犬(写真:gettyimages)

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29日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK総合)で、人を襲い、かむイヌを更正させる訓練士の厳しくも愛のある仕事ぶりが紹介された。

番組では、戌(いぬ)年にちなみ「ワンちゃんスペシャル」と題して、訓練士、トリマー、獣医師などの仕事ぶりを取り上げた。その中で、かみ癖があるなど社会復帰が困難とされるイヌを専門で受け入れる訓練士の中村信哉氏が登場した。中村氏が更正したイヌは20年間で700頭に及ぶそうだ。

栃木県大田原市にある中村氏の訓練所には100頭のイヌがいる。その中には飼い主の腕をかんで両腕骨折させてしまったイヌや、獣医師や看護婦を立て続けに襲ったイヌ、東日本大震災のシェルターでボランティアを15人かんでしまったイヌなどが全国から集まっていた。

こういった行動はイヌの遺伝的なものもあるが、中には虐待を受けた可能性もあるそうだ。イヌそのものに原因があるのではなく「問題はイヌに対する概念の変化と飼い方」だという。

また本能が抑えつけられないことも要因だと語る。そこで中村氏は、本能がかき立てられる食事の時間を活用して我慢する心を教えていた。中村氏は2本の竹を合わせて作ったムチをたたいて大きな音を出し、痛みを最低限に抑えるようにしているという。

中村氏は暴れるイヌたちに、このムチや素手などで、なぜ叱られているか音と刺激で覚えさせ、冷静さを保つ力を教えていた。また、食事中も「待て」を指示することで、エサに近づいた人を襲わないように訓練している。

イヌ好きだという中村氏は「(たたくことは)気持ちよくはないです」と言う。だがそれでもたたくのは、「放置するとどうなるか」「厳しさに躊躇(ちゅうちょ)したらどうなるかも分かっている」と続ける。

叱らないと、イヌはその後も人を襲い、かみ続けてしまうことから、直らないと見なされて殺処分されてしまうことがあるそうだ。中村氏は「とことんやらなかったら本当に命が終わってしまう」「どんな方法を使ってでも飼い主さんのもとで一生を送らせたい」と語った。

元々警察犬の訓練士だった中村氏はイヌの訓練所を開設。しかし問題行動を起こすイヌの飼い主からの訓練依頼が続いたそうだ。そのため、警察犬の訓練を止め、問題犬を預かるようになったという。

ところが厳しい訓練に「ムチ打ち式体罰」「暴力を振るう訓練士」などの批判もあったとか。それでも中村氏は訓練を「やめる気は一切なかった」と言い、「人が嫌がる仕事をして批判されるのは納得はいかない」と打ち明けた。

もし自分が訓練を止めれば「飼い主が困っちゃうし、イヌは殺されちゃうだけ」という未来になってしまう。訓練を受けたイヌの約20%が社会復帰できず、中村氏はそのイヌを自分の訓練所で引き取り、世話をしている。

問題犬を引き取る理由を、普通のイヌのようにどこかへ出かけたり楽しく遊んだりすることはできないかもしれないとしつつ、「ここにいれば天寿を全うできる」「楽しいドッグライフではないけれども、命を全うできる」からだと話す。

中村氏は「イヌの命を全部私が請け負うつもりでやっている」「その覚悟がないんだったら叱るべきでもないと思うし、かむ犬は安易に引き受けるべきではない」と訓練に対する覚悟を明かしていた。

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