中国への移籍が決まったマスチェラーノの送別式が、24日にバルセロナで行なわれた。過去にこうした盛大な送別式が実施されたのはシャビなど一部の選手のみ。チームへの高い貢献、優れた人間性が評価された結果だろう。(C)Rafa HUERTA

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 1月24日午前11時、バルセロナはハビエル・マスチェラーノの退団に伴い、送別式を催した。これは、特別待遇を意味するものだ。

 式には、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長をはじめとするフロント陣、コーチングスタッフ、リオネル・メッシらチームメイトなど関係者一同が参加し、さらに長い間ともにプレーしたOBのカルレス・プジョールやエリック・アビダルも駆けつけた。

 この日メッシは、ネクタイを締めたスーツ姿で登場し、周囲を驚かせた。バロンドールなどの授賞式以外でメッシが正装に身を包むことはほとんどない。これは、ヘフェシート(マスチェラーノの愛称。『小さなボス』の意)への敬意と受け取られた。

 そんなチームメイトから賛辞であふれるビデオを送られたマスチェラーノは、涙を隠せなかった。

「7年半前、僕は夢を叶えるためにここにきた。ついに、目覚める時がやってきたようだ。夢は終わった。思っていたより、長く続いたよ。こんなに続くなんて、想像もしなかった。アディオスを言う時がきた」

 必死で笑顔を作っていたが、その声は震えていた。アンドレス・イニエスタやメッシらは舞台のマスチェラーノから目をそらさず、守護神マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンは目を潤ませていた。

 ロッカールームでの思い出を聞かれると、「入団前は、難しいロッカールームだろうなと想像していた。偉大な選手がたくさんいたし、なにより、多くのタイトルをすでに獲っていたから」と明かし、「でも、まったく逆だった。素晴らしい人間性を持ったグループがそこにはあったんだ。僕が考えるに、ここ数年、バルサが上位に君臨しつづけている秘密はそこにある」と続けた。

「最初にその道筋を作ったのは、プジョール、シャビ、ビクトール・バルデス……」と話しながら、会場のプジョールに微笑みかける。

 そして現在のチームメイトたちに話しかけるように、こう続けた。

「その後、リーダーは変わっても、その価値は引き継がれていった。それが、バルサが偉大なチームでありつづけている秘密だ。楽しみながら、明るく日々を過ごす。練習でも遠征でも試合でも、とにかくその瞬間を楽しもうとする。だからこそ、時間が早く過ぎたんだ。7年半在籍したけど、もっとずっと短く感じた。すごく良い時間を過ごせたから」

 マスチェラーノは、「歴史に残るチームの一員になれた。バルサは、僕のキャリアにおいて、最高の章であり、こういった形で出て行けることを、心から幸せに思う」という言葉で締め括り、最後は笑顔でステージを降りると、チームメイトたちがこの日の主役を次々に抱きしめた。

 終始、感極まった様子を隠すことなく、それでも穏やかに、そしてきっぱりと言葉を紡いだマスチェラーノ。「ピッチ内外での手本」と言われた男は、最後まで、みずからのスタイルを崩すことなく、最後まで、ヘフェシートであり続けた。

文●山本美智子(フリーライター)