20世紀を駆け抜けたスーパースター指揮者、レナード・バーンスタイン生誕100年を迎える年でもある(写真:アフロ)

新年恒例の華やかなニューイヤー・コンサートも一段落。いよいよ2018年のクラシック界が本格始動。というわけで、今回は2018年のクラシックシーンを彩る注目ポイントに迫ってみたい。今年の主役はいったい誰だ!?

メモリアル作曲家の筆頭は美食家のロッシーニ

まずは、今年の顔とでも言うべきメモリアル作曲家たちの中から、コンサートやCDなどで取り上げられる機会が多くなりそうな、ロッシーニ(没後150年)、グノー(生誕200年)、ドビュッシー(没後100年)、レナード・バーンスタイン(生誕100年)の4人をチェックしておこう。


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イタリアのオペラ作曲家ロッシーニ(1792〜1868)は、早熟な天才として10代で作曲家デビュー。その後20年ほどの間に39作のオペラを作曲し、ヨーロッパ随一の人気作曲家として音楽界に君臨する。代表作「セビリアの理髪師」はヨーロッパ中の街で上演され、ロッシーニ熱は音楽の中心地ウィーンをも席巻。その影響を恐れたベートーヴェン(1770〜1827)が、あの「第九」の初演をウィーンではなくベルリンで行おうと考えたという逸話が残るほどの人気ぶりだったようだ。

しかし、そのロッシーニは人気絶頂のさなかに書き上げたオペラ「ウィリアム・テル」を最後に38歳でオペラ界から引退。その後の40年にも及ぶ後半生はサロン経営や料理研究家などをしながら優雅に過ごしたというのだから変わっている。現在われわれがレストランで目にする「ロッシーニ風」という牛フィレ肉にフォアグラを重ねたゴージャスなレシピは、料理研究家たるロッシーニの考案。何をやっても超一流の男だったことは間違いない。

そのロッシーニの作品で聴いておくべき代表作は、前述のオペラ「セビリアの理髪師」のほか、村上春樹作品にも登場する「どろぼうかささぎ」序曲や、映画・CMでもおなじみの「ウィリアム・テル」序曲などなど、まさに軽快で親しみやすいメロディこそがロッシーニの真骨頂だ。

フランス・ロマン派の作曲家グノー(1818〜1893)の名を一躍有名にした作品は「アヴェ・マリア」。J.S.バッハ(1685〜1750)の「平均律クラヴィーア曲集」第1巻第1曲プレリュードに美しいメロディを重ねたこの曲は、“バッハ作品への落書き”などと陰口をたたかれながらも、クラシック史上屈指の人気曲として愛されている。最近ではオペラ作曲家としての評価も高く、美しいメロディが印象的な「ロメオとジュリエット」は特にお薦め。

フランス印象主義を代表する作曲家ドビュッシー(1862〜1918)の作品は、ルノワール、セザンヌ&ドガなど印象派絵画の巨匠たちや、彼らに大きな影響を与えた葛飾北斎などの作品に重ね合わせて体験するのが楽しそうだ。有名な「月の光」を含む「ベルガマスク組曲」や「映像」、「前奏曲」&交響詩「海」などなど、伝統的な音楽形式にとらわれない独自のスタイルによって生み出された名曲の数々は、後世の作曲家たちにも大きな影響を与えている。

今年いちばんの注目はバーンスタイン生誕100年

そして最後の1人、20世紀アメリカを代表する音楽家レナード・バーンスタイン(1918〜1990)は、個人的に今年いちばんの注目株。作曲家としてはもちろん、超人気指揮者&教育者としても活躍したバーンスタインの姿は、ある年齢以上のクラシックファンの心に強く刻まれているのではないだろうか。

1943年、急病で倒れた大指揮者ブルーノ・ワルターの代役としてリハーサルなしで指揮したニューヨーク・フィルハーモニックの演奏会が全米に放送されて大反響を呼び、一躍時の人となったバーンスタイン。作曲家としても1957年のミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の大ヒットによって永遠不滅の存在に。さらには日本との関係も深く、生涯最後の年となった1990年には札幌の地に国際教育音楽祭「PMF」を提唱。今も若き音楽家たちを世に送り出す原動力となっている。

そのPMF音楽祭(7月7日〜8月1日開催)の今年のプログラムはまさに生誕100年を迎えるバーンスタイン尽くしが期待される。20世紀を駆け抜けたスーパースターの全貌に触れるチャンス到来だ。代表作「ウエスト・サイド・ストーリー」については、3月4日(日)、6日(火)、Bunkamuraオーチャードホールで開催されるパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団による演奏会形式でのステージに注目したい。バーンスタインの弟子を自任するヤルヴィのステージは、まさにメモリアルイヤーにふさわしい注目公演と言えそうだ。

“クラシックに興味はあるのだけれど何を聴いたら良いのかわからない”という方は、この4人の作品を入り口にクラシックに親しむのが2018年のクラシックシーンを楽しむポイントだ。

オペラ界にも新風が吹き込んでくる。東京のオペラの殿堂「新国立劇場」の次期芸術監督、大野和士による2018-2019シーズンの開幕だ。「ドイツ・バーデン州立歌劇場」や「ベルギー王立歌劇場(モネ劇場)」、「フランス国立リオン歌劇場」など、海外の一流オペラハウスで芸術監督や首席指揮者を歴任してきた日本を代表するマエストロ大野和士が、開場20周年を迎える「新国立劇場」をどのような方向に導くのか興味津々である。

1月11日(木)に新国立劇場で行われた「2018-2019シーズン説明会」では、 屮譽僉璽肇蝓爾粒判次廖↓◆崙本人作曲家シリーズの開始」、「2つの1幕物オペラとバロックオペラの新制作」、ぁ崕椶留藹于箸箍亮蠅竜用」、ァ崑招狆譴箸寮儷謀なコラヴォレーション」という5つの目標が大野和士次期芸術監督によって発表された。

これらを念頭に置きながら上演される新シーズンのオペラは、モーツァルト:「魔笛」(10月)、ビゼー:「カルメン」(11、12月)、ヴェルディ:「ファルスタッフ」(12月)、ワーグナー:「タンホイザー」(2019年1、2月)、西村朗:「紫苑物語」(2019年2月)、マスネ:「ウェルテル」(2019年3月)、ツィムリンスキー:「フィレンツェの悲劇」&プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」(2019年4月)、モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」(2019年5月)、プッチーニ:「蝶々夫人」(2019年6月)、プッチーニ:「トゥーランドット」(2019年7月)という豪華絢爛(けんらん)な10作品。これは期待できそうだ。

上野と丸の内、そして池袋でも音楽祭が楽しめる

首都圏を彩る2つの音楽祭「東京・春・音楽祭(3月16日〜4月15日開催)」と「ラ・フォル・ジュルネTOKYO(5月3日〜5日開催)」は今年も健在。桜の季節に上野で開催される「東京・春・音楽祭」のプログラムには「ロッシーニとその時代〜混乱の時代を生き抜く知恵と音楽〜」と題された5時間にも及ぶマラソンコンサートが予定されている。ここでは、今年のメモリアル作曲家ロッシーニの人生をたどる機会が持てそうだ。

さらには、オペラ界からの引退後に手掛けた宗教曲の傑作「スターバト・マーテル」が披露されるのもうれしいかぎり。希代の天才作曲家にして超一流の趣味人ロッシーニの真価に触れる機会が待ち遠しい。 

一方、ゴールデンウィークの風物詩「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」は先月の記事「人気クラシック音楽祭が池袋に拡張するワケ」でお伝えしたように、丸の内と池袋の両エリアを舞台に規模を拡大して開催される。それがどのような結果をもたらすのかも気になるところ。今年の音楽祭テーマである「新しい世界へ」は、まさに新たな世界へ踏み出そうとしている「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018」を象徴しているようにも思えくる。

というわけで、2018年もレッツ・エンジョイ・クラシック!