いつの間にか隣人は外国人に(デザイン:池田 梢)

人口の減る日本社会。人手不足を埋める働き手として、外国人が着実に増えている。彼らはどこから来て、どこに住み、何をしているのか――。

『週刊東洋経済』は1月29日発売号(2月3日号)の特集「隠れ移民大国ニッポン」で、日本に住み、働く外国人の姿を追った。その中で、日本にいる外国人の様相は2010年代に入りそれ以前とは大きく異なることが見えてきた。在日外国人の中で中国人が最も多いのは変わりないのだが、ベトナム、ネパールなど東南アジアや南アジアの出身者が急増しているのだ。

17人中3人が外国人バイトのコンビニ店


都内のセブン-イレブンでアルバイトに励む、マンさんもその一人。ベトナム出身の20代女性だ。高校卒業後、2014年4月に留学のため来日。現在は日本語学校を卒業しファッション関連の専門学校に通う。日本に興味を持ったきっかけを尋ねると、「テレビドラマでみたニッポンの女の子、カワイイーと思ったから」とはにかむ。

生活費は、親からの仕送りと授業のない土日に集中して入るバイトで賄う。接客を通じて日本語を練習できるうえ、日本語学校の近くに店舗があったことが、このコンビニで働く決め手となった。

住まいは同じくベトナムから来日し日本語学校に通うアンさんとシェアする。「勉強は大変?」とマンさんに聞くと、「宿題しないと先生がチョー怒る」とアンさんと顔を見合わせて笑った。


「学校卒業後は日本で就職したい」と話すベトナム出身のマンさん(左)とアンさん(写真:『週刊東洋経済』編集部撮影)

マンさんが働くお店に日本人バイトは17人中わずか3人しかいない。ほかは海外からの留学生が占め、その国籍はベトナムに加えて中国、ウズベキスタン、バングラデシュと多岐にわたる。


オーナーの鄭さんは韓国出身で留学のため来日した(写真:『週刊東洋経済』編集部撮影)

実は店の経営者も外国人。韓国出身で留学のため新聞社の奨学金制度で来日した鄭亨竽(ジョ・ヒョンチョル)さんは、日本の永住権を持つ妻とコンビニオーナーとして独立、2016年8月に店をオープンした。外国人が多数を占める店舗になったのは、鄭さんにとっても予想外だったそうだ。

「店頭での告知だけでなく求人サイトも使ってみたが、応募してきたのはほぼすべて外国人。日本人がほしかったのだが……。お店をオープンしたころ、お客さまに『店長はいないのか』と呼ばれたので私が店頭に出ていったら、『お前も外国人かよ』と言われたことがある」

さすがにこの店の外国人比率は異例の部類に属すると思われる。とはいえ、セブン-イレブンでは都内店舗で働くバイトの2割が外国人だ。

なお留学生バイトの数を国籍別で把握しているローソンの場合、中国人に次いでネパール人、ベトナム人の順で数が多い。8000人を超える外国人バイトの8割超をこの3カ国で占める。

ベトナム人は技能実習生、ネパール人は家族滞在も

在日外国人の数は、法務省の在留外国人統計によると247万人(2017年6月時点)。名古屋市の人口を超え、京都府に迫る数だ。リーマンショックと東日本大震災のときに一時減少したが、再び増加に転じた2013年以降、2割増えた。

2013年以降の増加人数は43.7万人。その内訳を国籍別にみると、.戰肇淵燹18万人増)、中国(5.8万人増)、ネパール(5万人増)が上位3カ国となる。

この3カ国について在留資格でみていくと、ベトナム人は技能実習と留学での増加が目立つ。人材育成を通じて開発途上地域への技能や知識の移転を図るという外国人技能実習制度は、かつて中国人実習生の数が多かった。だが、中国国内の賃金上昇や人民元高で人数が減り、その代わりとしてベトナム人実習生が急増。今や国籍別ではトップの約10.5万人(2017年6月末)となっている。

中国人の在留資格で増加が目立つのは永住者と技術・人文知識・国際業務(技術者や通訳者、デザイナーなどが該当)だ。永住者は在留期間が無制限に認められており、一般にイメージされる「移民」に近い。ただ日本政府は「移民政策はとらない」という立場なので、移民の定義をしていない。


ベトナム人留学生と同様、ネパール人留学生も近年急増した(福岡市の日本語学校、写真:『週刊東洋経済』編集部撮影)

ネパール人は留学、家族滞在、技能での増加が目立つ。留学はベトナム人同様、背景にあるのは日本政府が2008年に策定した「外国人留学生30万人計画」。同計画が日本への留学ブームをアジア新興国で巻き起こした。

家族滞在と技能の増加は連動していると思われる。つまり、技能ビザで日本にいるのはインド料理店などでコックとして働くネパール人で、彼らの配偶者が家族滞在ビザで来日しているわけだ。ネパール人従業員を多く雇用する飲食店オーナーによると、「コックとして数年勤めた後に独立して自分の店を構える人たちがこの7、8年で一気に増えた。彼らが同郷の人を呼び寄せているようだ。永住権申請を目指すネパール人も多い」という。

「偽装留学生」も多い

日本で存在感の増す外国人だが、「多様化・共生が進んでいる」と手放しでは喜べない。


『週刊東洋経済』が本特集の「住民の4人に1人が外国人技能実習生 長野県川上村の反省」「急増する在日ベトナム人の苦境 制度化された搾取の構造」で詳細をリポートしたように、技能実習生制度は開発途上地域の支援ではなく企業や地場産業が安価な労働力を確保するための手段に成り代わっている。

また、留学生の身分だが実際には就労目的で滞在する「偽装留学生」も多く、その状態はやはり不健全だ。偽装留学生を大量に生み出した責任は、留学生30万人計画の下で留学ビザの発給要件を緩和してきた日本にもある。

「労働力としては受け入れたい、でも定住は困る」という本音と建前の使い分けを日本は続けてきた。冒頭のコンビニで働くベトナム人留学生のマンさんとアンさんは、学校卒業後は日本での就職を希望している。彼女らの夢をむげにしないためにも、現実を直視した外国人の受け入れ政策が必要となっている。

週刊東洋経済2月3日号(1月29日発売号)の特集は「隠れ移民大国ニッポン」です。