アメリカでは、デジタル動画の製作者が次々とテレビへと軸足を移すなか、24時間のストリーミングチャンネル向けの番組製作を考えている人たちに向けて、「スキニーバンドル(視聴できる番組数を減らして安く提供するプラン)」が新たな選択肢となりつつある。

たとえばミレニアル世代に向けたビジネス動画ネットのチェダー(Cheddar)は、すでにディッシュ・ネットワーク(Dish Network)の「スリングTV(Sling TV)」で配信を行っている。また同社のCEO、ジョン・ステインバーグ氏によると、2018年はさらに積極的に配信を増やしていく予定だという。ほかにもCNN傘下の動画メディア企業グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)や、YouTubeの独立系ニュースネットワークのヤングタークス(The Young Turks)も、2018年の配信拡大のなかでスキニーバンドルが重要な位置を占めていると公表している。

一方「EWスクリプス(EW Scripps)」傘下でニュースを配信している「ニュージー(newsy)」は、すでに「スリングTV(Sling TV)」と「YouTube TV」の配信に加え、2600万人が視聴可能な従来のケーブルテレビでも放送している。これは親会社のスクリプス社と、コムキャスト(Comcast)やスペクトラム、AT&Tといった放送事業者が受託放送契約を結ぶことで実現した。すでにデジタルストリーミングバンドルの設立を支援しているストリーミングサービス「クランチロール(Crunchyroll)」ですら、テレビへの進出に意欲を見せている。

「まさに眼前の未来だ」



ヤングタークスの最高業務責任者、スティーブン・オー氏は、「(スキニーバンドル配信は)テレビ事業において、まさに眼前の未来だ」と語る。同氏は、4月から5月にかけてのヤングタークスのチャンネルを獲得するため、放送事業者5社と交渉中であることを明かした。「すべてが急激に変化していく時代のなかで、既存のテレビ事業のあり方が今後数十年続くのかはわからない。だが次に来るのがストリーミングバンドルであるのもまた事実だ。我々のような会社も、世界のCNNやMSNBCといった局と渡り合えるようになる」。

だが、同時に落とし穴も存在する。放送局は、デジタルパブリッシャーのチャンネル配信の契約料を払う価値があると考えるだろうか? 既存の放送やテレビネットワークのような歴史もなければ知名度もないデジタルパブリッシャーにとって、放送局に契約料を支払わせるのは決して容易ではない。だが、だからといってデジタルパブリッシャーが契約による収益化をあきらめざるを得ないというわけではない。

まず、無料で放送させるやり方がある。チェダーがまさにこれだ。サービスの基本バンドルに入れてもらうにあたって、チェダーはチャンネル内の広告インベントリーの50%と引き換えに放映料をタダにしている。もちろんこれは配信における収入源を減らすことになるが、ステインバーグ氏によると、その代わりに放送局のもっとも安い、すなわちもっとも人気の高いパッケージにチャンネルを入れてもらえる可能性が高くなるという。そして、チェダーは広告主になりうる企業に向けて広告を売ることで、新しく増えていく収益源を生み出している。

チェダーには、2018年に一般ニュース部門を立ち上げる計画がある。そして、ステインバーグ氏は「(基本バンドルにおける)唯一のニュースソースとなりたい。NBCやFoxと競合するのではなくね」と、語った。

いまは間違いなくチャンス



広告収入の増加が期待できるからといって、すべてのパブリッシャーが番組を無料で提供するわけではない。バンドル配信も可能な契約型の配信ネットワークでの放送を考えているグレート・ビッグ・ストーリーは、契約料による収益も含めた収益モデルを模索しているという。

グレート・ビッグ・ストーリーのウェン・ティウ氏は、「当社データと契約者のコンバージョン率を高める能力を活かすことで、より柔軟で優れた条件を放送局から引き出せる」と語る。

一方、ヤングタークスは、ストリーミングバンドルとの契約による総収益を念頭に置いており、競合他社との値下げ競争によって達成しようとしている。オー氏は、CNNのような大手ニュース局と比べれば格安に放送料を抑えた短期でバンドルに入るような契約を結ぶ計画を立てている。ヤングタークスがオーディエンスを集められることを示しさえすれば、契約者あたりの料金値上げの交渉がしやすくなる。

ひとつ言えることは、市場に参入するデジタルテレビ放送局は増え続けているいまは、間違いなくチャンスだということだ。スリングTVやAT&T、DirecTV Now、Hulu、YouTubeといった企業がインターネット上のテレビサービスに多額の投資を行っている。なかなか話がスムーズに進まなかったベライゾン(Verizon)も、2019年には市場に参入する見込みだ。T-Mobileも、最近ウェブテレビの新規事業のLayer3 TVを買収しており、2019年に自社サービスを開始する予定だという。

どのサービスでも、高額の放送やテレビネットワークを補完または代替するような安価のプログラミングが必要となる。そういった局面こそがデジタルパブリッシャーの出番だ。

広告費の上昇も見込める



さらに、TVRevでテレビ業界のアナリストを務めるアラン・ウォーク氏は次のように分析する。デジタルパブリッシャーが放送局から契約者関連の収益を受けとるのは理にかなっているが、デジタルパブリッシャーは実際にはそういった要求は行わないだろうし、場合によっては期待すらしないだろう。

「少なくともいまのところは、チェダーやニュージー、ヤングタークスらが多額の放映料を求めているとは思わない」と語るウォーク氏は、次のように予測している。「サービスが増えるほど、リーチできる人は増える。それによって広告レートが高くなり、本物のネットワークに近づいていくだろう」。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)