お稽古を"教える"に転換で老後資金の準備

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「お金に縛られない生活」を手に入れるにはどうすればいいのか。雑誌「プレジデント」の特集「億万長者入門」では、34歳で「お金に不自由しない状態」を実現した田口智隆さんに、20代から60代までの5つの年代ごとに赤字家計の再生法を聞きました。第4回は世帯年収870万円という50代夫婦へのレクチャーです――。

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50代:成宮家の場合

家族構成
夫 55歳 電機メーカー広報
妻 56歳 専業主婦
長男 24歳
次男 22歳
年収
額面 夫 870万円
うちボーナス 230万円
貯蓄額
800万円


子どもはほぼ独立してそれぞれの生活を楽しむ50代夫婦。インドア派の夫は自宅でのんびり過ごすのがお気に入り。オーディオマニアで、「自分へのご褒美」として関連品を買っている。定年後も働きたいが、これといってあてがあるわけではない。専業主婦の妻は習い事が大好きで、20代の頃から常に複数の教室に通う。お稽古事仲間とのランチ代もかさんでいる。

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▼夫も妻も、自分のために使う「お小遣い」が聖域に。

■豊かに生きるための仕事を探す

50代では、定年後の家計も視野に入る。夫が勤務する会社は60歳で定年、65歳まで雇用延長で働くことができる。定年以降の収入は400万円程度に減る見込みというが、夫婦2人なら十分暮らせる金額だろう。

問題はそのあとだが、夫は70歳頃まで働くことを希望している。とはいえ、高齢になっても今の仕事の延長線上で同じように働いてお金を「稼ぐ」のは体力的にも辛い。「楽しみながら収入を得る」という考え方に切り替えたい。私の母は経済的にはまったく必要なかったが、週に3日、給食センターで働いた時期がある。それまでの仕事を辞めて時間を持て余し、もともと好きだった料理の仕事を探したらしい。健康的だし、職場で違う世代の人たちと話をしたり、感謝されたりして、とても楽しい様子だった。それでお金がもらえるなんて素晴らしい。

リタイア後は年金が生活費の柱になり、足りない分を資産や退職金などで補うことになる。ここに賃金があればさらに上乗せができるが、賃金はあくまでプラスαとして多くの金額を望まず、豊かに生きるために働く、というくらいが望ましい。そのためには、楽しみながら社会に貢献できるスキルを身に付けておくこと。もちろん、賃金に多くを頼らずに済むよう、資産(老後資金)を準備しておく必要がある。夫は音楽関係が趣味という。楽器をマスターして教室を開く、というのも悪くない。

■暇つぶしに時間を使うべからず

夫は会社帰りにパチンコに行ったり、休日は庭いじりが定番だというが、これは時間の浪費にすぎず、今すぐ改めていただきたい。その時間で語学を習得したり、趣味を深めたりすれば、リタイア後の仕事に繋がる期待も持てるが、漫然と時間を過ごしていてはなんの成果もない。実は私には競馬やパチンコに時間やお金をつぎ込んだ時期があり、その経験から進言しているのである。時間つぶしは人生つぶし、なのだ。

専業主婦の妻は昔から多くのお稽古事に勤しんできたそうだが、そろそろ「習う」から「教える」に転換したいところ。若い主婦、子どもたちなど、地元の人を相手に自宅で教えてお小遣いを稼ぐという感覚なら、費用もかからず、リスクもなく、ハードルが低い。定年もないから、夫が会社を辞めた後にも有力な収入源になる可能性がある。

リタイアするまでにできるだけ老後資金を準備したいが、現在の貯蓄は800万円で心もとない。経験から言うと、資産が1000万円に届くと、不思議と「この大台は死守したい」という気持ちが芽生える。同時に、もっと増やしたいという欲も出る。まずは早急に1000万円に届くよう、貯蓄ペースを上げよう。

成宮家では来年3月に第2子が大学を卒業し、教育費は終了する。その後、解放感から車を買い替えたり、財布のひもを緩めたりしがちだが、大きな間違いである。教育費の負担がなくなったら、その分はすべて老後の準備にシフトチェンジしよう。

資産形成に回してもいいし、住宅ローンを繰り上げ返済するのもいい。返済した分の利息がカットされるし、完済時期が早くなる。定年以後もローンの返済が残る人が多いが、返済があると老後の家計が苦しくなる。

また、毎月の保険料が2万7000円に上るが、子どもが働くようになれば扶養する必要はないので、死亡保障の必要性は低くなる。保障というより、将来の相続に備えて保険を見直すのもいいだろう。【法定相続人の人数×死亡保険金500万円】は、非課税で相続できる。

夫は小遣いから「自分へのご褒美」として買い物をする習慣があるようだが、私にはどうしても「自分へのご褒美」というのが理解できない。仕事を頑張ったことへの評価は他人からしてもらうものであり、自分で自分に褒美を与えているようでは成長できないのではないか。そのようなことにお金を使うなら、収入に繋がるような自己投資をしたほうがいい。50代をどう過ごすかが、老後を大きく左右する。

富豪の掟●中年になったら「楽しみながら働く」考えに切り替える

(ファイナンシャルインディペンデンス代表取締役 田口 智隆 構成=高橋晴美)