一夜にして韓国のスターとなったチョン、フェデラーに立ち向かう[全豪オープン]

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男女を問わず4大大会準決勝に勝ち進んだ初めての韓国人選手になるという歴史的快挙を「全豪オープン」で成し遂げるまで、チョン・ヒョン(韓国)はTwitterのアカウントを開設していなかった。

子どもの頃からの憧れの存在である「全豪オープン」6度優勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に対する勝利をはじめとしたメルボルン・パークでの快進撃のおかげで、チョンは瞬く間に韓国でK-POPスター並みの注目を浴びるようになった。

水曜日にTwitterのアカウントを開設して以降、チョンは4度しかツイートしていないにも関わらず、フォロワー数は24時間で11,000を超え、その後も増え続けている。

「聞くところによると、韓国では大騒ぎらしい」とチョンのコーチ、ネヴィル・ゴドウィンは木曜日にメルボルン・パークで語った。「ジョコビッチ戦の翌日、チョンは韓国のあらゆる新聞の第1面を飾った。それもそのはずだ」

もしチョンが、4大大会を19度制した次の対戦相手、ロジャー・フェデラー(スイス)を倒して初めてグランドスラム決勝に進出したら、どれほどの騒ぎになるだろうか。二人が顔を合わせる準決勝を、チョンの母国では数百万人が見守るに違いない。

「韓国の歴史を塗り替えているから、今みんなが『全豪オープン』を観ていると思う」とチョンは準々決勝勝利後に語った。

韓国では、テニスはこれまで一度もゴルフやテコンドー、野球、サッカーのような人気を得たことがなかった。市場価値の高いテニススターや、潤沢な資金を持つコーチング・システム、多くの高額賞金のプロトーナメントが存在する日本や中国とは異なり、韓国のテニスのインフラはまだ比較的未熟だ。

21歳のチョンは、この状況を変えようとする努力の成果である。生まれつき視力が悪かったチョンは、緑色のものを見るようにするといいという医者の言葉がきっかけで、子供の頃にテニスを始めた。そこで才能を見せたことから、韓国におけるテニスの振興を目的に電子メーカー大手のサムスンが助成する、ジュニア・テニスのプログラムに参加した。

「彼らがチョンのコーチ費用を負担した。それどころか、コーチを選んだのも彼らだ。もちろん、チョンが上手くなるにつれ、レベルも組織も変わっていった。そんな風に始まったんだ」とIMGでチョンの代理人を務めるスチュアート・デグッドは語った。

チョンはジュニア時代の2013年に「ウィンブルドン」で準優勝するなどの良好な結果を残していたが、その可能性が鮮明になったのは昨年のことだった。アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、ダビド・ゴファン(ベルギー)、ガエル・モンフィス(フランス)を倒した後、11月に行われて大きな話題となった初開催の「ネクスト・ジェネレーション・ATPファイナルズ」のタイトルを獲得したのだ。

デグッドが新しいコーチを試してみることをチョンに勧めたのは、この頃だった。「全米オープン」準優勝のケビン・アンダーソン(南アフリカ)が、長年コーチを務めたネヴィル・ゴドウィンと袂を分かったばかりで、チョンと相性が合うのではないかとデグッドは考えた。

ところがチョンはあまり気乗りではなかった。ここ数年、英語の習得に励んでいたものの、言葉の壁の不安があり、西洋のコーチを迎えることにためらったのだ。

「それでも (ゴドウィンと) トライアルをしてみて、いい感触を得た」とデグッドは語る。

チョンのプレーを2、3度観たことがあったゴドウィンは、チョンと組む可能性に胸を躍らせた。

「彼は驚くべきアスリートだし、非常に優れたヒッターだと思った。ジョコビッチがハードコートでスライドを始めて以来、このコートでチョンほどの動きを見せる選手はほとんどいない」とゴドウィンは言う。

チョンが元世界ランク1位のジョコビッチを子どもの頃から尊敬し、真似てきたことを思えば、驚くことでもない。チョンがメルボルン・パークのセンターコートでプレーすることを夢見てきたのも、12個のメジャータイトルを獲得しているジョコビッチが2008年に初めてメジャー優勝を果たしたのがこのコートだったからだ。

「ノバクみたいにプレーしようとしているだけ。彼はベースラインでいいプレーをするし、メンタルがとても強いから」と4回戦でジョコビッチを倒した後でチョンは語った。「今日、僕の夢が叶った」

今、チョンは準決勝でもう一つの大きなテストを受けることになる。フェデラーだ。このスイスの巨人にとっては、グランドスラム43回目となる準決勝だが、チョンにとっては初めてだ。

フェデラーは、これまでのチョンのテニスに感銘を受けている。

「ノバク相手に、驚異的なテニスをしたと思う」とフェデラーは言った。「ここでノバクを倒すのは、僕らの競技において極めて難しいことだ」

チョンは自身のゲームプランに集中して、ネットの向こうにいるフェデラーの存在について考えないようにする必要があると、ゴドウィンは言う。

「大切な瞬間だ。楽しめる瞬間だ。この調子でいけば、今後もこういう機会がもっと訪れるだろうが、今はこの瞬間を抱きしめるべきだ」とゴドウィンは語った。

勝っても負けても、チョンへの注目は高まり続けるばかりだろう。「全豪オープン」がアジア太平洋地域のグランドスラムを標榜している今、チョンにとっては自国企業の支援を取り付けるのに絶好の機会だと、デグッドは指摘した。

「今やこっちから声をかけなくても、向こうから声をかけてくる。一夜にしてこんなことが突然起きたのは、しばらくぶりのことだ」とデグッドは語った。

(C)AP(テニスデイリー編集部)

※写真は一夜にして韓国のスターとなったチョン・ヒョン
(Fiona Hamilton/Tennis Australia via AP)