判断力)」は普及しません。正直なところを言いますと、ビットコインのような仮想通貨は、私たち長期投資家にとって、敵でしかないと考えています。

「アマゾン経済圏」はできるのか

渋澤:仮想通貨は今後、いかに信用力を得ていくのかがポイントになるのでしょうね。

藤野:私は、カギはアマゾンだと思います。世界最高の技術力と、世界最大のサーバーを持っていて、かつ物流も押さえている。アマゾンコインが本格的に登場することによって、初めて仮想通貨は強大な信用を得て、普及していくのだと思います。

渋澤:世界のどこででも使える共通通貨になれば、興味深い。


企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO、コモンズ投信の渋澤健会長)

中野:でも、なかなかアマゾンが仮想通貨に本格的に参入するって発表しませんね。

渋澤:ほかの仮想通貨の値動きが激しすぎるから、現時点では純粋な決済通貨にならないと判断しているのかもしれませんね。世の投機家は、ボラティリティが高いことに仮想通貨の魅力を感じているのだと思いますが、値動きがほとんどない仮想通貨が誕生すれば、世界中のどこででも決済に使える、世界共通通貨という別の魅力が生まれてくるのではないでしょうか。銀行で送金したり、ATM(現金自動預け払い機)の時間外引出を利用したりすると、結構な額の手数料が取られますが、仮想通貨は取引コストが割安だから、マイクロペイメントにも対応できると言われていますよね。

藤野:ただ、最近は逆に送金手数料を引き上げる取引所もあったりするので、仮想通貨の取引コストが安いというのも、少し眉につばをして見ておく必要がありそうです。

中野:仮想通貨が法定通貨に取って代わるかという点については、まだ議論が必要でしょうね。仮想通貨って、中央銀行が介在しない世界じゃないですか。そうなると「各国の中央銀行が握っている通貨発行権はどうなるのか」「通貨の流通量をきちんと把握できるのか」、といった問題が浮上してきますし、実際に議論もされています。このあたりは、また日を改めてみなさんにお伝えしたいですね。