通常の保険よりも有利なケースも少なくありません(写真:kuriaki / PIXTA)

家を買うと「保険」が付いてくる。ご存じの人も多いだろう。団体信用生命保険、略して団信(だんしん)、住宅ローンの返済中に死亡した場合や高度障害が発生した場合にローンの残債を肩代わりしてくれる仕組みだ。

保険会社の扱う保険が生命保険だけではないように、団信にもさまざまなオプションがあり、金融機関によって内容も異なる。中には通常の保険よりも極めて有利なものもある。

先に結論を書いてしまうと、団信に追加することができる、がんを含んだ「3大疾病特約」は一般的ながん保険や3大疾病保障保険と比較して、保障内容と費用のバランスが優れている。

住宅ローンを組む際には金利や返済額、ローン審査に通るかどうかに意識が向きがちだが、団信は数千万円の保険でもある。ローンを組んで家を買う際には高額な保険にも加入することを意識したほうがいいだろう。

3大疾病特約は安い

団信の特約には、住宅の新規購入はもちろん、ローンの借り換え、住宅の買い替えタイミングでも加入することができる。団信の加入はフラット35を除いて強制だ。団信無しのローンは極めてハイリスクであるため、フラット35でも団信と住宅ローンはセットで考える必要がある。

すでに説明したとおり、団信には特約(オプション)の追加が可能で、いちばん多いのが3大疾病特約だ。

3大疾病特約は、がんに加えて脳梗塞・急性心筋梗塞が対象となる。特約に加入すればこれらの病気を発症した際にもローンの返済が不要となる(条件等の詳細は後述)。3大疾病特約とほぼ同じ内容の保険は3大疾病保障保険、あるいは特定疾病保障保険として売られているが、コストパフォーマンスは特約のほうが大きく上回る。

フラット35では「新3大疾病付機構団信」という名称で団信の特約を提供している。金利として0.24%上乗せされることになるが、執筆時点の金利で3大疾病保障保険の有無でそれぞれローン返済額を計算すると以下のようになる。

借入額4000万円 返済期間35年 金利1.36%(2018年1月)
*無し 毎月の返済額 11万9749円 返済総額 約5029万円
*有り 毎月の返済額 12万4443円 返済総額 約5226万円

4000万円のローンを組んだ場合で比較すると毎月の返済額の差は4694円、これが4000万円分の3大疾病保障保険に加入した場合の実質的な保険料となる。金利上乗せのため、通常の保険と違って年齢・性別による負担額の違いは無い(利用にあたって51歳未満の年齢制限あり)。35年で197.1万円とそれなりの負担となるが、非常に手厚い保障であることは間違いない。

一方、住宅を購入するタイミングの30代半ばで3大疾病保障保険に加入した場合、診断一時金(所定のがんと診断された時に貰える保険金)が1000万円だと、保険料は男性で月額8000〜1万2000円程度となる。

※保険会社により入院保障や通院保障、掛け捨て型と積立型など保障内容が異なるため保険料に大きくバラつきがあり、例に挙げた保険料の目安は掛け捨て型で60歳満期の場合で計算

3大疾病保障保険は、一般的に3つの疾病に加えて死亡保障も付く。つまり生命保険としての側面もある。1000万円分の生命保険はこのケースでは3000円程度となるため、実質的な3大疾病の保障に対する保険料は5000〜9000円程度となる。それでも団信の特約と比較した場合、保険料に対して保障額は大きく違う。年齢が上がればお得度はさらに上がる。

なお、特約のシミュレーションで示した4000万円の保障はあくまでローンの返済開始時点の額となる。一定の保障が満期まで続く3大疾病保障保険と比べて、団信はローンの返済が進むほどチャラになる残債、つまり保障額が減る。

金融機関ごとの違い

団信の3大疾病特約は会社によって内容が異なる。すでに紹介したフラット35の新3大疾病付機構団信ならば介護保障が付く。

都市銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行を比較しても、特徴は異なる。

みずほ銀行の3大疾病保障特約は金利上乗せが0.3%で最もベーシックな保障内容となっているが、執筆時点で長期固定の金利水準は最低水準で31〜35年の全期間固定は1.235%となっている(2018年1月)。

三菱東京UFJ銀行では純粋な3大疾病特約ではなく、正式名称は「7大疾病保障付住宅ローン ビッグ&セブン〈Plus〉」の「3大疾病保障充実タイプ(金利上乗せ型)」として紹介されている。上乗せ金利は0.3%とみずほ銀行と同じだが、平成30年3月30日まではマイナス0.1%で0.2%の上乗せとなる。

執筆時点で三菱東京UFJ銀行の金利は31〜35年の固定で1.43%。みずほ銀行より金利が0.195%高めに設定されているが、特約を付けた場合の金利差は上記の優遇により0.095%に縮小される。

3大疾病保障特約の特徴

特約の中身も両行とフラット35でそれぞれ異なる。

がんの保障についてはみずほ銀行・三菱東京UFJ銀行・フラット35といずれもほぼ同じ条件だが、脳卒中・急性心筋梗塞はみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は以下のとおりだ。

・みずほ銀行
医師の診療をうけた日から60日以上所定の状態が継続したと、医師に診断された場合、または、急性心筋梗塞、脳卒中を発病し、その疾病の治療を直接の目的として、所定の病院または診療所において所定の手術を受けた場合(2015年12月1日以降の手術日が対象)
・三菱東京UFJ銀行
脳卒中・急性心筋梗塞を発病し、治療を目的として入院した場合。
※いずれも執筆時点、各社HPの説明より

みずほ銀行は「所定の症状」が60日継続した場合とある。これは「60日ルール」と呼ばれる3大疾病保障保険では定番の条件で、病気になっただけで保険金は貰えない。一方、三菱東京UFJ銀行では入院で支払うとあるため、条件が大きく違う。

「60日以上の『所定の症状』ってどういう状況?」ということになるが、みずほ銀行の場合は急性心筋梗塞ならば「その疾病により初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断された場合」、脳卒中ならば「初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上、言語障害、運動失調、まひ等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと医師によって診断された場合」と説明されている。

いずれも60日ルールとして一般的な内容だが、入院が条件となっている三菱東京UFJ銀行のほうが明らかにハードルは低い。ただ、みずほ銀行やフラット35の条件が厳しいかというとそうではなく、60日ルールに加えて「所定の手術」も条件となっているため、手術は条件となっていない3大疾病保障保険よりも条件は緩い。つまり、貰いやすいということになる。

対象となる病名だけを見るとどれも同じように見えてしまうが、病気ごとに条件が違い、その条件も入院、所定の手術、所定の症状が60日以上続く、とハードルの高さも異なる。

メリットばかり強調したが、団信の特約は途中でやめられない、繰り上げ返済をすると保障額が減ってしまう。これは住宅ローンと紐付いていることにより発生するデメリットだ。

※三菱東京UFJ銀行の特約は「3大疾病の保障が充実した7大疾病保障」でさらに4つの病気に対する保障もあるが、本稿は3大疾病特約の比較であるため詳細は同行のHP等を参考にされたい

3大疾病特約の必要性

団信の3大疾病特約が充実した内容であり、保障内容に対して保険料が低いことは間違いないが、がん等の病気にそこまで手厚い保障が必要なのか?ということになる。これは発生の確率や治療費、収入減少の影響などのデータを見れば、必要と言えるだろう。

がんの発生確率は、30歳男性ならば10年後に0.5%、30歳女性なら1%、40歳になるとそれぞれ10年後には男性2%、女性4%だ(現在年齢別がん罹患リスク 国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計<2017年12月8日>より)。若いうちに発症する確率は決して高くは無いが、無視できるほど低くもない。30〜40代でこの水準であれば備えておきたいリスクの1つとなる。

一方で、食事や交通費も含んだがんの治療費は50万円程度が36.3%、100万円が29.5%、200万円が20.2%と、200万円以下が80%以上を占める。ある程度の貯金があれば十分対応できる額だ(がんに対する意識調査 アフラック 2011年4月26日)。

それならば貯金がある人は数千万円も保障される特約に加入する必要はあるのか?ということになるが、これはあくまで治療費の額だ。実はここが落とし穴となる。がんのリスクは治療費ではなく、働き盛りのタイミングでの発症。それによって収入が大幅に減ってしまうことだ。

がんは基本的に高齢者がかかる病気であるが、高齢期であればすでに働いていない可能性が高く治療費はかかっても収入は減らない。つまり金銭的なダメージは治療費にとどまる。しかし働き盛りの時期にがんになると、治療費に加えて収入減少のダメージが加わる。

「がん患者の就労と家計に関する実態調査 2010」によれば、がんにかかった人の中で収入が減った人は67%となっている(定期的な収入があった20〜69歳のケース)。平均的な年収の減少率は36%とかなり大きい。収入が3割も減れば多くの家庭で貯金を取り崩すことになる。これが短期間で済めばいいが、長期にわたれば家計は破綻の危機を迎える。収入減少の負担は治療費よりもよっぽど大きい。同アンケート調査では全体の21%ががんをきっかけに退職していることも明らかにしている。

※このアンケート調査は一般社団法人CSRが法人化する以前に行ったもので、がん保険を販売している保険会社が協力していることも明記しておく。

死ぬより苦しい?収入減少

冷酷に考えれば死亡時は団信でローンの残債はゼロになる。生命保険に加入していれば支払対象者に保険金が下り、条件を満たせば公的保障である遺族年金も残された家族に支給される。しかし、死亡はしなくとも健康状態が悪化して収入が大幅に減る、あるいは退職して収入がゼロになってしまった場合、団信の対象にはならない。各種保障もない一方で、生活費はこれまでどおりに発生する。

保険加入の優先順位として1位は間違いなく生命保険だが、2位は医療保険ではなく、がん保険や3大疾病保障保険である。筆者はファイナンシャルプランナーとして普段のアドバイスでもそのように伝えるが、これは確率と影響度の両方を考慮した結果だ。

冒頭で説明したとおり、住宅ローンを検討する際は可能な限り負担を減らそうと考えているケースも多いため、返済額が増える特約は検討すらしない人も多いだろう。金融機関でも特約を積極的に販売しているといった話も特に聞かないため、自身で必要かどうか判断をして頂ければと思う。

今回の記事を読んで、入っておけばよかったと後悔している人は借り換えで加入することも可能だ。現在は低金利の状況が続いているため、特約付きで借り換えをしても負担が増えない、場合によっては返済額が減る人も多数いると思われる。借り換えを検討している人も参考にされたい。

※団信や特約の加入条件、保障内容、適用条件は金融機関ごとに異なるため、詳細を確認された上で申し込みをされたい。