Windows 10 Insider Preview Build 17035以降に搭載されている新機能「近くの共有」

 Windows 10 Insider Previewの「Build 17035」以降に、近くにあるPC間でのファイル転送を可能にする「近くの共有」機能が追加された。BluetoothおよびLANを利用することで、PC間で直接ファイルを転送できる機能だ。

 手軽で便利な機能ではあるのだが、通信速度を意識しないと、初対面の人との雑談を引き延ばす必要があるかもしれない。

「近くの共有」での2つのストーリー

 果たしてどちらになるだろうか?

 次期Windows 10に搭載予定の「近くの共有」は、その用途として2つのストーリーが考えられる。

 1つは、初対面の人とのファイルのやり取りだ。例えば、打ち合わせの席などで出会った人から「ファイルを送ってください」と頼まれた場合に、この機能を活用すれば、その場で自分のPCから相手のPCへ、ワイヤレスでファイルを簡単に転送できる。

 もう1つは、社内での活用だ。同僚などから「ファイルを送ってください」と頼まれた場合に、メールやチャットといったほかのアプリを使うことなく、相手のPCへファイルを直接送ることができる。

 「特定の相手に直接ファイルを送れる」という意味では、どちらのストーリーも同じに見えるが、実は利用する通信手段の違いがある。その違いが「近くの共有」の評価に大きな影響を与える。

 結論から言えば、最初のストーリーはおそらく多くの人が「使い物にならない」と失望し、後者は「これもアリ」と新しいファイル転送手段として評価する可能性がある。

 今後のバージョンアップでこのあたりが改善される可能性はあるが、評価が真っ二つに分かれそうなのは、なかなか興味深いところだ。

ボタン一発でファイル共有の準備が完了

 「近くの共有」は、Windows 10 Insider Previewの「Build 17035」で追加された新機能だ。本稿では、執筆時点での最新版である「Build 17074」で機能を検証している。

 使い方は簡単だ。まず、送信側と受信側、双方のPCで機能を有効化しておく。アクションセンターの下部に新しく追加されたクイックアクションで[近くの共有]ボタンをクリックし、機能を有効にすればいい。アクションセンターはタスクバー右端のボタンから表示できる。

転送する両方のPCで「近くの共有」を有効にする

 準備はこれだけでOKで、後はエクスプローラーなどで、共有したいファイルを右クリックして[共有]を選択。共有ダイアログに表示された近くのデバイスから、送信先のPCを選べばいい。

ファイルを選択し、右クリックから「共有」を選ぶと表示されるダイアログから、送信先の端末を選択する

 送信先(受信側)のPCにメッセージが表示されるので、[保存して開く]または[保存]をクリックすれば、ファイル転送が開始され、受信したファイルが「ダウンロード」をフォルダーに保存される。

ファイルを受け取る側が転送を許可する

受信側に許可されると、ファイルが転送される

 事前の設定もボタン1つとシンプルだ。エクスプローラーだけでなく、Microsoft Edgeでも利用可能となっており、ファイル以外にURLを送信することもできる。

EdgeではURLも転送できる

 ファイルやURLは、現状ではメールやチャットアプリなどで共有することが多いが、この方法の場合、外部のサービスを経由しないので相手のアカウントを知る必要がない上、直接転送できるためデータそのもののプライバシーも守りやすい。

 コンピューター名で送信先を選ぶので、間違って送信する可能性が高いのは何とかする必要がありそうだが、ファイルをやり取りするための選択肢の1つとしては悪くなさそうだ。

機能の有効/無効やダウンロード先のフォルダーは、[設定]の[システム]にある[共有エクスペリエンス]に追加された項目から設定可能

BluetoothとLANを組み合わせてファイル転送

 このように、非常に手軽に使える「近くの共有」だが、個人的に興味深かったのは、ファイルを転送する方式だ。

 本機能は、Bluetoothがベースになっており、送信相手の発見にはBluetoothを利用する仕組みとなっている。このため、Bluetooth未搭載のPCや無効化されたPCは、送信先のPCに表示されない。

 しかしながら、ファイルの転送には必ずしもBluetoothが使われるわけではない。送信先PCへの通信手段がほかにある場合は、Bluetoothではなく、そちらを利用してファイルが転送される。

 具体的には、有線LANや無線LANだ。例えば、送信側と受信側、双方のPCが無線または有線で家庭内や社内のネットワークに接続されていれば、これを使ってファイルを転送することができる。

 つまり、Bluetoothで相手を発見し、LANでファイルを転送できるわけだ。

 ここで冒頭の2つのストーリーに戻る。

 通信手段がBluetoothしかない場合は、相手の発見だけでなく、ファイルの転送にもBluetoothが利用される。初対面の人とのファイルのやり取りなど、相手の情報が何もなくてもファイルを送れるため非常に便利だが、速度が快適だとはとても言いがたい。

 一方、BluetoothとLANを併用できる場合は、Bluetoothのみとは比べものにならないくらい高速だ。が、当然、LAN環境が必要になるため、家庭内や社内での利用に限られる。

 イベント会場用や来客用として無線LAN環境などがあれば活用できるが、やはり環境は限られるだろう。

 BluetoothとLANで、具体的にどれくらいファイル転送速度に差があるのかを検証したのが下のグラフだ。1Gbpsの有線LAN環境でテストした値となるため、無線LAN経由の場合はもっと速度が落ちることになるが、それでもBluetoothのみとは比べものにならないくらい速い。

 というか、Bluetoothのみの場合、実用的なのは、せいぜい数百KB程度のファイルまでで、数MBになるとかなり待ち時間が発生する。デジタルカメラの写真1枚(3MB程度)転送するのもひと苦労だ。

BluetoothのみとLAN併用の差 ファイルサイズ 3.32MB 44.1MB Bluetooth+有線LAN 一瞬 3.4 Bluetoothのみ 58.01 531

※検証環境 PC1:Qualcomm Atheros QCA61x4A(Bluetooth 4.1)、PC2:Broadcom BCM20702(Bluetooth 4.0)

 一方、LANが併用できる場合、かなり高速にファイルを転送できる。このため、社内や家庭内で別のPCにファイルを転送する場合には、メールなど、ほかの方法に頼る必要はない上、ファイルサーバーやNASを転送用のテンポラリとして使う必要もない。

 しかしながら、LAN経由が高速と言っても、いわゆるファイル共有プロトコルを使っているわけではないようで、共有フォルダーを介したファイル共有などと比べると速度はガクッと落ちる。下のグラフは、4.3GBのファイルを「近くの共有」と共有フォルダー経由(片方のPCでフォルダーを共有)で転送した場合の差だ。数十MBクラスのファイルならほとんど気にならないが、数GBクラスになると、待ち時間が長くなるので注意が必要だ。

「近くの共有」と通常のファイル共有の差(秒) ファイルサイズ 4.3GB 共有フォルダー 41.38 近くの共有 394

スマホと使えるようになると便利

 以上、Windows 10 Insider Previewに搭載された「近くの共有」を試してみた。

 個人的には、第三者とのファイルのやり取りに便利そうだと考えていたが、速度面を考えるとちょっと厳しそうだ。

 LANが使える環境、つまり社内でほかの人にファイルを渡したり、自宅で複数台PCを使っている場合にPC間でファイルを転送するといった使い方になりそうだ。

 もちろん、多くの人が望んでいるように、PC同士だけでなく、PCとスマートフォンの間でファイルを転送できるようになれば、もっと便利になるはずだ。今後のバージョンアップで、そうしたほかのデバイスとの連携も期待したいところだ。