スバル・吉永泰之社長

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 SUBARU(スバル)で発覚した無資格者の完成検査問題が尾を引いている。無資格者が完成検査していた可能性のある車両について昨年11月にリコールを届け出て、12月19日には原因の調査結果と再発防止策を国土交通省に報告、これで問題を幕引きする目論見だった。

 しかし、抜き取り検査工程で燃費測定値を改ざんしていたことが調査の過程で発覚したが、こうした事実を報道されるまで公表しなかった。安全やこだわりの走りなどが評価され、年間販売100万台にまで成長を続けてしてきたスバルだが、ブランドイメージの失墜が業績に暗い影を落としている。

「すべてのステークホルダーに多大なるご迷惑とご心配をおかけし、心からお詫び申し上げます。調査結果を全面的に受け止め、真摯に反省し、猛省の上に再発防止をやり切っていく」

 スバルの吉永泰之社長は12月19日、無資格者の完成検査についての実態調査と再発防止策をまとめて、国土交通省に提出、その後の記者会見では深く頭を下げた。会見で吉永社長は「今回の調査以外に不正はなかった」と述べ、無資格者の完成検査以外での不正を完全否定した。

 しかし、翌日には検査工程で実施している燃費測定での改ざんが報じられた。外部の専門家による無資格者の完成検査問題の調査過程で発覚したもので、それによると一部の完成検査員が、完成車の抜き取り検査する工程での燃費測定で、一部車種について計測値を改ざんする行為があったとの発言があった。

 抜き取り検査は自主的に行っているもので国に届け出るものではない。ただ、スバルではこの事実を実態調査に記載しておらず、記者会見でも言及しなかった。しかし、報道されると一転、調査過程でこうした発言があったことを認めた上で「その時点では具体的な計測値の変更の有無、範囲などを客観的に確認できていなかったため、公表を控えていた」とコメント。外部専門家を交えて事実関係の徹底調査に着手、結果が判明してから情報を開示すると弁明した。このことについては国土交通省も問題視しており、徹底的に調査して報告するよう求められた。

●ブランドイメージは大きく毀損

 今回のスバルの不正が発覚したのは、日産自動車の組織的な不正が見つかったのを機に、国土交通省が日産以外の自動車メーカー、輸入車事業者に同様の事案がないか自主点検して報告することを通達したからだ。スバルは社内調査で不正が発覚してから国交省に報告、吉永社長は記者会見で深く反省している姿勢を示し「完成検査は重要なのに、社内で(無資格者が検査することに)マズイという認識がないままきた。根っこからすべてのことを見直したい」と述べていた。

 日産の西川廣人社長が無資格者の完成検査問題が発覚した最初の記者会見で「無資格者であっても完成車検査は行っており、安全・安心は保証する」と述べ、国交省や世間から強く非難されていたのを目の当たりにしていただけに、スバルは当初から低姿勢を貫いていた。

 ただ、当初、無資格者による完成検査は「現場は正しいと思ってやり続けてきた」と、完成検査を行っていた無資格者を悪気はなかったと擁護していた。

 ところが、その後の実態調査では国交省の監査の際、係長や班長の指示で無資格者を完成検査ラインから外していたことや、完成検査員になるための試験で、試験官が解答を教えるなどのカンニング行為が行われていたことが明らかになった。完成検査員になるために定められた講習を受けていないケースも見つかるなど、不正の内容はほぼ日産と同じく悪質だ。日産は国内向けモデルの生産をすべて3週間ほど停止し、完成検査体制を整えて国交省の承認を得て徐々に生産を再開した。これに対してスバルは、無資格者を完成検査ラインから外しただけで生産を継続している。

 スバルは衝突被害軽減ブレーキ「アイサイト」などの先進安全装備などが評価され、リーマンショック後、一貫して生産・販売を拡大して成長してきた。しかし、安全を売り物にしてきただけに相次ぐ不正の発覚にブランドイメージは大きく傷付いている。

●深刻な販売減

 12月19日の記者会見で、吉永社長は国内の受注台数について「足元では前年の7割ぐらい」に低迷、不正が国内販売に影響を及ぼしているとの見方を示す。12月の新車市場全体が前年同月比0.8%減だったのに対して、スバルの国内販売は同6.7%減と大きく落ち込んだ。

 スバルは不正発覚後、11月5日に予定していた「2017年スバル感謝祭」を中止、年末までテレビCMも全面停止するなど、販売活動を抑え気味にしており、これらが販売にも影響している。テレビCMは年明けから再開したが、自動車業界の新春賀詞交歓会への役員の出席を見送り、毎年1月に開いていた記者懇談会も中止するなど、自粛モードを続けている。

 スバルが1月15日に発表した2018年の生産計画は前年比3%減の104万台と前年を割り込む見通しだ。無資格者の完成検査問題によるブランドイメージの悪化や、新型車効果が一巡するため、国内販売(小売)が同11%減の15万7000台と1割以上落ち込むと見ているためだ。

 スバルは11月に発表した17年4-9月期決算発表で、連結販売台数が想定を下回ることから通期業績見通しの営業利益を300億円下方修正した。今後、抜き取り検査での燃費測定でも組織的な不正が明らかになった場合、国内でのスバルブランドが深刻なダメージを受けて業績にも悪影響が及ぶのは確実だ。規模は小さくても、北米や日本で「供給がまったく追いつかない」状態で販売を一貫して伸ばしてきた優等生スバルだが、重大な局面に立たされている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)