JRは汎用技術活用で導入のハードルを下げた(北陸新幹線)

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 訪日外国人旅行客(インバウンド)の増加などを背景に、鉄道車両内や航空機内で使える無線LANの無料サービスが広がっている。鉄道ではJR東日本やJR東海が、今夏に新幹線でサービスを始めると発表。国内線航空機では日本航空(JAL)に続き、全日本空輸(ANA)も4月にサービスを始める予定。サービス導入が本格化している。

 JR東日本などは2017年11月、無線LANサービスについて、18年夏に東北、上越、秋田、北陸の各新幹線で始めると発表した。JR東の冨田哲郎社長は「インバウンドからネット接続環境の要望が強い」と導入理由を明かした。

 JR東海は今夏から順次、東海道・山陽新幹線「N700A」の自社車両に無線LANサービス導入する。柘植康英社長は「訪日客に一層、快適に旅行頂ける」と発言。相互乗り入れするJR西日本も歩調を合わせて導入する予定で、近々にも最終判断する。

 JR東海もJR東と同じく、各車両にモバイルルーターを搭載する方式を採用して短期間で計画をまとめた。従来のように鉄道専用の技術開発ではなく、汎用技術の活用で導入のハードルは下がった。新幹線に限らず、鉄道やバスなど陸上輸送においては、モバイルルーターを使って比較的安価に無線LANサービスが導入できる。

 国内線の航空機内では日本航空(JAL)が17年2月から無料で提供している。「無料化が奏功し、個人需要が伸びた」(斉藤典和同社専務)といい、ビジネス・レジャー客を問わずサービスは好評だ。

 競合する全日本空輸(ANA)は昨秋まで「通信容量が限られ、無料化すると機内から通信できなくなる可能性がある」(平子裕志社長)と慎重な姿勢を崩さなかった。ところが17年末には、18年4月から国内線機内で無料サービスを提供すると発表した。

 衛星回線を使う空のネットサービスは多額の初期投資と運用費が必要。それでも普及が加速する背景には、航空会社間の熾烈(しれつ)な競争がある。

 観光庁は訪日客4000万人の政府目標に向けて公衆無線LAN環境の整備を促進。2019年から徴収する予定の国際観光旅客税(出国税)の使途の一つにも挙げる。訪日外国人らから、無線LANサービスを求める声が強まるのは必至で、各社が対応を迫られている。
(文=小林広幸)