Facebookのニュースフィード変更は、パブリッシャーにとって大きな収益源である、スポンサード動画(広告主の依頼を受けて、媒体社側が制作する動画コンテンツ)やブランデッド動画(広告主企業が自ら制作する動画コンテンツ)による収益を減少させるかもしれない。

とある4つの情報筋によると、大手パブリッシャー各社は、Facebook上の動画事業において、プロダクション(制作)とペイドメディア(拡散)の費用を差し引いても、50から70%のマージンを得ることができるという。この4つの情報筋とは、Facebook上で少なくとも月に10億回の再生回数を誇るパブリッシャーの幹部3名を含む。また、3秒ごとに再生回数を集計するFacebookでは、広告視聴単価は驚くほど低く、「1ペニー(約1円)にも満たない」と、情報筋の1人は明かす。これは、彼らが獲得したオーガニックな収益を元手に、(動画コンテンツをリーチさせるために)多くの広告費を使えることを意味している。

さらに、追加の制作費を必要としないブランデッド動画(プレロール広告やミッドロール広告など)のスポンサーシップから発生するさらに多くの収益は、パブリッシャーの予算計画へすでに組み込まれているという。つまり「実質的に何もしないで得る収益」も存在していると、大手Facebookパブリッシャーの幹部は述べた。格安に大量制作される典型的なFacebook向け動画(短く、無音でテキストが画面に表示される自動再生クリップ)は、こういった収益に支えられていた。

Facebookは高くつくプラットフォームに



また、Facebookがニュースフィードの変更を行い、メディアへの締め付けを強めたことを受けて、これらの幹部たちはパブリッシャーがスポンサード動画から得られる収益にも影響が出るのではないかという懸念を抱いている。現に、彼らはスポンサード動画のコスト設計に変更を加えようとしている。3人の幹部が語るように、ユーザーのニュースフィードへ動画を配信するためには、ペイドキャンペーンに多くの広告費がかかる以上、マージンの削減に踏み切るしかない。

「多くの企業が目標達成のために予算の値上げに踏み切る予感がしている。率直にいって、それで何が変わるのかわからない。すでに多くのパブリッシャーがペイドメディアを活用しているが、彼らはそれを隠している。いつか、何らかの形で表面化すると思う」と、デジタルパブリッシャーのCROは語った。

パブリッシャーの全体的な収益に、これがどの程度影響するかはまだわからない。

「何が起こるのかは誰にも予想がつかない以上、我々のブランド事業にどういった影響をもたらすのか、もう少し見守るつもりだ。しかし、(エージェンシーやブランドに対して)これまでよりも高い金額を請求せざるを得ないかもしれない」と、動画事業で2017年にFacebookから8桁(数十億円規模)の収益を叩き出したパブリッシャーの幹部は述べた。

スポンサード動画からの収益損失を埋めるために実施できる施策は、Facebook Watch向けにブランド出資の番組を制作するか、スポンサーシップを既存のWatch番組(Facebook出資のものを除く)で販売することだ。ある大手動画パブリッシャーによると、Facebookは彼らが出資する番組のスポンサーシップを含む、幅広いキャンペーンを広告主に売り込んでいると語った。これは、FacebookがWatch向け番組を最優先しているということだ。

「Facebookは、人々にもっと長い時間動画を視聴してほしいと考えている。それにより、プレロール広告やミッドロール広告を目にすることになるからだ。しかし、現時点ではそれを目的にFacebookを利用しているユーザーはいない」と、そのCROは語る。「Facebookは、ニュースフィードがFacebook Watchに有利に働き、人々がミッドロール広告を目にするようになることを期待している」。

「我々はこの変更を長いあいだ待っていた。そもそも、それがFacebook Watch向け動画にこんなにも力を入れていた理由のひとつだ」と、大手デジタルパブリッシャーのCEOは語った。「今回の騒動で、Facebook Watchは注目されることだろう」。

トップデジタルパブリッシャーは、セーフティネットを持つ



米DIGIDAYの調査によると、パブリッシャーの86%が、Facebook自体からの収益は、(ひとつの動画コンテンツによる収益全体)の25%以下であることがわかった。これは、Facebookのメディア企業向けの広告プロダクトの構築がどれだけ上手くいっていないか示している。しかし、Facebook上でパブリッシャーが得られる動画広告収入のほぼすべてがブランデッド動画によるもので、Facebook Watchからではないと、パブリッシャーの幹部たちはいう。たとえ、Facebookが動画収益促進に大きな力を発揮していないとしても、多くのパブリッシャーたちに対して彼らは、責任を果たすべきである。

大手デジタルパブリッシャーの何社かは、収益源の多様化が進んでいるので、Facebookに大きく依存しているパブリッシャーほどは、ニュースフィード変更からダメージを受けることはないと見込んでいる。ある、大手パブリッシャーのコンテンツスタジオ責任者は、年に数百万ドルの会社収益のうち、Facebook専用のスポンサード動画からの収益は15%ほどであると語った。この企業は、YouTubeやそのほかのソーシャルプラットフォーム、そして自社ウェブサイトでも動画事業を展開しており、そこでの収益源がニュースフィード変更の影響を軽減することを願っている。

「この変更により、相当な数のデジタル企業が撤退することになるだろう。しかし、我々の場合は、その判断を下すまでにまだ少し時間の余裕がある」と、この幹部はいう。「そもそも、自分で制御できないものに、ビジネスの90%も依存することが理解できない」。

ほかの大手パブリッシャーは、今回のアルゴリズムの変更についてそれほど心配していない理由として、ペイドメディアにそれほど頼ることなく動画を視聴してもらい、シェアしてもらうことができるオーガニックリーチの活用を挙げている。

チューブラーラボ(Tubular Labs)によると、12月にFacebook上で4億6300万を超える動画視聴回数を獲得したというAttnにおけるスポンサード動画のエンゲージメントは、Facebookの平均値より4.4倍高かったと、調査会社ブランドテイル(Brandtale)のデータを引用して述べている。 Attnの共同設立者マシュー・シーガル(Matthew Segal)氏は、この分野での成功の証拠として、350万を超える視聴回数と3万8000のシェアを生んだ、キース・リチャーズとシェリル・クロウをフィーチャーした6分間のスポンサード動画を取り上げた。



「昔のロックスターを特集した6分半の動画を間違って視聴し続ける人はほとんどいない」と、シーガル氏は語った。「彼らはフィード上で目にしたら、意図的にそれを視聴している、これこそがFacebookが望んでいることだ」。

Facebookを超えて、多様化に取り組むパブリッシャー



大手パブリッシャーには、Facebook以外のプラットフォームにも、動画事業を売り込む機会が存在している。

BuzzFeedは、YouTubeや自社サイトを含めた複数のプラットフォームで視聴回数を保証し、広告視聴単価を一律に請求するプランを実施している。ある情報筋はこう述べ、同社からも裏づけが取れている。BuzzFeedはまた、Facebook上に構築したテイスティ(Tasty)とニフティ(Nifty)といったブランドをSnapchatのディスカバー(Discover)など、ほかのプラットフォームに展開している。同社の広報担当者は、BuzzFeedには、YouTube、ストリーミングプラットフォーム、TV向けに番組を制作するエンターテインメント部門が存在するだけでなく、コマース事業も拡大しているという。

スポーツに関する情報を発信しているメディア、ブリーチャー・リポート(Bleacher Report)も、エンターテインメント系の番組の充実、アプリオーディエンスの拡大、そのほかの事業への投資を実施することで多様化を図ってきた。

「ブリーチャーも含めた多くのメディアブランドは、Facebookの戦略を長いあいだ見てきているため、こうした改革に着手している。同じように単一の配信システムに依存しすぎると、問題に直面することになるだろう」と、ブリーチャー・リポートのCRO兼CMOのハワード・ミットマン氏は述べた。

一方で、早々に問題の解決を模索している企業は、収益獲得に最適な場所としてインスタグラムに目を向けている。さらに、時間をかけてプラットフォーム配信用の動画コンテンツへ投資しようと考えている企業は、YouTubeにリソースを移す可能性もある(また、プラットフォーム側も、Snapchatがパブリッシャー勧誘に動き出しているようだ)。

「インスタグラムが、さらに多くの動画で溢れかえるのを目にするようになるだろう。なぜなら、フォーマットがFacebookのニュースフィードと同じだからだ。つまり、Facebookがニュースフィードを再度変更するまで、インスタグラムで引き続きオーガニックリーチを得ることが可能ということだ」と、前述のデジタルパブリッシャーCROは語る。

しかし広告主は、Facebookのニュースフィード変更を受けて、もはやコンテンツ制作や配信のためにパブリッシャーを活用する必要はないと結論付ける可能性もある。ブランドがスタジオに直接依頼して、彼ら自身のチャネルを活用して同等のリーチを獲得できるなら、メディアパートナーと一緒に仕事をする必要がどこにあるのか?

「重要なのは、オーガニックリーチが機能しなくなるなか、ブランドが動画配信をしようとパブリッシャーがしようと結果が同じなのであれば、ブランドにとってパブリッシャーと協力してする理由はもはやないということだ」と、そのCROは語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac)