(※Youtube MBCNEWSより)

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 北朝鮮・金正恩第一書記が「新年の辞」で、平昌冬季五輪への参加意思があることを表明してから2週間、韓国政府の素早い対応もあり、南北間の閣僚級会談が行われ、次官級実務者会議が行われ、IOC(国際オリンピック委員会)では北朝鮮選手のオリンピックへの参加と合同入場が承認されるという急転直下の南北和解ムードが醸成されている。

 今回の平昌冬季五輪への北朝鮮の参加が韓国政府にもたらす影響は大きい。

 何よりも、北朝鮮にも「過去最悪の非人気大会」(1月21日労働新聞)と称され、国内外の観客動員に頭を悩ましていた韓国にとっては、何よりもの「目玉商品」が出来たことが大きい。

 世界大会等における南北合同チームの結成や合同入場は過去にも何度かあるが、ことオリンピックでの実施となれば、国際的な関心も高まる。実際に韓国国内におけるオリンピック熱は、合同チームに対する話題を中心に急速に熱を帯びている。

 また今回の一連の動きが、北朝鮮の核開発やICBMの試験発射等で極度の緊張状態にあった東アジア情勢の緩和にも大きな影響を与えている。

 米・トランプ大統領は南北対話を歓迎するコメントを発表し、米韓合同軍事演習も現時点ではオリンピック・パラリンピック期間に限定されてはいるが、休止が決定されている。

 また南北閣僚級会談では、平昌五輪への参加議題の他にも、南北間の諸問題について多角的に議論された。離散家族の再会や開城工団の再始動等、更なる南北融和への期待感を韓国政府は隠していない。

 一方で北朝鮮側も、韓国政府との融和の先には米朝直接交渉を見据えており、国際的な制裁の中で自らの体制を維持するための道筋を作ろうとしている。

 南北融和をより演出したい韓国政府や南北融和に危機感を募らす保守層に対する牽制をしながらも、南北融和に前向きな姿勢を崩してはいない。

 朝鮮半島の緊張緩和を歓迎するムードが国際的に広がっているが、視点を変えればスポーツの祭典、平和の祭典であるオリンピックが、前述の様に、高度な政治活動に利用されているのではとの疑問も湧く。

 今回のIOCの決定が国連の制裁決議に抵触するか否かの議論はさておき、本稿では南北合同チームの象徴となった、女子アイスホッケーチームの「犠牲」に焦点をあててみたい。

◆女子アイスホッケー南北合同チーム結成で涙を飲む選手たち

 今回の平昌五輪における、南北統一チームの象徴は女子アイスホッケー競技にある。元来は韓国代表として、23名の選手が選抜されていたが、今回の南北合同チームの結成により、夢であったオリンピック出場が危ぶまれる選手が出ると懸念されている。

 韓国政府は、北朝鮮の選手が合流しても、韓国代表23名の枠は崩さず「23名+α」案を提唱してはいるが、競技当日のエントリーは22名のままとなっている。韓国政府が、同競技の選手団には事前の通告なく合同チーム結成を決定したことも選手たちに動揺を広げている。

 韓国女子アイスホッケーチームの監督である、カナダ人のモーリー監督(30歳)も「オリンピックが間近に迫っているこのタイミングでの単一チームの結成は衝撃的だ」と否定的なコメントを発表し戸惑いを隠さない。

 そもそもオリンピック開催まで3週間に迫ったタイミングで、北朝鮮の選手が追加されれば、チームが築いた団結力や作戦システムの変更等を余儀なくされる。それを浸透させる時間すらもない。また韓国と北朝鮮の言語は共通であるが、こと競技に関しては選手たちが使用する単語も違う。

 1月11日に、国会議長室とSBSが韓国全土の19歳以上の成人男女1000名以上を対象に実施したアンケートでも、72.2%が「合同チームを無理して構成する必要がない」と回答した。

 特に、文在寅政権のコア支持層でもある20代、30代が強く反発している。19歳〜29歳の回答者中の82.2%、30歳〜39歳までの82.6%が反対の意思を表明している。

 この様な世論の反発に対し、李洛淵国務総理は、1月16日に開かれた新年記者団との懇談会で「(韓国の)女子アイスホッケーは、韓国の世界ランキングが22位、北朝鮮が25位でメダル圏にある訳ではない」とし、「韓国チームが合同チーム結成によって、逆に戦力強化の良い機会になると考える肯定的な雰囲気もある」と合同チーム結成になかば強引に意義を付与している。

 また21日には、尹永燦(ユン・ヨンチャン)国民疎通首席が、青瓦台(大統領府)の正式なコメントとして、「この間、汗と涙を流し練習に邁進してきた選手たちが、一部でもその出場機会を奪われるのではないかと憂慮するのは当然のことであり、文在寅政府は、選手一人ひとりに対し、受けるであろう否定的な影響を最小化するために最善を尽くす」と発表した。

 また「様々な憂慮はあるが、我々は平昌オリンピックを必ず成功させなくてはならないし、北朝鮮の参加はオリンピックの成功に寄与する」と政府の見解を説明した。

 日本では過去、1980年のモスクワオリンピックをボイコットするという事態を経験している。オリンピック初の共産圏開催となったこのモスクワ五輪には、その前年1979年のソビエト連邦(当時)によるアフガニスタン侵攻を口実に、アメリカのカーター大統領がオリンピックへのボイコットを発表し、日本もそれに呼応。当時の選手たちは涙をのんだ。

「スポーツと政治」が国際的に議論された時である。

 今回の平昌冬季五輪への北朝鮮選手の参加は、形は違えど、スポーツと政治、オリンピックと政治が密接に絡んだ事案であることは間違いない。国際的な歓迎ムードの中、実力以外の要件で涙をのむ選手がいることは知るべきだ。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>