(編集・制作 (株)法研

手から入った刺激は脳の多くの領域を活性化する。
脳神経細胞は減る一方でも脳力は成長する。手から刺激を加えてシナプスのネットワークを増やすとよい。

脳神経細胞の減少を補うシナプスのネットワーク

人間の脳神経細胞の数は子どものときがピークで、そのあとは減る一方だといわれます。だとすると、そこで知的な能力の成長もストップしてしまうのかというと、そういうわけでもありません。理解力、判断力などは成人になるまで発達することは誰しも経験的におわかりでしょう。記憶力は衰えても、さまざまな情報を整理して物事を総合的に判断する能力などは70歳くらいまで発達するともいわれます。

脳神経細胞の数が減っていくのに知的能力が保たれるのは、神経伝達物質を介して細胞間の情報伝達を行うシナプスのおかげです。脳が刺激を受けるとそれに対処するためにシナプスが増え、細胞間をつなぐ複雑な情報ネットワークを形成するのです。この刺激は、脳のできるだけ多くの部分を働かせるものがよく、手を動かすことはその好例です。

「手は外部の脳である」と哲人カントは言った

人間の手を“外部の脳”と言ったのは、18世紀のドイツの大哲学者・カントです。手と脳が密接な関係にあることを端的に表現したものです。現代の脳科学によると、手は脳の「運動野」(すべての筋肉に直結して運動をコントロールする部位)や「体性感覚野」(皮膚や体内の感覚受容器などからの情報にかかわる部位)と大きくつながっていることがわかっています。したがって、手を活発に動かすと、その刺激は脳の多くの部分に伝わります。細かい手仕事に熟練した職人や、脳の創造力と手の描写力を駆使する画家などに長生きの人が多いのは、手から脳への刺激が絶えず行われているからかもしれません。

それでは、脳の刺激にもってこいの手の体操を2つご紹介しましょう。特別な道具も場所もいらず、時間も多くはとりません。アタマの働きが最近ちょっと気になる方はぜひお試しを。

脳をビンビン刺激する手の体操

テレビを見ながらでも手軽にできる体操ですが、しっかり行えば軽く汗ばんでくるでしょう。エネルギー消費も期待できますし、肩こり・五十肩の予防にもなります。

●両手ぐるぐる体操

(1)両足を肩幅に開いて立ち、両腕を肩の高さで前に伸ばします。
(2)両手のひらを前に向けてピンと伸ばします。
(3)肩から回すように、両手のひらで10センチほどの円を描きます。
(4)右回し、左回しを10回ずつ、1日3セット行ってください。

次に、以下のように両手を横に上げたり上に伸ばして、ぐるぐる回しましょう。
・両手を肩の高さで横に水平に上げ、手のひらを立てて回す。
・両手を真っすぐ上に伸ばし、手のひらまで一直線にして回す。

●羽ばたき体操

(1)いすに座り、頭の後ろで両手を組み、腕を左右いっぱいに開きます。
(2)次いで、耳の上あたりに手首がくるように両腕を閉じます。
(3)再び両腕をいっぱいに開きます。
(4)以上の動作を鳥が羽ばたくようにできるだけ速く、30回を目安に行いましょう。

※この記事は2010年5月に配信された記事です