今年6月に新社長に就任する川邊健太郎・現副社長(右)と、宮坂学・現社長(左)。IT業界の”老舗”は新進気鋭のベンチャーに対抗できるか(撮影:今井康一)

「まさに大抜擢」と評された社長交代から6年。国内インターネット企業の先駆者・ヤフーが、再び大胆な“若返り”のトップ人事、執行役員人事に打って出た。

次期社長に内定したのは、現在副社長兼COO(最高執行責任者)を務める川邊健太郎氏。1974年生まれの43歳、現社長兼CEOである宮坂学氏(50)の就任時より1歳若い年齢での就任となる。

黎明期からネットにどっぷりだった川邊氏

川邊氏はネット黎明期の1995年、青山学院大学在学中にウェブサイト制作などを手掛けるベンチャーを起こした。2000年、ヤフーによる買収・合併を機に、入社。その後は「Yahoo!ニュース」、動画ストリーミングサービスの「GYAO(ギャオ)」など、メディア関連の事業に長く携わった。


川邊健太郎氏は新本社のオフィス設計にかかわるなど、働き方改革にも熱心だ(写真は2016年10月の新本社内覧会にて、撮影:尾形文繁)

直近ではコマースグループ長として、ネットオークション「ヤフオク!」やネット通販(EC)「Yahoo!ショッピング」の事業を率い、親会社ソフトバンクとのポイント施策連携などを通じて流通総額の拡大に貢献した。最近ではグループ社員約6800人が勤務する本社移転の“引っ越し隊長”として、全フロアフリーアドレスのオフィス設計を提案・実現するなど、働き方改革にも熱心だ。

トップ交代と同時に、執行役員にも新たなメンバーが複数加わる。CFO(最高財務責任者)に就任する坂上亮介氏(2008年入社、42歳)、コマースカンパニー事業推進室長に就任する秀誠氏(2002年入社、39歳)、テクノロジーグループデータ&サイエンスソリューション統括本部長に就任する塚本浩司氏(2009年入社、45歳)など、40代以下の人選が目立つ。

「いつまでも前のテーマを追いかけるのではなく、新しい挑戦、テーマが必要な時期だと確信している。新しい山に登るときは、新しいリーダーシップの下で行うのが適切だろうと」。宮坂社長は1月24日に開いた会見の冒頭、トップ交代の理由についてそう語った。

ヤフーは宮坂体制の下、まずはパソコン軸からスマートフォン軸へのサービス移行を強力に進めてきた。加えて、2013年からはEC事業でも勝負に出た。ヤフーショッピングの毎月の出店手数料と、売り上げロイヤルティ(システム手数料)を無料化し、出店者数と商品数を大幅に増やした。こうした取り組みについて宮坂社長は、「まだ途中段階ではあるが、ある程度大きな前進ができた」と話す。

ヤフーが次の目標に掲げるのは、「データの会社」として存在感を増すことだ。「ヤフーは(創業から)21年間、サービスを通じて膨大なデータを蓄積してきた。そのデータの力をより解き放っていきたい」(川邊氏)。具体的にはネット広告やECなど、すでにある事業の収益性をデータを活用してさらに上げていくほか、ヤフーの蓄積しているデータを用いた他社に対するソリューションビジネスなども構想しているという。


宮坂学・現社長(左)は、ヤフーが100%出資する新会社で新規事業開発に取り組む(撮影:今井康一)

宮坂社長も退任後、新たな挑戦に乗り出す。新会社「Z(ゼット)コーポレーション」を設立、代表に就任し、ヤフーとは別組織で新規事業の開発に勤しむという。社名の「Z」には「Y(ヤフー)の次」という意味を込めた。取り組む事業や経営体制について詳細は明かされていないが、「ヤフーでやれないこと」にフォーカスするという。

「事業を回して成長させていこうとすると、今ある事業を掘り下げようという”知の深化”の方向に行きやすい。だが、(まったく新しい領域での)”知の探索”がなければ未来は作れない。今のヤフーのドメイン(事業領域)に当てはまらないようなことをやってみたい」(宮坂社長)

競争相手は手ごわい”爆速”ベンチャー

宮坂社長は就任以来、スピード感を持ってヤフーの組織とサービスをアップデートし続ける「爆速経営」を標榜してきた。前述の通り、スマホシフトやEC事業の拡大では確かな成果が出ている一方、国内IT業界だけを見ても、次々と新しい領域に踏み出すメルカリやDMM.comなどのほうが“爆速感”を醸すようになっている。


宮坂学・現社長と川邊健太郎・新社長は、二人三脚で”爆速経営”に取り組んできた(写真は2013年、撮影:今井康一)

川邊氏もヤフーの置かれている競争環境を楽観視していない。「客観的にヤフーをみると、下からは気鋭のベンチャーに突き上げられ、上を見れば(グーグル、アマゾンなど)テックジャイアントといわれる巨大なグローバル企業がいる。両挟みの状態だ」。

その中でどう戦っていくのか。「ベンチャーに対しては、やはり大きなネット企業ならではの組織力、資金力、ユーザーの多さを武器にサービス開発を行っていく。一方、テックジャイアントに対しては、やはりデータの力が重要になってくる。おそらくヤフーは、日本に住んでいる方についてのデータをいちばん持っている会社。これを利活用することで競り勝っていきたい」(川邊氏)。

スタートアップの経営者の中には、生まれたときからインターネットが身近にあったネットネイティブ世代が出てきている。ヤフーは彼らに負けない発想力、スピード感を持ち続けられるか。若返り人事の真価が問われる。