「投資信託は長期保有をしていれば安心」。これは本当だろうか(写真:tomos/PIXTA)

「つみたてNISA」がスタートしたことで、再び注目を集める投資信託。少しでも自分の資産を増やすためには、上手な選び方・使い方をしたいものだ。「投資信託は長期で保有する」、「信託報酬の低いものを選ぶ」、「定額積み立てで、ドルコスト平均法の効果を得る」などが、投資信託で資産形成するための「常識」とされているが、これらは本当に正しいのだろうか。国内外の株式等に投資するアクティブ運用のファンドマネジャーや、運用会社の社長を務めた大島和隆氏に話を聞く。

なぜアクティブ投信では長期保有が通用しないのか

私が銀行系投資信託会社のファンドマネジャーを務めていたのは、12年ほど前のことですが、今は当時に比べて投資信託に関して情報発信をしている人が格段に増えており、隔世の感があります。

ただ、さまざまな人の意見を拝聴して時々思うのは、「本当に投資信託の運用の現場を理解したうえでの発言なのか」ということです。正直、メディアなどを通じて流布されている「投資信託の常識」には、いささか疑問を覚えるものも少なくありません。

たとえば、「投資信託は長期保有が鉄則」。これは金科玉条のように言われていますが、アクティブ運用の投資信託には通用しません。なぜなら、20年、30年という長期にわたって運用することを前提にして設計されていないからです。

というよりも20年先、30年先も、市場動向に普遍的に適合できる運用スキーム(枠組み)や商品設計を、運用する人も、商品を企画・設計する人も描き切れないというのが、正直なところでしょう。

たとえば今から30年前の1988年当時、その後に日本経済が「失われた20年」と言われる長期停滞を経験することなど、誰が想像できたでしょうか。変化の激しい時代だけに、今は10年先を見通すのさえ難しい。10年前といえば、2008年。この頃、携帯電話はまだガラケーが中心でしたが、今はスマートフォンが全盛です。しかも、ガラケーの頃は通話がメインでしたが、今はスマートフォンで電話をかけている人の方が少数でしょう。基本的に、スマートフォンを介したコミュニケーションは、SNSを通じて行われています。

激しい変化ゆえに先を見通しにくい時代になり、特にアクティブ運用の投資信託は、設定時点の商品設計が、あっという間に陳腐化してしまいます。なかでも、私がかつて運用していた「さくら日本株オープン(現 三井住友・日本株オープン)」のように、運用モデルを駆使した投資信託は、運用モデル自体が20年後、30年後も機能するようには設計されていません。

ファンドマネジャーの寿命という問題もあります。ひとつのファンドを生涯運用するようなファンドマネジャーはそういません。会社勤めである以上、部署の異動や転職というケースもあり、その時点でファンドマネジャーは交代、運用の連続性はそこで途切れます。米国のフィデリティ投信の「マゼランファンド」を同社の看板ファンドに育てたピーター・リンチ氏は優れた運用者でしたが、1990年に他の運用者に交代してからの運用成績は、冴えない状態が続きました。

「信託期間無期限」のアクティブファンドは無責任

「20年も30年も保有できる投資信託を選びましょう」などと世間では言われますが、ことアクティブ運用の投資信託に限って言えば、そこまで長期の運用に耐えられる投資信託は存在しないと考えた方が良いでしょう。したがって、「信託期間無期限」とされているアクティブ運用の投資信託は、むしろ無責任なのではないかと思います。

前出の「さくら日本株オープン」は1994年9月に設定され、厳しい市場環境の中でも、相応に高いリターンを実現し、投資信託の評価会社からも高い評価をいただいたのですが、1998年12月から銀行の窓口で投資信託を販売するようになってから、状況が変わってきました。このファンドはもともと信託期間10年で運用していたので、1998年12月の時点で、すでに運用開始から4年が経過しており、残りの運用期間は6年を切っていました。


ところが、運用成績が良かったので、このファンドを販売する販売サイドから「信託期間を無期限にしろ」という命令が飛んできたのです。

そもそも10年の信託期間を前提にして商品設計をしていたのに、いきなり信託期間を無期限にしろというのは、無理な相談です。10年間は当初の商品設計、運用モデルで運用できたとしても、その後、いつまで続くか分からない信託期間中の運用にまでは責任が持てません。

結局、販売サイドの大きな声に押し切られ、信託期間は無期限にされたのですが、正直、今の「さくら日本株オープン」は、私が運用していた当時のそれとは、全くの別物といっても良いでしょう。

ちなみに同ファンドの純資産総額は、1月26日時点で約136億円ですから、受益者もそれなりにいらっしゃいます。その受益者が、私が運用を担当していた当時から保有し続けていらっしゃるのかどうかは分かりませんが、少なくとも私が運用を担当していた当時と今とでは、ファンド名は同じでも、中身は別物になっている可能性があります。

今、話題のつみたてNISAは、長期積み立て投資の観点から、信託期間は無期限、もしくは20年以上のファンドを対象にしていますが、当初のコンセプトに賛同して購入した投資信託でも、運用期間を経ることによって、コンセプトが変わっていく可能性がある点には、十分に留意しておく必要があります。