今から33年前、1985年にその伝説の映画は作られました。かの手塚治虫氏を父として持つ手塚眞の商業映画デビュー作である『星くず兄弟の伝説』。時の若手ミュージシャン、高木完、久保田慎吾を主演に、ヒロインには今は亡き戸川京子、そして尾崎紀世彦も物語のキーマンとして躍動します。

ロックミュージカルというジャンルを超え、若さから創られたその衝動は、「伝説のカルト映画」と呼ばれました。あれから33年、ついに続編『星くず兄弟の新たな伝説』が完成。カルト映画好きの筆者としては感激そのもの。早速手塚眞監督へ公開初日1月20日にインタビューを敢行しました! 監督の考えるインディーズ魂を感じていただきたい。

手塚眞監督インタビュー

ーーではまず、公開初日を迎えた今のお気持ちをお願いします。

とにかく今は嬉しいです。撮影を終えてから2年間かかってしまったのでやっと辿り着けた、という気持ちです。前作から33年経ったので嬉しさがまとめてきていますね。33年かかって、やっとその清算が終わった、肩の荷が降りた気分です。

ーー撮影を終えた後のご苦労は以前イベントなどで聞かせていただきました。今回、手塚さんは監督だけでなくプロデューサー、共同脚本、作詞にいたるまで、製作において様々な役職を担当されていましたよね。

子供の頃に洋画を観ていて憧れて映画の世界に行きたいと思った。撮りたいと思っていて具体的な方法は高校の映画研究部で学びました。映画製作において様々な役職をこなすスタイルは学生映画のときからずっとやっています。前作は学生映画のノリをプロの現場に持ち込もうとしたのですが、結果的にはプロの現場の仕切りになりました。今回はいい意味でインディーズっぽく。あの時よりは大人になっているから、前よりはコントロールができていたと思います。

ーーキャスティングはどのように選ばれましたか?

前作のカン、シンゴ、ISSAYは必ず出したかったというのが前提です。若返る、ということを考えていたので、なるべくキレイでかわいい子、かっこいい男の子にしようと思いました。オーディションの際は前作のカンとシンゴの役を実際にやってもらいました。結果的にうまくやれたと思っています。

ーー新しいスターダストブラザーズもそうですが、ファンの注目の一つは、やはり今は亡き戸川京子さんが演じたヒロインまりものポジションだと思います。荒川ちかさんを選ばれたのは?

そうですね、一番悩みました。戸川京子のあのニュアンスは誰にも出せないと思ったので、まりもとは全く違う、現代的な子にしようと思いました。選んでみてこれは偶然なのですが、戸川京子は子役として山田洋次監督の『男はつらいよ』に出演していました。偶然なことに荒川ちかも子役時代に山田洋次監督の『東京家族』に出演していたんです。似たようなキャリアで不思議な縁を感じました。やはりカンとシンゴとまりものトリオは難しいバランスで、どれくらい前の映画をひきずって、新作でさっぱりと切り分けるか、そこらへんは非常に考えました。

ーー「スター・ウォーズ」もそうですけど、映画の続編は前作のオマージュなどのファンサービスは必要ですからね。

そうなんです。多少はそういう部分がないといけないし。

ーー「星くず兄弟」といえばやはり名物は豪華すぎるカメオ出演ですよね。今回のカメオ出演はどのように出演を依頼されましたか?

思いつきです(笑)。基本的にカメオ出演の方は台本にはもともと書かれておらず、思いつきで連絡をして「何日空いていますか? あ、じゃこの場面でこんな感じのことやるので来てください」というゆるいノリで来てもらいました。結果的にみんな喜んで出ていただいたので、安心しました(笑)。

ーー監督はどのシーンが好きですか?

どこも捨てがたいですね。通常の映画だと「見せ場」があると思いますが、今回の『星くず兄弟の新たな伝説』はどのシーンも濃いです。

 

ーー確かに(笑)。全編目まぐるしく変わりますよね。

そうなんです。何気ないカジュアルなシーンがないと思います。道を歩いているシーンすらネタを用意しています。私の作品の特徴かもしれませんが、自然とこうなっちゃいました。強いて言うなら、井上順、夏木マリさん、内田裕也さんが撮影現場で目の前で歌ってくれたのは嬉しかったですね。感無量でした。

ーー今作は「インディーズ映画」に位置すると思いますが、インディーズで作るということを監督はどのように思われていますか?

言葉だけの話にはなりますが、僕らが考えているインディーズは観客と目線が同じだということだと思います。ハリウッド映画のように大金をかけて「これを観ろ」、ではなくて、みんなで一緒になって楽しめる、いい意味で身内意識があること、そしてもう一つはメジャーとは違うもの。音楽でいうならオルタナですね。流行りとは違うことをやる、という意識は確かにある。予算の少ないインディーズ映画がみんな同じ傾向になってきていて、たまに強い映画があっても暴力的になってしまう。暴力的に激しいことがインディーズだ、となってしまっている。私はそれだけではないと思います。今回は違う方向から攻めてみようと思いました。インディーズ映画を観にいって、かわいくて楽しかったという感想がなかなかない、そういうのがあってもいいのではと思います。

インディーズだからと言って「これは俺の表現だ、これを観ろ」では成立しません。映画はお客が観るものだからです。勘違いしてほしくないのはお金がないからインディーズだとか、若いから技術がないからインディーズだというのは違うと思います。他がやらないことで成立している。つまらなかったら意味がない。斬新な映画でも、つまらなかったら意味がないと思います。

ーー今作は「ロック」がキーワードになっていると思います。では最後に監督にとって「ロック」とはなんでしょうか?

私はミュージシャンではないですが、私はロックとは「自由」だと思います。「なんでもあり」ではなくて「精神的にとらわれないこと」それがロックです。今回の映画ではその通りにやることができました。

ありがとうございました!

1月22日には出演者総出でライブも開催されました

1月22日、大雪の東京・渋谷WWWでは往年の「星くずファン」たちが一堂に集まりました。それもそのはず、なんと今回の『星くず兄弟の新たな伝説』の手塚監督、主演を務めた武田航平、三浦涼介をはじめヒロインの荒川ちか、劇中歌を唄っている元ピチカート・ファイブの野宮真貴、ISSAY、赤城忠治、久保田慎吾、高木完、新旧「星くずメンバー」が勢ぞろい。熱狂のステージは3時間を超え大団円を迎えました。ミュージカル映画の出演者総出でライブが開催されるなんて前代未聞。どれだけこの映画がファンから愛されているか実感できました。

※『星くず兄弟の新たな伝説』はテアトル新宿にて公開中ほか全国順次ロードショー

公式サイト http://stardustbros.com/