テクノロジー開発に乗り出す異業種企業が相次いでいる。この流れが向かう先は?

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 これまでテクノロジー開発はIT企業の専売特許だったが、ここにきて異業種の事業参入が相次いでいる。大手でいえば、2017年6月にドンキホーテホールディングス(ドンキホーテHD)、12月にメルカリがそれぞれ自社主導でテクノロジー開発に乗り出すことを発表。具体的に事業が立ち上がるのはこれからだが、他の企業が追随する可能性は十分にある。

●生き残りのカギを握る 自社主導のテクノロジー開発



 「15年前からテクノロジーによって流通のあり方が変わってくることは予想していた」。17年11月のBCN取材で、ドンキホーテHDの大原孝治社長はテクノロジーが流通企業にもたらす影響についての見解を示した。長年、アイデアを温めていた大原社長がこのタイミングで動き始めたのは、Amazonという外圧に差し迫った脅威を感じたからだ。

 Amazonは17年8月、米国で高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット」を買収。実店舗をもつ流通企業の聖域とされていた生鮮食品すらもECに置き換えが可能であることを証明してみせた。それを支えるのは先進技術によって徹底的にムダを省いた物流システムだ。Amazonは数年後には倉庫の完全自動化も視野に入れているという。

 「5年後にシリコンバレーのIT企業が日本の流通企業の大株主になっていてもおかしくない」という大原社長の不安が、的中するシナリオも想定されてくる。

 他社を意識している点では共通だが、追随する国内のライバルと差異化するための“先手”として、テックカンパニーを目指すのがメルカリだ。研究開発組織「mercari R4D」を設立し、社会実装までを視野に入れたテクノロジー開発に取り組む。

 同社の山田進太郎会長は12月の会見で「圧倒的シェアを誇るメルカリといえど、5年先、10年先は分からない。今からテクノロジーで他社を寄せ付けないバリアを張る必要がある」と、その狙いを語った。3年以内に1000人規模のエンジニア組織を構築し、研究・開発をスケールアップさせる構想もあるそうだ。

●資金・人材繰りが問題に 業界再編や連合形成の可能性も



 成功例もある。エイチ・アイ・エスの傘下でテーマパークを運営するハウステンボスが15年7月にオープンしたロボットがスタッフとして働く「変なホテル」は、開業時30名体制だったが、現在では人間の従業員は7名。ロボットの導入でコストの大幅カットを実現した。

 もともとは外部の企業や研究機関が開発したテクノロジーの実証の場として機能していたが、17年1月にはエイチ・アイ・エスの資本でロボット事業開発会社を立ち上げ、本格的に技術開発をスタート。「変なホテル」は業績も好調で、すでに全国で4店を展開。海外進出も発表している。こうした技術による飛躍は今後、業界を問わず起こり得るだろう。

 しかし、誰もがこの恩恵を受けれるわけではない。テクノロジー開発には資金と時間が必要だ。技術に長けたエンジニアが不在の企業であれば、人材の獲得・育成から取り組まなければならない。もちろん競合する企業が先にテクノロジーをものにしてしまえば、投資に見合った見返りを得られない可能性もあるので、リスクは決して小さくはない。

 おそらく大半の企業は他社のソリューションを借りることになるが、先行企業がこれを是としないのは、収集するビッグデータに価値を見出しているからだ。消費者の購買や行動に関する情報は企業にとって貴重な財産だ。それを外に出すようでは自社の優位を維持できないと考えている。

 テクノロジーをパイプにした連合が形成されるパターンもあるだろう。開発部門をもつ企業がもたない企業を買収する、共同出資で開発会社を設立する、IT企業を中心に異業種がグループ化する、などさまざまなケースが考えられるが、業界の垣根がますます薄れていくのは間違いないだろう。(BCN・大蔵 大輔)