昨年12月に行われた車両内無人の自動運転実証

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 人間が運転しない「レベル4」の自動運転が実用化し、街中をシェアリングカーが走る2050年―。最も影響を受けるといわれるのが損害保険業界だ。日本損害保険協会によると16年度は業界全体の正味収入保険料が8兆3597億円で、そのうち4兆円が自動車保険。自動運転車やシェアリングカーの普及で自動車の保有台数や事故発生率がゼロに近づけば、4兆円の市場が無くなる恐れもある。

 「30年の時点で(自動車市場全体の)3%を占める自動運転車が移動全体の30%を占めることもありうる」。デロイトトーマツコンサルティングの福島渉シニアマネジャーはこう予測する。

 自動運転車によるカーシェアリングが普及すれば、人は自動車を保有せず、シェアリングカーを使う機会が増えるとのシナリオだ。そうなれば「自動車の保有が減れば契約数が減少。事故率が低下すれば損保会社は保険料を下げざるを得ない」と福島シニアマネジャーは語る。

 損害保険業界は台風や雪などの天候によって保険金支払額が増え、業績が変動する。自動車保険は安定して収益を上げられる数少ない事業だが、それが減少すれば各社の業績が不安定化する懸念もある。

 ただ、仮に自動運転車が普及しても、自動運転でない普通の自動車が残る限り事故リスクが完全に消えない。さらにサイバー攻撃で自動車が暴走するなど、新たなリスクの発生も危惧される。MS&ADインシュアランスグループホールディングスの柄澤康喜社長は「1回の事故による被害は、現在より大きくなるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

 自動運転による事故のリスクを誰が負担するかによって、損保業界への影響も変わる。家電のように生産物賠償責任保険(PL保険)として自動車メーカーが負担するというアイデアもあるが、メーカーの抵抗感は強い。自分の意思で自動運転車に乗ったドライバーの責任が皆無という理屈も違和感がある。

 メーカー、事業者、ドライバーの3社が納得できる負担割合を決めるには、まだ時間がかかる。「保険会社だけでなく、社会全体で議論が必要」と損保会社首脳は語る。

 損保業界にとって逆風だらけと思われる自動運転だが、サイバーリスク保険やシェアリングビジネス向け保険など、新たな商品の拡大につながるとの期待もある。