ロボットなどの台頭で転職を迫られる人のストレスを和らげるには(写真:freeangle/PIXTA)

仕事の仕方、学習方法、生活様式……ロボットによって今後、あらゆるものが激変するだろう。だが、世の中がより生産的かつ安全で便利になると期待される一方で、新しいテクノロジーは雇用への不安をかき立てている。

こうした不安を増大させているのが、英オックスフォード大学のフレイ博士とオズボーン准教授の共同研究、そしてマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI、コンサルティング会社マッキンゼーのシンクタンク)による最近の調査だ。

「技術的失業」に対する不安は的外れ

MGIの調査は、先進国、途上国の双方で雇用の大部分がロボットによって置き換えられる可能性があるとしている。だが、技術的失業(約1世紀前に経済学者のケインズが作りだした言葉)に対する不安が的外れであることを、歴史や経済理論は示唆している。

過去にそうであったのと同じように、将来、技術的な変化によって生産性向上と所得の拡大がもたらされ、労働需要は引き上げられる可能性が高い。新しく生み出される仕事の多くは、現時点においては想像すらできないものとなる。

MGIの調査によれば、2030年までに世界の労働力人口の約15%、約4億人の仕事が機械によって置き換えられる(中位シナリオ)。自動化が急速に進めば、その人数も増え、最大8億人の職が奪われると試算されている。

ありがたいことに、所得上昇による総需要の拡大や、高齢化に伴う医療需要の増加などによって新しい職が生まれ、機械化による失業は埋め合わされる見込みだ。しかし、新しく生まれる仕事は従来のものと大きく異なるため、移行は痛みを伴うものになるだろう。

自動化の速度にもよるが、世界の労働力人口の3〜14%、0.75 億〜3.75億人が2030年までに職を変える必要が出てくるだろう。米国をはじめとする先進国では自動化が急速に進む公算が大きく、9〜32%が職種を変えなければならなくなるかもしれない。

製造業や事務職、高卒・中卒者のための仕事が減少する一方、医療・介護、教育、建設、経営の仕事や大卒以上の学位を必要とする仕事は増加するだろう。

職業訓練の拡大と見直しを

ある調査によれば、米国人の大半が自動化による格差拡大を懸念している。中間層の仕事の多くが機械との競争に破れる中、先進国の所得格差は今後も拡大し続ける見通しだ。ロボットに仕事を奪われた人がすぐに新たな仕事を見つけられなければ、摩擦的失業が増え、賃金は下落圧力にさらされる。

では、自動化が迫る職種転換のストレスを和らげるためには何ができるのか。まず、財政・金融政策によって完全雇用レベルの総需要を維持することが重要だ。インフラ、住宅、代替エネルギー、保育、介護への投資を促進する政策によって経済の競争力や成長率は高められるし、自動化によって盛り上がる職業分野で何百万人もの雇用を創り出すことができる。

次に必要なのが、職業訓練の抜本的な拡大および見直しだ。過去20年間、OECD加盟の先進国の多くで、技能研修や雇用調整のための政府予算は縮小してきた。このような流れは反転させなければならない。生涯学習を現実のものとする必要があるからだ。

キャリア中盤で、子どもや住宅ローンを抱えた働き手にとっては、年単位でなく、週単位もしくは月単位の研修が必要になるだろう。「ナノディグリー」と呼ばれるミニ学位や、積み重ね可能な単位の重要性は高まるものとみられる。

企業に従業員教育への投資を促す税制上のインセンティブなども必要かもしれない。とりわけ中小企業についてはそうだ。また、政府においては、医療や保育、退職保障、再就職支援といった社会保障給付を、仕事や職場を頻繁に変えても持ち運べるように共通の仕組みとしていく必要がある。

自動化による職種転換のストレスを和らげ、テクノロジーによる所得拡大の恩恵が公平に分かち合えるような政策を生み出せるかどうか。それは私たち次第なのだ。