「共働き夫婦」の妻は、「給与明細を見せない夫」に大きな不満がある。どうすれば解決できるのか(写真:ABC/PIXTA)

男と女の間の「おカネの問題」は、ひとことではとても言い表せない、実に深いものがあります。ファイナンシャルプランナー(FP)と、夫婦問題カウンセラーの「二刀流」で仕事をしている私のところには会社勤めをしている女性の相談者が多いのですが、最近とても増えているのが、「共稼ぎ夫婦の生活費」に関してのものです。今回も、ぜひ読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

「夫が給与を教えてくれない」妻の不満

では「共働き夫婦の生活費」の問題とは具体的にはどんなことでしょうか。実は、「夫が給与を教えてくれない」という妻からの相談が後を絶たないのです。特に20代30代の「若いカップル」のうち、女性が相談に来ることが多いのですが、70代までほぼすべての年代にわたっています。その特徴は、主に2つです。

(1)「通常の共働き型」だが、男性の収入が多い夫婦

(2)夫が「会社経営者」または「重役」

特に(2)は「パワハラ型」で言語道断ですが、(1)(2)ともそもそも「好きだから一緒にいたい」という気持ちから結婚、共同生活が始まったはずなのです。しかし、残念ながら「愛」は「おカネの不満」には、かないません。「家計の分担」は、結婚前後のやりとりの中から、「家賃(住宅ローン)や光熱費は夫」「食費や雑費は妻」「外食費は夫が多いけど、臨機応変に」などと決まっていくことが多いようですね。でも、早ければ「結婚1年後」くらいから、主に妻の不満が高まっていきます。さらに子どもがいる夫婦だと、子どもが進学したり、習い事をしたりするタイミングでも揉めはじめ、深刻だと離婚原因のひとつとなっていきます。

夫は「俺は住宅費も含め、結構大きな金額を払っているんだ。家の中の細かいカネは妻のやりくりの問題だろ」。一方、妻は「最近は物価も上がっているし、細かいものが結構かかるのよ」。こんな言い争いで、大げんかとなってしまいます。

こうした言い争いは、夫が「自分の給与を教えない」「生活費がいくらかかるかをきちんと見ていない」ことから生じることが多いのですが、妻にも問題がないとは言えません。「何」が「いくら」なのかを「見える化」できないために、とても大きな不満や不安を呼ぶことが多いのです。こうなると、夫は妻に「やりくりできない、だらしない女」、妻は夫に「何もわかろうとしない、ケチな夫」というレッテルを貼りはじめてしまいます。

なぜこうした深刻な問題が生じるのでしょうか。この問題について、「まずは独身の人たち(離婚経験者も含む)に聞いてみよう」と、30〜40代の独身男女にインタビューをしたことがあります。

すると、聞かれた男性の大半は、「妻が『夫の稼ぎがわからない』と不満を言っている? だから俺は結婚したくないんだよ。なんで俺が稼いだおカネを嫁に教えるの? 俺の勝手じゃん。だって、家賃とか払ってるんでしょ、夫は。食費とか雑費は、たかが知れているよ」と言う人が大半でした。一方、女性は「奥さんは仕事をもっているうえに、ほとんどの場合家事の負担が重いんだから、かわいそうだし大変! そもそも男は理解しようと思わないんだよね」と同情しきり。女性の中にはこの問題で離婚した人もおり、同じ問題で悩んでいる友人や姉妹も多いようです。

「自分の母親」に相談すると、かえってこじれる場合も

前述のように、この「生活費問題」の相談は圧倒的に女性が多いのですが、FPに相談する人は多いとは言えず、通常は、まず女友達に相談。解決しないと今度は母親に相談するのですが、それでもうまくいかないようです。特に、母親のアドバイスが、かえって問題を複雑にさせてしまうケースが多いようです。悩んでいる女性からすれば、自分が育った家庭は
以下の2つに分かれます。

(1)父親は母親にしっかり生活費を渡し、母親はその範囲で暮らしていた

(2)父親が母親に金銭的に苦労をさせてきたので自分はそうなりたくない

(1)の場合、母親は「ケチな男は出世しないわよ。男が家庭のおカネを出すのが当たり前でしょう!」と同情してくれると思いきや、あまり母親に愚痴を言いすぎると今度は「仕事を辞めなさい」と言われることもあるそうで、いつしか相談しなくなってしまうのです。

一方、(2)の場合は「お母さんは、それで苦労したのよ。もっとガンガンに言わないとわかってもらえないわ!」というアドバイスをしがちです。これを鵜呑みにしてしまい、夫に本当に直接ガンガン言って、夫婦関係が悪化。時にはひどいことに、夫に浮気に走られるケースさえあります。

もし「本当に解決をしたい」と思って、FPではなく親戚筋に相談をするなら、むしろ「夫のご両親」に相談したほうが、解決につながると思います。ただしこの場合は、夫の両親の性格にもよりますし、文句を言われる覚悟で臨んでください。

一方、もし夫婦げんかになった場合でも、夫はいちいち親には相談しない人が大半です。そもそも子どもの前でおカネの話をする両親も少ないと思いますが、息子としての夫の両親ということになれば、母は専業主婦という家庭が多くなります。息子として母親を見ると、細々とした家庭のことは母がやるのは当たり前だと思っている男性が圧倒的です。そうした夫から「うちの母親は家事や料理は完璧だった。そのくらいできるなら、少しは住宅費以外も負担してもいいけど」と筋違いのことを言われ、悔しい思いをしている女性の相談者も少なくありません。

いずれにしても、すでに親の時代とはあきらかにライフスタイルが違っています。昔と比較すると、かえって問題をこじらせてしまいかねないのです。では、今の時代に合わせた、「より良い夫婦関係」を築くにはどうすればいいでしょうか。

「給与明細」を公開しただけでは、解決できない

今や、共働きは当たり前です。「人生100年時代」とも言われるなか、夫婦関係もそれにあわせて「大改革」をしないといけません。それには、やっぱり『夫婦の対話』が必要です。読者の方も「そんなの当たり前だろ」と言うかもしれません。しかし、現実はそう簡単ではありません。

女性からの相談を受けて、相談者の夫に話を伺うことも多いのですが、ほとんどの場合、双方とも「言ってもわからない」「話しても理解しない」という意見です。これではどこまでも平行線です。妻が夫の給与がわからない不満の根元は、「将来が不安」という意見が圧倒的に多いのですが、では夫が「給与明細」を見せれば、そうした妻の不安は消えるでしょうか。もちろん、答えはノーです。

揉める夫婦は「話し合い」を嫌う傾向があるようです。特に女性は「どうせ無理」と実践する前に否定する人が多いのですが、「一定の戦略を持って挑戦した方々」は、あきらかに夫婦関係が改善しています。

具体的にはどうすればいいでしょうか。まずは「どろどろになりがちな話し合い」をするのではなく「ミーティングをするんだ」というように、意識を変えてみてはどうでしょうか。夫も妻も会社で勤めているわけですし、建設的に物事を進めるプロセスはそれなりに知っているはずです。感情的な表現を避け、視点を変える覚悟があればできるはずです。

たとえば、その日1回のミーティングで問題を解決できなかった場合はどうすればいいでしょう。どちらかの意見がより正しいのかなどと解決を急ぐよりは、感情のしこりが残らないように「この件は保留。また来週、もう1回ミーティングしましょう」などとすればいいのです。

4つの具体策で「数値化」「見える化」して問題を解決

「会社組織じゃないんだから、なんかぎこちなさすぎる」という人もいるかもしれません。確かに、そうした意見は理解できます。しかし、問題の解決策としては、ミーティングがよりよい解決手段です。その際は『問題を数値化』して、それを解決するための『企画案』を一緒に考えるのです。具体的には、以下の4つが有効です。

(1)家計簿をつけてみる

(2)互いに1日のタイムスケジュールを出してみる

(3)家事負担のリスト化をしてみる

(4)上記を分析して、問題と改善案を提示する

(1)ですが、「食費・雑費」が多いのに「夫がわかってくれない」と歎く女性の多くは、家計簿をつけていません。理由は「忙しくてそんな時間はない」というのが大半。気持ちはよくわかります。しかし、最近は便利な家計簿アプリも多くありますから、それほど時間もかけずに取り組めるはずです。最初は面倒臭いかもしれませんが、余計なけんかをして悩む時間を考えたら、楽なものです。そのうえで、どのくらい「食費・雑費」が必要なのかを提示してみてください。

(2)(3)は「家事の配分」についての見える化です。1日にどれくらいの家事負担があるのか、タイムテーブルなどを使って色づけしてみるとさらにわかりやすいですね。次に「リスト化」して、2人の家事分担を見える化します。

そのうえで(4)に進みます。「妻として」改善してほしいことをまとめた「改善案」を添えて、夫に渡すのです。何も「口で言うとけんかになるから」ではなく、数字で冷静にみてもらうためのものです。もちろん、言うべきことはきちんと言っていいのですが、言い方は絶対に気をつけましょう。

あとは、こうした一連のミーティングを繰り返していくことです。互いに相手の主張を頭から否定せず理解する努力をしつつ、一方で交渉をする努力も必要です。この「夫婦関係の改善のためのプロセス」は歴史を変える大技です。「ほかの国なら当たり前」などの批判もあるかもしれません。しかし、もとは好きで一緒になった夫婦です。老後に孤独ほど厳しいものはありません。互いの時間を尊重し、夫婦関係を上手にやりくりして、新しい夫婦関係を構築してほしいものです。