1月24日からの四大陸フィギュアスケート選手権は、日本の宮原知子と坂本花織にとっては、勝負というよりは平昌五輪へ向けてどういう調整ができているかを確かめる意味合いが強い大会となった。

 ショートプログラム(SP)で勢いを見せたのは坂本だった。右足の魚の目(うおのめ)が悪化して万全ではない状態だったが、「昨日の練習で中野(園子)先生がパットなどを工夫してくれて、今までで一番痛くなかったので、ほとんど気にならず集中できた」という。


優勝は坂本(中央)、2位三原(左)、3位宮原(右)と表彰台を独占した日本女子

「3回転フリップ+3回転トーループも3回転ループも、自分がいい時の幅や高さではなかったけど、降りられてよかった」と言う坂本は、後半に入れたジャンプでそれぞれ1.30点と1.20点のGOE(出来ばえ点)をもらう出来。ステップこそレベル3にとどまったが、ノーミスの演技で自己最高の71.34点を獲得した。

「五輪代表に選ばれた限りはミスをしてはいけないという緊張感もあって、今までと違いましたが、自己ベストだったのでめちゃうれしい」と明るい表情を見せた。

 一方、宮原のSPは「こっちへきてからルッツがハマっていない感じなので緊張していた」というように、やや硬い滑り出しになった。

 最初の3回転ルッツ+3回転トーループはルッツが回転不足を取られ、後半の3回転ループとダブルアクセルもGOE加点が0.90点、0.71点と低め。だが、スピンとステップはすべてレベル4にして、演技構成点もすべての項目で8点台中盤。71.74点でトップに立つ底力を見せた。

 ルッツに関しては「踏み切りと、トーをつくタイミングなどの微妙なところでよかったり悪かったりしていますが、フリーは回転不足のないプログラムにして自信につながるようにしたい」と意欲を口にしていた。

 2日後のフリーで勢いを見せたのは坂本だった。日本勢3人では一番早い21番滑走。スピードのある滑りから最初の3回転フリップ+3回転トーループをGOEが1.50点の出来にすると、続くダブルアクセルもきっちりと決め、これまでより大きな滑りでステップもこなした。

「全日本まではステップやスピンをけっこう練習していましたが、年明けからはそこまで練習をしていなかったので、それが出てしまったのは悔しい」と本人も言うように、スピンふたつはレベル3と取りこぼしたものの、後半に入ってもダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループで1.50点の加点をもらうなど、ジャンプをしっかり決めるノーミスの演技を披露。試合前から、チームメイトの三原舞依と「やろう」と話していたガッツポーズも出た。

 結果は、SPに続き自己最高得点の142.87点。合計214.21点と、スケートアメリカ以来3試合連続の210点超えを果たした。坂本は「3回連続で出したら本物だと言っていましたが、それを実現できたのでちょっとだけ自分を褒めようかなと思います」と明るく笑う。

 次に登場した三原も、持ち前の伸びやかな滑りで逆転優勝もうかがわせたが、後半の3回転フリップがノットクリアエッジと判定され、終盤の3回転ルッツが回転不足になるミスで140.73点。合計210.57点と坂本の得点には届かなかった。

 そして、最終滑走の宮原知子は、最初の3回転ループを着実に決め、落ち着いて滑り出したかに見えたが、続く3回転ルッツからの連続ジャンプはセカンドの3回転トーループが回転不足に。さらに、後半に入っても3連続ジャンプの最初の3回転ルッツで回転不足を取られるミス。続く3回転サルコウでは「ちょっと軸が外側に外れてしまった」と転倒してしまう。結局、得点は135・28点で、合計207・02点。坂本と三原に次ぐ3位という結果に終わった。

 優勝した坂本が言う。

「去年は舞依ちゃんが優勝したので『連覇を狙っているだろうな』と思ったけど、私も秘かに優勝を狙っていました。舞依ちゃんはこの大会で優勝してから本当に伸びていったので、私もここで表彰台に乗れば今後伸びていけるかなと思って。ショートもフリーもけっこう取りこぼしがあったので、まだまだ伸びるところはたくさんあるなと、あらためて感じました」

 坂本は、五輪ではものすごく緊張するだろうと考え、そのなかでもしっかり演技をするためのシミュレーションという意味合いも持ってこの大会に臨んでいた。

「ショートもフリーも頑張ろうと思ってやったけど、けっこう脚もガクガクで、自分の納得いくジャンプはできなかった。それでも大きなミスはなかったので、そこはこの大会で得たものかなと思います。ジャンプの加点は自分にとってはけっこう得点の稼ぎどころだし絶対に譲れないと思っていたので、そこで点数が取れたのはよかった」

 実際、坂本の全要素のGOE加点は三原の11.03点を上回る13.39点と、着実に進化を遂げている。

 その坂本に対し、大会前に感じていた不安がそのまま出てしまった宮原は、記者会見で珍しく涙を見せた。

「全日本のあと1週間ほど休み、出発の1週間前くらいから徐々に調子と体力に自信が持てるように上がってきたなという感じでした。今までにない休みだったので、そこからコンディションを上げるのが大変で、もう少し完璧な状態にまで上げられたらよかったなと思います。どんな時でもしっかりできる選手はできるので、そういう選手にならなければいけないということが、あらためてわかった大会です」

 全日本の状態を100とするなら、今はまだ60くらいだという宮原は、「自分に負けてしまったことや、やるべきことをできなかったことが一番悔しいですが、悔しい思いをしたからこそ、それを次につなげていかなくてはいけないので、今この瞬間から気持ちを切りかえていきたいと思います」と語った。

 宮原は今回の悔しさを大きなモチベーションにし、坂本は「自分は本当に勢いとか気合いというガッツ系の言葉しかないと思うので、このまま走っていけたらいいと思う」と気持ちを高めている。

 今シーズンのフィギュアスケート女子は、ロシアのエフゲニア・メドベデワとアリーナ・ザギトワが突出した状態で、宮原と坂本のメダル獲得には合計220点前後が必要になってくる。五輪に向けて、ふたりがこの四大陸で感じた悔しさと手ごたえは、その目標達成に向けて追い風になるはずだ。

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