隠れ本命(!?)のケルバーが全米準優勝のキーズを倒し、4強入り

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コート上での勝利者インタビューで、アンジェリック・ケルバー(ドイツ)は「自分のゲームをすることだけ考えた」と数回、口にした。「ハードヒッターの彼女とはいつもタフな試合になります。自分のゲームをすること、ロッド・レーバー・アリーナを楽しむことだけ考えていました」というように。

例えばプロ野球のピッチャーがインタビューで「自分のピッチング、自分のピッチング」と連発すれば、表現力に乏しい、芸のない受け答えと言われかねない。しかし実際、自分のプレーを貫き、それを相手に押しつけることは戦術の第一歩だ。

ケルバーはそうして準々決勝でマディソン・キーズ(アメリカ)に快勝した。6-1、6-2という一方的なスコアのひとり舞台だった。キーズは昨年の「全米オープン」からグランドスラム2大会連続の8強入りだった。しかも、ここまで4試合で失セット0と、楽々勝ち上がっていた。失ったゲーム数の合計も、準々決勝に進出した選手で最少の19。1試合の平均所要時間では、ケルバーより19分少ない63分だった。

一方、ケルバーは2012年に第30シードで出場して以来、「全豪オープン」では最も低いシード順位となる第21シードで大会を迎えた。前哨戦の「シドニー国際」で優勝していたが、昨年はランキング1位で迎えた「全豪オープン」に、今年は16位で臨むケルバーを優勝候補に推すのをためらう理由はいくつもあった。実際、4回戦では伏兵シェイ・スーウェイ(台湾)に大苦戦、第1セットを落とし、第2セットも5-5までもつれた。

第21シードは、この日、準々決勝に臨んだ4人で最も低いシード順位でもある。ところが、この試合ではケルバーの「自分のゲーム」が冴えに冴えた。守備がベースだけに、華麗なスタイルとは言いがたい。相手のキーズが小気味よいアタッキングテニスの選手だけに、ケルバーのテニスは少し泥臭く見える。

しかし、それがキーズにはことのほか効くのだろう。両者の過去の対戦成績は6勝1敗とケルバーが圧倒していた。

ケルバーは試合後、プレースタイルについてこう話している。「私はディフェンスが武器で、よく走って、全部のボールを返すことができます。でも、一方では自分のゲームを進歩させようとしています。私は攻撃的にもプレーできると思っています。これが今季の目標で、少しでも良くなるように、どの試合でもトライしています」。

あまりベースラインから下がらず、がっちり構えて跳ね返す。よく走ってキーズの強打を拾う。アンフォーストエラーは2セットでわずか7本という堅実さだった。そうして、狙い澄ましてプレースメントする。相手に読まれないように、できるだけコースを隠しながら。

このカウンターパンチはもともとケルバーの武器だったが、この試合ほど鮮やかに相手のコートをえぐるのは見たことがなかった。自分のプレーに徹する、その徹底ぶりが、16年9月、ケルバーを世界ランキング1位に押し上げた。そして、大きくランキングを落として苦しんだ17年のシーズンを経て、そのプレーを攻撃的に改良しようと取り組んでいる。

ケルバーは準々決勝に残った選手で唯一のグランドスラムタイトル保持者だ。今季はこれまで10戦(今大会を含む)して負けなし。準決勝進出で、大会後のランキングではトップ10復帰が確定した。

上位シードの陰に隠れていた"本命"が浮上してきた。静かに準決勝に進出したケルバーが、2年ぶりの栄冠を狙う。

(秋山英宏)

※写真は準決勝に進出したケルバー
(Photo by Cameron Spencer/Getty Images)