そしてなにより、攻撃的な選手ながら守備も含めてハードワークを厭わない点が、マンチェスター・Uにとって大きな利点となるはずだ。
 
 入れ替わりでユナイテッドからアーセナルへ放出されたムヒタリアンは、攻撃での能力は確かだったが、モウリーニョのハードワークを前提とするサッカーにフィットできず、徐々にコンディションを落としてしまった感がある。
 
 一方でサンチェスは、ヨービル戦で、新加入にもかかわらず、前線で守備をサボるラッシュフォードを怒鳴りつけ、パスコースを切る守備の動きを指示していた。そういったことを考えても、サンチェスの加入はマンチェスター・Uにとって、これ以上ない補強になったと言えるだろう。
 とはいえ、懸念材料が全くないというわけではない。
 
 まず挙げられるのが、周囲との連携面だ。サンチェスのパスは相手のランニングに合わせるというより、自分のイメージでボールを蹴ることが多い。ゆえに、サンチェスの考えを受け手が共有できていれば得点にも繋がるが、まだ誰も走り込んでいないスペースにボールが飛んでいくことも多々ある。
 
 ポール・ポグバ、マタ、リンガードなどの発想力を持った選手とはイメージを共有できる可能性が高いものの、その他の選手がどこまで、サンチェスのペースやイメージについていけるのかが不安だ。
 
 そして最後に、前にも記したようにサンチェスはキープ力があるが、その特徴は悪く言えば、持ちすぎるという悪癖にもなる。
 
 今のマンチェスター・Uには、シンプルにボールを捌く選手が多いため、そこまで悪影響を及ぼさないだろうが、それでも球離れが悪い選手が重複すれば、リズムが悪くなるのは当然だ。
 
 とはいえデビュー戦の内容を見る限り、サンチェスにボールが集中し、早速、チームメイトの信頼を獲得したように見える。あとはその信頼に応え、得点に直結するプレーを継続的に見せられれば、サポーターからの後押しも受けられるはずだ。
 
 日本時間2月1日の早朝には、早速、プレミアリーグでのデビューが期待される。しかも相手はトッテナムだ。この大一番で「7番」に見合うだけの活躍を披露できるかに注目したい。
 
文●内藤秀明 text by Hideaki Naito