1月23日、国土交通省と経済産業省は国内トラックメーカー4社のトラックを用いて、隊列走行の実証実験を行った。各社のトラックには4社が共同開発した通信システムが搭載されている(記者撮影)

関東甲信地方を大雪が襲った翌日の1月23日、“物流の新たな大動脈”とされる新東名高速道路で、国の「トラック隊列走行」の実証実験が始まった。公道での隊列走行は今回が初めてだ。

実験では、長さ約12メートル・積載量25トン級の大型トラック3台が、隊列を組みながら時速約75キロメートルで走行。先頭トラックの運転手がブレーキやアクセルを踏むと、その情報が通信で後続2台のトラックに飛び、自動で加減速を行って約35メートルの車間距離を保つ。今回は3台ともに運転手が乗車し、ハンドル操作を行ったが、2年後の2020年には後続2台は「無人」での自動走行実現を目指している。ただその実現に向けてのハードルは高い。

狙いは物流業界の人手不足解消

実はトラックの隊列走行の実証実験はテストコースなどで過去にも行われていた。2008〜2013年にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施したプロジェクトは省エネを狙いとしていた。車間距離を詰めて走行することで空気抵抗が減り、燃費改善やCO2排出削減などにつながるかを実証。省エネ効果が確認され、いったんプロジェクトは終了した。

その後、最近になって物流業界の人手不足が深刻化。長時間労働、きつい、給料が低いといったイメージの根強い物流業界は新しい人材が十分に集まらず、高齢化も著しい。折しも政府は乗用車の自動運転実用化に向け大きく舵を切っている。トラックの隊列走行で運転の自動化が図れれば、人手不足の解消にもつながると考え、国土交通省と経済産業省による今回の実証実験が実現した。


隊列走行の実証実験には、国内トラックメーカー4社が参加した。異なるトラックメーカーによる隊列走行のテストは世界初だ(記者撮影)

1月25日まで新東名高速道路で行われた実証実験では、異なるトラックメーカーによる隊列走行のテストが世界で初めて行われた。欧米などでもトラック隊列走行の実証実験は盛んに行われているが、主に同じメーカーのトラック同士によるものだ。

今回の実験で使用されたのは、日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの国内トラックメーカー4社が共同開発したCACC(協調型車間距離維持支援システム)というシステムだ。

車間距離を一定に保つシステムでは、トラックに搭載されたカメラとミリ波レーダーで先行車との距離を検知するACC(定速走行・車間距離制御装置)が一般的だ。CACCは、これに加えて通信で先行車の加減速などの制御情報を受信し、加減速を自動で行う。先頭車でアクセルやブレーキが踏まれた情報が後続車に即座に伝わり、車間距離の確保がよりスムーズになる。

実証実験ではこのCACCの作動状況のほか、周囲の一般車両からトラックの隊列走行がどのように見えるか、また乗用車が隊列に割り込んできた場合にどのように対処するか、適切な車間距離はどのぐらいか、などを検証する。1月30日から2月1日にかけては北関東自動車道でも実験を行い、高低差がある道路でも車間距離を維持しながら走行できるかなどを検証する。

早ければ2022年に後続車が無人の隊列走行を目指す

今回は先頭車と後続車のいずれにも運転手が乗るが、2020年には高速道路(新東名)で、いよいよ後続車が無人の隊列走行を実現し、早ければ2022年に東京―大阪間の後続車無人隊列走行の実用化を図る青写真を描く。

2008年のNEDOの取り組みから隊列走行のプロジェクトにかかわる東京大学生産技術研究所・次世代モビリティ研究センターの須田義大教授は、「トラック隊列走行は、燃費の改善や省力化に加え、自動運転による安全性の向上も期待できる」とメリットを強調する。

だが、無人化に向けて課題は少なくない。まず現在搭載されているCACCではアクセル、ブレーキの制御は自動化されるが、ハンドルの操作に関しては人が行わなくてはならない。無人化となれば当然、車線の維持や変更が自動で可能なシステムの開発が必要になる。開発だけでなく、トラックメーカーがこうした先進技術を搭載した車両の量産体制を整える必要もある。

国がトラック隊列走行で想定するのは、先頭車以外は無人での走行であり、自動運転のレベルの定義でいえば、レベル3または4程度の技術が必要と考えるのが妥当だ。レベル3や4では特定の場所を走るといった一定の条件で、すべての運転をシステムが行い、自動運転モードでの運転の責任はシステムが負う。


後続車は無人でもレベル2相当

だが、「トラックの隊列走行は後続車が無人の場合でも、レベル2相当と考えている」と、経産省製造産業局自動車課の垣見直彦ITS・自動走行推進室長は説明する。どういうことか?

「トラック同士は物理的には連結していないが、(通信やシステムを通じて)電子的に連結しているという解釈を検討しているから」(垣見氏)という。隊列走行ではトラック同士は離れているものの、たとえばトレーラーやダブル連結トラックのように「物理的に連結している1台のトラック」と考える方向性という。日本の道路交通法が準拠しているジュネーブ条約では「一単位として運行されている車両または連結車両には、それぞれ運転者がいなければならない」と規定されている。3台のトラックを1台と考えれば、この条約に適合する。

ただ実際には、独立して走行している車両を“1台”と見なす考えには違和感がある。懸念されるのは、万が一事故が発生した場合の責任の所在だ。たとえばレベル2であれば運転の責任は運転手にある。後続車で事故が起きた場合、直接的に操舵・制御をしていない先頭車の運転者が責任を負わされる可能性があるということだ。また、システムの不具合やトラブルが起きたときに無人の車両の安全性をどのように確保するのかという問題もある。レベル1の技術である被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)を搭載した乗用車でさえも誤作動による事故が発生している。

こうした自動運転に関する道路交通の安全上の課題や責任問題などについては、「今では自動運転の推進派である」(前述の須田教授)警察庁交通局が中心となって有識者会議を積極的に開催している。その中で議論がいっそう深まっていくことを期待したい。

物流業界からは安全性に懸念の声も

では実際にトラック隊列走行の技術を“活用する”物流業界側は、こうした動きをどう見ているのか。全国の運送事業者の約8割が加盟する全日本トラック協会の齋藤晃・広報室長は「人手不足が深刻化している中、新技術を1つの選択肢として期待している。ただ、電子的な連結の安全性は本当に大丈夫なのか気になる」と率直に語る。


後続車が無人のトラック隊列走行は実用化されるか。人手不足が年々深刻になっている物流業界は、高い関心を示している(写真:豊田通商)

また実証実験が行われた静岡県を地盤に運送業を営むアトランスの渡邉次彦社長は、「国が隊列走行の活用を想定しているのは大手事業者だと思うが、車両台数40台程度のわれわれのような中小事業者にとっても人手不足は大きな課題。安全性に問題がないならば実用化に期待している」と話す。

トラック隊列走行の実用化が人手不足の解消や物流コスト削減などに寄与する可能性はある。ただ、それには絶対的な安全性の確保が前提になる。特に重い荷物を積んで長距離輸送を行うトラックは一歩間違えば大事故につながるため、乗用車以上に高い技術力が求められるといえる。安全性よりも省人化や燃費改善が優先されることがあってはならない。