日本経済新聞社は25日、金融機関向けのメッセージプラットフォームを手がけるシンフォニーコミュニケーションサービス(Symphony Communication Services)との業務提携を、プレスリリースで発表した。2014年に設立されたシンフォニーコミュニケーションサービスが提供する「シンフォニー(Symphony)」は、金融業界向けに特化したSlack(スラック)のようなコミュニケーションツール。2017年には日本法人も設立されており、2018年には日本語版のリリースも控えている。そこに日経がコンテンツを提供することで、シンフォニーの日本展開を支援するとともに、日経自身の情報発信力をさらに強化していくという。この取り組みの第一弾として日経は、同社グループの人工知能(AI)を活用した金融・経済分野の情報提供サービス「日経 DeepOcean(ディープオーシャン)」のシンフォニー向けアプリケーションを提供。このアプリを「シンフォニー」に組み込むことで、プラットフォーム上で交わされる会話において特定の企業名などが出てきたときに、AIがそれに関連する日経グループの膨大な記事や数値データから適宜選んで、情報提供してくれる。「金融機関のコミュニケーションツールというとブルームバーグ(Bloomberg)のサービスが有名だが、ここ数年、国内の外資系企業や金融機関においてシンフォニーが存在感を増していた」と、今回の提携を担当した日本経済新聞社の上席研究員、山田剛氏は語る。「このシンフォニーの盛り上がりは日本国内だけのものではなく、世界では標準化しつつある。そこで、今後どのようなプラットフォームにコンテンツを配信していくかを考えたときに、シンフォニーが有力なパートナーとして頭に浮かんだ」。一方、シンフォニーCEOのダービッド・グーレ氏も、日経 DeepOceanのようなアプリを組み込むことで、シンフォニーを離れることなく、適切な情報を得られるようになるのが強みだと語る。「このようなコンテキシャルインテリジェンス(文脈的知性)を呼び込むことで、人間がより賢くなり、早く正確に決断できる」。

「ブルームバーグキラー」

現在270社以上の企業、そして30万以上のユーザーが利用しているシンフォニー。利用される地域の内訳は、北米が40%、ヨーロッパが35%、残りの25%がAPACとなっており、いまや全世界で使われている。その一番の魅力は、安価な導入コストだ。直接的な競合と見られているブルームバーグのコミュニケーション端末は、1台の年間利用料は2万5000ドル(約270万円)だが、それに対してシンフォニーの有料プランは月額20ドル(約2200円)となる。そのため、「ブルームバーグキラー」という異名もあるほどだ。また、同サービスは、高い安全性も特徴となっている。エンドツーエンドの暗号化(End-to-End Encryption)という処理方式を採用し、暗号化キーはユーザーが所有するため、情報の安全性が重要視される金融業界において高く評価されているという。「プライバシーやセキュリティに関する機能が評価されているのはもちろんのこと、コミュニケーションツールとして、eメールよりも優れているという反響もある」と、グーレ氏は語る。

アプリ配信でマネタイズ

なお、今回の提携において、金銭的なやりとりは発生しない。そのため、日経としては「短期的な施策として、『シンフォニーマーケット(Symphony Market)』でアプリを販売することでマネタイズをしようと考えている」と、山田氏は語る。

シンフォニーマーケットの様子、赤枠内が提供されるアプリ群

シンフォニーマーケット(Symphony Market)とは、AppleにおけるApp Storeのようなもので、有料・無料を問わず、シンフォニーと連携するさまざまなアプリをダウンロードできる機能。現在、配信されているアプリは約30種で、各アプリの価格帯はさまざままだ。トムソン・ロイター(Thomson Reuters)やダウ・ジョーンズ(Dow Jones)といったパブリッシャーによるアプリだけでなく、分析ツールなど多岐に渡る。そこに、日経 DeepOceanが名を連ねるという。「中長期的には、シンフォニーを通して、弊社のネットワークを生かしたさまざまなコンテンツ販売や、営業の協力といった取り組みを実施していく予定」だと、山田氏語る。その一方で、グーレ氏は「距離感の違いはあるにせよ、問題を起こさない限り、日経以外の企業の参入ももちろんウエルカムだ」と、オープンなプラットフォームであることも強調した。ちなみに、日本経済新聞社が出資を行い、コンテンツも提供しているSanSan(サンサン)の名刺管理アプリ「Eight(エイト)」では、広告展開も行われている。それ以上に、優良な顧客を抱えるであろうシンフォニーでは、いまのところそのようなプランはないという。シンフォニーの日本語版のリリースは2018年。シンフォニー向けの日経 DeepOceanアプリも、その日本語版に併せてリリースされる予定だ。Written by 村上莞、長田真Photo by Shutterstock