ブームとなって2年になる「大人の塗り絵」に、ブランドも注目しはじめている。映画制作・配給会社のライオンズゲート(Lionsgate)、玩具メーカーのハズブロ(Hasbro)、食品大手のケロッグ(Kellogg’s)などが、塗り絵アプリの広告枠を買うだけでなく、オリジナルの塗り絵アプリをリリースしたり、「ブランデッド塗り絵」ページをデザインしたりしているのだ。ライオンズゲートは、映画『ワンダー(Wonder)』の宣伝のため、塗り絵アプリ『リカラー(Recolor)』のページトップに3カ月間バナー広告を掲載し、「ブランデッド塗り絵」ページを使ったキャンペーンを行なった。ユーザーがバナーをタップすると、4つの塗り絵と映画の予告編が置かれたブランデッドページが現れる。ハズブロも、リカラー上で同様のアプローチをとり、2017年10月の映画『マイリトルポニー(My Little Pony)』のキャンペーンをおこなった。また同年9月、ケロッグはオリジナルキャラクター「トニー・ザ・タイガー(Tony the Tiger)」とスナック菓子「ポップタルト(Pop-Tarts)」の3Dモデルを使ったキャンペーンを展開。こちらもリカラー上でユーザーが自由に色付けできた。さらにコミック出版社マーベル(Marvel)は、自社のさまざまな映画のキャラクターを起用したオリジナルの塗り絵アプリ「マーベル:カラー・ユア・オウン(Marvel: Color Your Own)」をリリースした。

高いエンゲージメントが魅力

塗り絵アプリの広告は、ほかのアプリ内広告に比べてエンゲージメントが高いとブランドはいう。リカラー、ピグメント(Pigment)、ユニコーン(Unicorn)、カラーボックス(ColorBox)、ピクセルアート(Pixel Art)などの塗り絵アプリは、アプリ内購入ではなくサブスクリプションによって運営されているため、熱心なフォロワーを獲得しやすいと、アドエージェンシーであるジュングループ(Jun Group)でマーケティング担当バイスプレジデントを務める、アダム・コーエン=アスラティ氏はいう。同社は消耗品、化粧品、ラグジュアリー、アパレルなどのブランドに塗り絵アプリへの動画広告出稿を斡旋している。塗り絵アプリユーザーの多くは30代女性であり、ブランドにとって魅力的な購買層だ。家庭用品の購入の73%は女性によるものだからだ。アップアニー(App Annie)の推計によれば、アプリ内広告の売上は2021年までに3倍に増加し、2010億ドル(約22兆円)に達する見通しだ。「クライアントのあいだで、塗り絵アプリはエンゲージメントの観点から、きわめて効果的な広告出稿先だという見方が広がりつつある」と、コーエン=アスラティ氏はいう。アップアニーのデータによれば、大人用塗り絵アプリは、Apple iOSストアの無料ランキングでも有料ランキングでも上位に入っている。現在の有料エンタメアプリのトップ50のうち、11本は塗り絵アプリだ。2017年11月、米国の塗り絵アプリ上位10本を合わせると、ダウンロード数は230万に達し、iOSとGoogle Playの両方で100万ダウンロードを達成した。アプリ分析サービスを提供する企業、アップトピア(Apptopia)のコミュニケーション責任者、アダム・ブラッカー氏によれば、塗り絵アプリがトップランキングに食い込むようになったのは2017年9月だが、12月にはすでに無料エンタメアプリ上位6本のうち5本が塗り絵アプリになり、唯一の例外は3位につけたNetflixだった。

 

塗り絵アプリ「マーベル:カラー・ユア・オウン」のページ

平均を上回る広告再生率

塗り絵アプリの方針は、アプリ内広告全体のトレンドと同じく、インタラクティブ広告を見せる代わりにユーザーが望むものを提供するというものだ。塗り絵アプリ内の広告の多くは選択式だ。ユーザーは、動画広告を見ることを選び、その代わりに特別版塗り絵ページへのアクセスを得ることができる。コーエン=アスラティ氏によれば、ジュングループの動画広告の完全再生率は91〜95%で、これは30秒動画広告の完全再生率の業界平均75%を大幅に上回る。コーエン=アスラティ氏は、ジュングループを通じて塗り絵アプリに広告出稿しているブランドの具体名や数は明かさなかったものの、広告枠はほかのアプリ内動画広告と同じく、CPVベースで販売されていると述べた。同社はファーストパーティーデータに基づき、塗り絵アプリのどのユーザーに広告を提示するかを決定している。ユーザーが広告をクリックし、15秒または30秒の動画広告を再生すると、特別版塗り絵ページにアクセスできるようになる。このページは動画を最後まで視聴しなければ開くことはできず、またコーエン=アスラティ氏によれば、同社は完全再生に対してのみクライアントに料金を請求している。つまり、ユーザーが動画の途中で視聴をやめた場合、クライアントに料金は発生しないのだ。動画を見終わったユーザーには、エンドカードが表示され、それ以降は別の広告が提示される。

独自フォーマットも成功要因

ゲームアプリでは、ブランドの選択肢はたいていバナー広告かプレロール広告だが、塗り絵アプリではそれ以外の、高いエンゲージメントが期待できる広告フォーマットも提供されている。たとえばクーハブ(Kuuhub)傘下のリカラーでは、広告主は「ブランデッド塗り絵」を出稿でき、この広告枠はCPMベースで販売されている。リカラーは月10ドル(約1100円)で無制限に塗り絵を楽しめるサブスクリプション制アプリで、月間ユーザー数は600万人にのぼる。ここ半年のあいだに、リカラーはケロッグ、ハズブロ、ライオンズゲートと提携し、これらのブランドのオリジナル塗り絵を配信してきた。

 

塗り絵アプリ「リカラー」で配信されている、ケロッグのブランデッド塗り絵。同社のシリアルのキャラクター「トニー・ザ・タイガー」のデザイン

 

クーハブの共同創業者兼戦略責任者、テロ・クイティネン氏によれば、リカラーのブランデッド塗り絵の平均滞在時間は10分だ。対して、一般的なインタラクティブ広告の平均滞在時間は43.7秒。また、ページトップのブランデッドバナーは、月間平均6000万ビューを獲得していると、クイティネン氏は言う。

 

アプリ「リカラー」内で配信されているケロッグのブランデッドページより、ポップタルトの塗り絵

ポジティブな体験に期待

また、塗り絵アプリを利用せずに「塗り絵広告」を出稿しているブランドも、高いエンゲージメントを獲得している。2017年、シューズブランドのティンバーランド(Timberland)は、ゲーム・クリエイティブ系の複数のアプリに、塗り絵形式の広告掲載を開始した。ユーザーがヒップホップアーティストNasの白黒画像に色を塗っているあいだ、その下に新作ブーツのアニメ動画広告が流れるというものだ。キャンペーンが行われた10月と11月の7週間で、23万人がこの広告を視聴し、その約半分は完全視聴したと、ティンバーランドの顧客エンゲージメント責任者、マイク・イザベラ氏はいう。研究によれば、塗り絵アプリにはストレスや不安を抑える効果がある。そのためブランドは、ユーザーが開放的でポジティブな気分のときにつながりを築くための手段としても、こうしたアプリは有効だと考えていると、コーエン=アスラティ氏はいう。「リラックスして集中しているときなら、ブランドメッセージをポジティブな体験にすることができる」。Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)