その警告はもう何年も前から発せられていた。2015年にFacebookがGoogleを抜き、参照トラフィックソースのトップに立って以来、パブリッシャーはFacebookから自社サイトへの
トラフィックが減り続けるのを目の当たりにしてきた。Facebookはアルゴリズムに次々と改変を加え、パブリッシャーやブランドの投稿よりも、ユーザー投稿を優先してきた。

そして今年の1月11日、Facebookはついに爆弾を投下した。パブリッシャーにとって痛手になることを承知で、友達の投稿が優先的に表示されるようにニュースフィードに変更を加えると発表したのだ。Facebookは、有害コンテンツによるフィードの汚染やフェイクニュース、米大統領選へのロシアの介入疑惑に関する情報の拡散で非難の集中砲火を浴びており、存亡が危ぶまれるほどの危機に陥っている。

マーク・ザッカーバーグCEOも、一連の騒動の解決には少なくとも彼のレガシーがかかっていると話すいま、Facebookのこの動きは単なるアルゴリズム変更の追加ではなく、ニュース投稿を推進する姿勢の根本的な転換とみなすべきだろう。そもそもニュースは、一度として世界中のすべての個人同士を繋げるというFacebookのミッションの核心だったことはない。メディア企業を震え上がらせた今回の決定は、これまでのアルゴリズム変更とは異なる。

Facebookが「脆弱性を認めた」



あるパブリッシャーはFacebookを刺激したくないがために、匿名を条件に次のように語った。「大統領選を機に、さまざまなことが崩れはじめた。Facebookはニュースを扱うのに飽きているし、手間暇をかけて内部体制を整えるほどの価値はないと考えている」。

Facebookによるメディア支配は、終わりつつあるのかもしれない。ひとつのソーシャルネットワークが業界全体を牛耳り、Facebookという怪物に上手に餌を与える一部の新興パブリッシャーが厚遇され、その他大勢のパブリッシャーは次にどんな圧力が加えられるのかと怯え続けてきた。そんな様子を尻目に、Facebookはアルゴリズムに絶えず手を加え、優先度をクリックベイトから短尺動画、ライブ動画、長尺動画へと次々にシフトさせてきた。

ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)CEOのジャスティン・スミス氏は、ここ2年間、パブリッシャーが特定のプラットフォームに依存することに警鐘を鳴らしてきた。今回の動きの本質は、Facebookが「脆弱性を認めた」ことにあると、彼は考えている。これにより、短期的には多くのパブリッシャーが損失を被るだろうが、Facebookがメディア業界に占める役割が小さくなることは、長い目で見れば業界の健全化に繋がり、ロイヤルティ、ブランド強化、ビジネスモデルの安定に貢献するだろう。

「この動きは、デュオポリー(FacebookとGoogleの複占)に入った最初の亀裂だと考えることができる」と、スミス氏はいう。「長い目で見れば、この展開はすべてのメディアにとって喜ばしいことだ」。

トラフィック至上主義の行く末



もちろん、短期的には苦労するだろう。だが、みなが平等に痛みに耐える必要はない。そこには勝者と敗者が存在する。

「今回の変更を通じて、パブリッシャー各社はいつ変更されるかもわからないFacebookのアルゴリズムをベースにビジネスを構築することの難しさを実感するだろう」と、デビッド・シャバーン氏はいう。同氏は、地方紙からダウジョーンズ(Dow Jones)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)までが加入する新聞業界団体、ニュースメディア連合(News Media Alliance、旧:全米新聞協会)で、代表兼CEOを務める。

差別化のできていないバイラルコンテンツで、膨大なオーディエンスを集客することに特化したビジネスモデルを採用してきたパブリッシャーは、今回のニュースフィードのアルゴリズム変更でツケを払うことになる。オーディエンスのスケールはできるが、他社と差別化できるものが何もないパブリッシャーは山ほどいる。しかも、彼らはかき集めたオーディエンスから大して収益をあげていない。彼らの集めたオーディエンスは、カロリーだけで栄養のない食べ物のようなものであることがほとんどだ。

「トラフィック至上主義は急速に没落するだろう」と、コンプレックスネットワークス(Complex Networks)のCEO、リッチ・アントニエロ氏はいう。「そもそも3年で廃れるはずだったのが、さらに余命1年に縮まった」。

ある別のパブリッシャーのCEOを務める人物は、「Facebookの意向を聞き入れて、フィード上のリーチに最適化したパブリッシャーはどこも苦戦している」と語った。

重要度増すエンゲージメント



先見の明があるパブリッシャーは、ロイヤリティを高め、サブスクリションでの売上を伸ばせるようなコンテンツの作成に重心を移している。また、トラフィックソースの多様化を推進し、いまも参照トラフィックソースとしてGoogleに次いで第2位であるFacebookへの依存度を下げている。タイプの異なるパブリッシャーやコンテンツに対し、今回の変化がどのような影響をもたらすかはまだわからない。だが、多様化へのシフトが加速するのは間違いなさそうだ。ショックと落胆から立ち直ったパブリッシャーは、ニュースなきニュースフィードから自らを切り離すために、どんな戦術をとるべきか自問をはじめるだろう。

たとえば、多くのパブリッシャーがFacebookのグループ機能を利用し、数こそ少ないがエンゲージメントの強い読者との繋がりを深めている。

「業界全体で、オーディエンスを育てる別の方法を熟慮すべきときが来た」と、ボストングローブメディア(Boston Globe Media)でソーシャルメディア責任者を務めるマット・カロリアン氏はいう。「いま運用しているページをすべて維持することに意味はあるのか? Facebookページを10%改善するためだけに、時間を費やすべきではないと思う。それは成長戦略にはなりえない」。

他領域への投資が進む



ボストングローブメディアはこの日のために準備を進めてきた。Facebook上でのフォーカスを、メインページからグループなど、オーディエンスの数こそ少ないがエンゲージメントの極めて高い部分に移していると、彼はいう。

硬い内容の記事であれば、ニュースフィードの変更が実施されたとしてもトラフィックを集めることができるという考え方もできるが、そもそも多くのオーディエンスはコメントやシェアをしないため、どの道大きな打撃を受けるだろうと、多くの人々が予想する。だが、生活にどう影響するかという視点に立って制作すれば、シェアやコメントを促し、Facebookで見てもらうことは可能なはずだと、カロリアン氏は主張する。

「パブリッシャー各社は、今後リソースや投資対効果を考慮して、ほかの領域に投資するだろう」とブルームバーグメディアのスミス氏は語る。特に、直接的な接点の強化が最重要課題だと、彼は見ている。

今後数週間、オーディエンスの開拓に携わる部門に所属するメンバーたちは、トラフィックデータを注視して、Facebookのニュースフィード変更の影響が及んでいるか、どんな影響なのかを検討してから対策に乗り出すだろう。なかには、戦略を転換してでもFacebookが望むものを差し出して、Facebookに踊らされることを選ぶパブリッシャーも現れるに違いない。サイクル(Cycle)CEO、ジェイソン・スタイン氏は、「検証は長引く」と予想する。

もはや友好の意思はない



だが、多くのパブリッシャーのあいだには撤退ムードが漂っている。事実、Facebookにアップロードしたコンテンツから得ている売上に満足しているパブリッシャーはほとんどいない。今回の動きも、Facebookによるいつもの気まぐれな果たされざる約束のひとつに過ぎない。ころころと変わる動画戦略や、売上に繋がらないインスタント記事と同じということだ。多くのパブリッシャーに、もはや友好の意思はない。Facebookへの投稿は続けるだろうが、Facebookが大きな売上をもたらしてくれるのを待ち続けるのは、もううんざりなのだ。

「(パブリッシャーは)もしマーケティング戦略において、Facebookがまだ重要な要素のひとつなら、違う方向に進むことを検討すべきだ」と、業界団体のデジタルコンテントネクスト(Digital Content Next)でCEOを務める、ジェイソン・キント氏はいう。「試しにコストを精査して、妥当な支出なのかどうか一度検証してみるといい」。

また、Facebookはニュース業界を規制していながら、説明責任を果たしていないと、ニュースメディア連合のシャバーン氏はいう。「潮目は変わった。いまではパブリッシャーは、Facebookでのビジネスチャンスに以前よりずっと懐疑的だ」。

「今回の敗者はFacebook」



Facebookにとって今回の変更は、ニュースを赤ちゃんの写真やステータス変更に置き換えることがビジネス面で成功に繋がるのかどうかの試金石だ。予想では、ユーザーのエンゲージメントは劇的に高まることになっている。

「今回の敗者はFacebookだ」と、ブルームバーグメディアのスミス氏はいう。「高品質なニュースコンテンツをすべて取り去り、個人同士の繋がりの体験に置き換えたところで、エンゲージメントが強まるとは想像もできない」。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
Brian Morrissey contributed reporting