市場関係者が見るコインチェック事件の影響

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顧客から預かる約580億円分の仮想通貨「NEM」が不正アクセスによって流出したと発表した仮想通貨取引所大手コインチェック。その後、約26万人のNEM保有者に日本円で返金することを表明したものの、時期などは明らかにされていない。

思い出されるのは、4年前に起きた仮想通貨取引所マウントゴックスの大規模損失。今回はその損失額を上回る過去最大の流出事件として、影響が懸念されている。

仮想通貨市場に詳しい、フィスコデジタルアセットグループ代表取締役の田代昌之氏に伺った。

──今回のコインチェックの不正アクセスを受けて、市場にはどんな悪影響が出そうでしょうか?

ネガティブ面では、以下のことが考えられると思います。

・投資家が仮想通貨はやっぱり怖い、怪しいという認識を持ってしまう
・セキュリティ面など、業界はマウントゴックスのときと何ら変わっていないのではないかという誤解
・やはり仮想通貨取引所は信頼できない

結果として、投資家心理を冷やしてしまうことにつながる懸念があるということです。ただ、今回はあくまでも取引所のセキュリティの問題であって、仮想通貨の技術そのものに欠陥があったわけではありません。これはマウントゴックスの時と同じです。

そして、セキュリティに関してですが、当時は流出したビットコインを追跡することはできませんでした。一方、今回は流出したNEMの追跡が可能で、NEMを扱う取引所に売買の抑制を要請しています。つまり流出しても簡単には法定通貨やほかの仮想通貨に変換することはできない状況はできあがっています。今回は流出してしまいましたが、「取っても簡単には換金できない」状況であることが、広く伝わることで今後の抑止力とはなるでしょう。

──一方、これを機に仮想通貨市場において、何かしらのメリットがあるとするならば、どんなことでしょうか?

ふたつあります。ひとつは、業界団体が一本化する可能性があるということです。このコインチェックから巨額の仮想通貨が流出したことをきっかけに、安全管理体制や顧客資産の補償などについて自主規制ルールの整備を行うなど、業界の信頼回復が急がれます。

そんな中早くも、最大手取引所であるビットフライヤーが中心となって設立した日本ブロックチェーン協会と、テックビューロなどが参加する日本仮想通貨事業者協会が統合し、新たな自主規制団体を発足させる方針も固めたと伝わっています。今後、さらにこの動きが強まるかもしれません。

ふたつめは、登録を受けた取引所の信頼性が高まる可能性です。昨今、仮想通貨の取引所が急激に増加しています。今回のコインチェックもそうですが、マウントゴックス事件を受けて、金融庁は2017年4月に改正資金決済法を施行し、全ての仮想通貨取引所(の運営会社)は、仮想通貨交換業の登録が義務付けられました。

今回の不正流出が明らかになったコインチェックは、1月30日時点で登録はされていません。みなし業者だったことも注目されました。今後、投資家が仮想通貨の取引を行うために、金融庁に登録された取引所かどうかが、投資をする上で更に重要な条件となっていくかもしれません。

──今回の問題を受け、仮想通貨市場の人気が冷めてしまうこともありうるか。

マウントゴックス、そしてコインチェックともに不正流出の背景は明らかになっていませんが、マウントゴックスは内部犯行、コインチェックはハッキングという認識をもっています。そういった意味では、マウントゴックスとは異なる問題であると考えています。

一方、この一件で金融庁による仮想通貨関連の規制は強まると考えています。

ただ、規制が即ネガティブな事象になるとは考えていません。わけのわからないICOや詐欺コインの撤廃につながるルールは、早々に当局によって作られるべきと考えていますし、今回のようなシステムの脆弱性などが是正されるのであれば、投資家保護、利用者保護の観点から考慮すると、市場にとってはいい流れになるかと思います。