サントリー山崎蒸溜所

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 国税庁のサイトで調べたところ、これまでの酒類輸出の最高は2016年で、12万4710キロリットル、金額ベースでは429億9668万円だった。昨年は1月から11月までの累計で15万3395キロリットル、金額では488億7100万円と前年の年間実績を上回った。数量は3年連続、金額は6年連続の過去最高を更新した。酒類とは日本酒、焼酎、ビール、ウイスキーなどの総称だ。

 16年の種類別の年間輸出額は、日本酒155億8106万円、ウイスキー108億4439万円、ビール94億8933万円となっている。財務省の貿易統計や国税庁調査などのデータを分析すると、興味深い結果が浮かび上がってきた。

 世界的な和食ブームで日本酒の人気は年々高まっている。17年(1〜11月)の輸出量は2万783キロリットル。輸出額は164億8674万円。前年同期比で数量は16.7%増、金額は18.4%増となっている。前年の過去最高(1万9736キロリットル、155億8106万円)を更新した。07年の輸出額は70億円余りだったので、10年で2倍以上に増えたことになる。

 日本酒の輸出先は、どこが多いのだろうか。国税庁課税部酒税課がまとめた「清酒製造業者の輸出概況」(15年度調査分)によると、輸出は156国(地域)に及び、714の業者が輸出を行っていた(複数国あり)。輸出量(貿易統計=17年1〜11月)の多い国は、米国5236、韓国4155、中国2809、台湾1734、香港1591(単位はキロリットル)の順となっている。米国を除くとアジア諸国が目立つが、英国、イタリアなどEU(欧州連合)域内への輸出も増えている。金額ベースでは米国が断トツで、54億円超。以下、香港、中国が20億円台で続く。

 日本酒の輸出実績の半数近くは、「灘五郷」をはじめ多くの蔵元を抱える兵庫県の神戸港だ。神戸税関のレポートによると、16年は数量(9432キロリットル)、金額(57億4800万円)と、いずれも日本一で、過去最高を記録した。兵庫県、京都府の合計生産量は、全国の44%超。輸出先は米国、アジアが中心だが、ヨーロッパ向けも10%程度あり近年は増加傾向にある。

 その背景として「日本食レストランの増加に伴う日本酒需要の増加」「各地で開催されている展示会・イベントなどによる認知度の向上」「訪日客の増加により日本酒に触れる機会が増えたこと」があるとしている。最大輸出先の米国では、「家飲み」の需要が増えていることを紹介している。

 ある蔵元関係者は「欧州は辛口が人気、アジアは甘口を好む傾向」と語る。ニーズを見極め、ブランド価値を高めていけば、輸出はまだまだ伸びそうだ。

●ウイスキーの伸びが日本酒を上回る
 けん引役の日本酒に続くのがウイスキーとビールだ。ともに本場はヨーロッパ。スコッチウイスキーやドイツビール、ベルギービールといった本家を相手に、どんな戦いをしているのだろうか。

 ウイスキーの17年(1〜11月)の輸出量は5003キロリットル、輸出額は123億2529万円(同時期の輸入額は272億円)。前年度同期比で数量は10.2%増、金額は25.2%増となっている。こちらも昨年の年間実績を上回り、過去最高を更新した。10年前(07年)のウイスキーの輸出額は11億9200万円にすぎず、10年間で10倍以上になっている。輸出額は輸入額の半分の水準になってきた。

「13年(39億8000万円)以降の伸び率が目立ちます。同年は前年比60.7%増、14年は47.0%増、15年は77.4%増と急伸が続き、16年は4.5%増と落ち着きましたが、17年は11月までで25.2%増と再び人気が復活しました。数量も増えていますが、伸びは金額のほうが大きいことから、高級品が人気になっているということでしょう」(経済ジャーナリスト)

 輸出先上位(金額ベース、17年1〜11月)は、米国33億2700万円、フランス26億1200万円、オランダ14億4400万円、台湾10億6000万円、シンガポール10億4600万円と続き、本場の英国も9億5000万円で6位に顔を出す。ちなみに、英国からの輸入額は183億円。

 海外の品評会でニッカウヰスキーの「竹鶴25年ピュアモルト」やサントリーの「響21年」などが金賞や最高賞を受賞するなど、海外での評価が高まったことが好調の背景となっている。加えて、年間2600万人超のインバウンド(訪日外国人客)が“ジャパニーズウイスキー”の味に触れ、品質の高さを認識したこともあるとみられる。

 ニッカの欧州市場への輸出は、06年から本格化。12年から米国、13年からは豪州でも販売を始めた。輸出の数量は、15年は前年比83%増となったが、その後は原酒を確保するため数量を制限し、今後は安定供給を図っていくという。

 サントリーは「響JAPANESE HARMONY」などプレミアムウイスキーを欧米中心に、アジア向けには「角瓶」を輸出している。ニッカ、サントリーともに蒸溜所を訪れる外国人客が増加中で、多国語対応の音声ガイダンスやイヤホンガイドで対応している。

●ビールは沖縄のオリオンビールに注目

 続いてビールの実績を見てみよう。17年(1〜11月)の輸出量は、10万6869キロリットルで前年同期比38.3%増、輸出額は117億6906万円で同32.8%増だ。ともに16年の年間実績をすでに上回り、過去最高を更新した。

 鮮度が重要視され単価が安いビールは、普通に考えれば輸出向きの商品ではない。安価な労働力や設備投資のコストを勘案すれば現地生産したほうがいいと考えがちだが、輸出が増え続けている。10年から毎年20%近い伸びを続け、15年は29.9%増、そして17年(1〜11月)も前年同期比32.8%増の伸びを記録した。

 17年のビール輸出国(金額ベース)は、韓国73億3324万円、台湾13億3163万円、米国7億4982万円、豪州7億3042万円、シンガポール4億2753万円と続く。近隣のアジア諸国が中心だが、米国にも結構出ている。

「アジア諸国では、日本産のビールは現地のビールよりもランクが上の高級ビールとして支持されています。『アサヒスーパードライ』が中心のアサヒブランドは、輸出と現地生産により50カ国以上で販売。サントリーは『ザ・プレミアム・モルツ』を、アジアを中心に展開しています。輸出量の多い韓国では、アサヒが11年から6年連続で輸入ビールのシェア1位です」(経済ジャーナリスト)

 国内のビール工場への見学者も多い。17年にアサヒビールの8工場を訪れた外国人は23万人を超えた(前年比22.4%増)。博多工場の海外来場者数は約10万5000人(同26.7%増)に達する。工場見学を担当するアサヒビールコミュニケーションは、毎年1回「おもてなし英語研修」を実施。15年には英語、韓国語、中国語の対応が可能な「外国語音声ガイドツール」を全工場に導入した。

 ビール輸出で見逃せないのが沖縄だ。沖縄県のビール輸出は09年ごろから増加傾向を示し、15年に輸出量2489キロリットル、輸出額3億8100万円と過去最高を記録した。その後も増え続け、17年1〜11月は同2799キロリットル、4億2217万円で前年の年間実績を上回り、3年連続で過去最高となっている。

 日本全体からすれば、沖縄のビールのシェアは金額ベースで3.6%と微々たるものだが、地理的にアジア諸国と近いことや地場のオリオンビールがこの数年、主力の台湾だけでなくベトナム、ロシアなどに向けて積極的な海外展開を図っていることが奏功した。今後の動きが注目される。

 ジャパニーズワインの人気も高まりつつある。醸造、蒸留技術の確かさ、品質の高さが幅広く認められている。

 酒類は地方の小さな業者が多いだけに、地方の活性化につなげてほしいものである。
(文=山田稔/ジャーナリスト)