パブリッシャーであるシュピーゲル・オンライン(Spiegel Online)のCEO、ジェスパー・ダウブ氏は、サブスクリプション(購読)モデルを作り上げるべきときが来たと考えている。

米DIGIDAYの最近のインタビューで、同氏にシュピーゲルの読者からの収益モデル、eプライバシーの規制やデュオポリー(複占)企業の持つ力について聞いた。

以下の会話は編集、要約されたものとなる。

――パブリッシャーの読者収益モデルへの取り組みについてどう思うか?



収益源の急激な変化が起きている。従来のディスプレイ広告事業は失速しており、プログラマティックも値下げ傾向にある。広告事業を立て直し、新しくて魅力的で、かつリーチだけではなくブランドセーフティを重視した広告パッケージを提供するのもひとつの手だろう。そして同時に、新たな読者収益のチャンスもあると考えており、サブスクリプションモデルには未来があると信じている。当社はシュピーゲルプラス・リローデッド(Spiegel+ Reloaded)という有料コンテンツを開発中だ。

――実験的な有料のデジタルニュース、シュピーゲル・デイリーもその一環だろうか?



そうだ。シュピーゲル・デイリー(Spiegel Daily)は、研究所で行っている実験のようなものだ。そしてその実験から収益も上げている。シュピーゲル・デイリーは、無料アクセスできる当社のウェブサイトや紙媒体の雑誌、デジタルコピーとは無関係の新商品となっている。Google AMPのテクノロジーを使って、有料デジタル商品をテストしてみたかった。これはアプリではないから、Googleと収益を分け合う必要もない。数字のうえではまだ目標には達していないが、多くを学んだし、販売プロセスでも嬉しい驚きがあった。

――ドイツメディアが、現在のプラットフォームにおけるデュオポリー(複占)について抱いている最大の懸念はなんだろうか?



デュオポリーの持つ力については激しい議論が交わされている。メディアごとにこの問題に切り込むアプローチは異なるし、こうした巨大プラットフォームとの付き合い方も異なっている。だがこれは多分に政治的な話でもある。自分自身がエコシステムのなかにいる以上、古き良き時代に戻してくれと泣きつくのではなく、適応していかなければいけない。我々はデュオポリーとの付き合い方を見つける必要があるんだ。

――ドイツのパブリッシャーが、GDPR以上にeプライバシー規制に不安を覚えているのはなぜだろうか?



広告主やマーケターにとっては、「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」による問題は大きなものだが、パブリッシャーにとっては、単に宿題をもらった程度の話だ。一方でeプライバシーの規制はヨーロッパのエコシステム自体に大きな変化をもたらす可能性がある。規制の表現があまりにも一般的すぎるためだ。簡潔に言えば、すべての人間がログインして、(パブリッシャーの)プラットフォームで何をするにつけても非常に詳細なユーザーの同意を求めることを強制するというものだ。小規模または中規模のパブリッシャーにとっては非常に大きな問題となる。

――これは各プラットフォームにどのような結果をもたらすだろうか?



登録したユーザーへ、そしてなにより、四大企業(Google、Facebook、Apple、Amazon)へと流れ込む広告、金、リーチが増大するだろう。GoogleとFacebookはすでにこちらに支援を申し出る準備をしているのではないかと思う。「御社のウェブサイトでも当社のログインを利用すれば、当社の登録ユーザーのコンテンツを(代わりに)提供する」とね。もしそうすれば、当社のユーザーをこうしたプラットフォームに移すことになる。

――デュオポリーは規制されるべきだと思うか?



問題は、(プラットフォームが)ジャーナリズムの観点からどうやって信頼のおけるソースを特定し、誰がそれについて判断を下すかだ。イギリス、ドイツ、フランス、スペインなどではジャーナリズムを生業にしている人間に求められる常識が浸透しているので割合に容易だろう。だがトルコをはじめ、世界には適切なジャーナリズムについて政府がまったく異なる見解をもっている国がある。こうした国についてプラットフォームはどのように扱うべきか。その国ごとの政府の見解に従うのか? これは難しい問題だ。

――イギリスでは、パブリッシャーが広告のフラウド問題により積極的に取り組むようになってきた。ドイツでも同様だろうか?



フラウドへの懸念は大きくなっている。(広告におけるフラウドは)2017年12月に大きく取り上げられた。シュピーゲルにとってはそこまで大きい問題とはなっていない。プログラマティック広告のシェアがまだそこまで高くないためだ。だが、ドイツの市場全体を見ればまた状況は違ってくる。

――Facebookは収益化において有効だろうか?



ヨーロッパで、Facebookの収益化に満足しているパブリッシャーは少ないだろう。当社はインスタント記事を提供して、収益を上げている。収益全体の4分の1とかそういった額ではないが、それでも追加の収益にはなっている。当社は「Facebookジャーナリズム・プロジェクト(Facebook Journalism Project)」に積極的に参加している。もしFacebookのアイデアが当社にとって魅力的でなければ、Facebookとの取引の量を減らす。そして逆に魅力的ならば、増やせば良い。もしFacebookに完全に依存しているパブリッシャーがあるとすれば、困ったことになるだろう。

――シュピーゲルは昨年の5月にSnapchatの「ディスカバー(Discover)」を立ち上げたが、その後はどうだろうか?



悪くない。商品のパフォーマンスには非常に満足している。当社が(ディスカバーで)リーチしたオーディエンスは、当社のチャネルがリーチする層よりも若く、女性が多い。収益の観点から見るとまったく満足のいくものではない。スナップ社は質の高いコンテンツを求めているが、プログラマティック広告がもっとも多い現状では、低価格で質の低い広告が販売されている。これではうまくいかない。これについては、いくつかのパブリッシャーと協力して(スナップ社と)現状を変えるよう協議を行っている。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)