計画では21年までに韓国工場に100億円を投じ、生産能力を年1万トン増の同1万8600トンに引き上げる。電子用途のPPS樹脂は成熟化が進む一方、自動車用途はEVなどが1台当たりの樹脂使用量が多く、エンジン回りの耐熱部品のモジュール化も使用量を押し上げる見通しだ。

サムスン出身のキーパーソン
 韓国事業を強力に統率するのが、韓国中核会社の東レ・アドバンスト・マテリアルズ・コリアの李泳官(イ・ヨンガン)会長(70)。日覚昭広社長が「リーダーシップや決断力があり、事業推進にもたける」と評価する人物だ。

 李氏は東レが99年に設立した「東レセハン」の初代社長に就任以来、事業拡大をけん引。サムスングループ出身で財界とのパイプが太く、メーカーに欠かせない工場建設や設備調達などの知見も豊富だ。

 事実、サムスングループとの合弁会社、ステムコ(清州市)のスマートフォン用高機能回路材料は好調な販売が続く。阿部晃一副社長は「韓国事業は総じて堅調。大手メーカーの生産も順調で、素材需要も落ちないだろう」とし、業績拡大が続くと見通す。東レ韓国での売上高は2000億円半ば(17年)に届くと見られ、20年には5000億円を目指すとしている。

(文=小野里裕一)