不倫ネタがこれだけ騒がれるのは、多くの人の心を揺さぶる要素があるからです(写真:1001nights/iStock)

2月18日発売の『週刊文春』で報じられた小室哲哉さんの不倫疑惑がいまだ物議を醸しています。小室さんは19日に謝罪会見を開き、報じられた不倫関係を明確に否定しながらも引退を表明。すると、タレント、アーティスト、アスリートからさまざまな声が飛び交い、ネットでは『週刊文春』へのバッシングがはじまりました。

21日に「サンデー・ジャポン」(TBS系)で『週刊文春』サイドの「本意ではない結果になった」というコメントが放送されると、批判はさらに過熱。一昨年は正義の味方扱いされていた同誌は、一転して、まるで悪の象徴とでも言わんばかりの扱いとされました。これまでさんざん不倫騒動を起こした芸能人を批判してきた人々が、一転して週刊誌サイドを叩くという矛盾が起きているのです。

しかし、芸能人の不倫を報じているのは『週刊文春』だけではありません。『FRIDAY』『FLASH』『女性自身』『週刊女性』『女性セブン』『週刊新潮』などの週刊誌は、繰り返し芸能人の不倫を報じてきました。

各誌が今回の『週刊文春』バッシングを受けて今後、不倫をどのように扱っていくのか興味深いところですが、ここではもう一歩掘り下げて、なぜメディアをはじめ不倫をネタにするビジネスが多いのか? その理由を企業と世間の人々、それぞれの観点から考えていきます。

マンガ、ドラマも不倫ものが増えている

なぜ週刊誌は不倫報道を繰り返すのか? その答えは、お察しの通り「売れるから」に他なりません。そこには「悪を叩く」という正義感はなく、営業的な利益重視です。

これは出版社が営利企業である以上当然のことですが、問題は当事者が犯した罪と、報道で与えられる罰のバランスが悪くなっていること。さらに、不意打ちの自宅直撃や無断動画撮影など、「週刊誌の低モラルな取材姿勢を世間の人々が受け入れてしまった」ことが報道をヒートアップさせていきました。

「売れるから」という理由で不倫をビジネス化するメディアは週刊誌だけではありません。マンガ雑誌やマンガアプリには不倫をテーマにした作品も多く、しかも「社内不倫」「人妻実録」などの身近な題材を扱うものが中心となっています。

同様にテレビでも多くの不倫ドラマが制作されています。昨年だけでも、「奪い愛、冬」(テレビ朝日系)、「あなたのことはそれほど」(TBS系)、「パパ活」(フジテレビ系)、「フリンジマン〜愛人の作り方教えます」(テレビ東京系)など、不倫がメインテーマの作品が放送され、それ以外でも「奥様は、取り扱い注意」(日本テレビ系)のように不倫のシーンを描くケースが増えています。

つまり、「マンガもドラマも、『純愛より不倫を描いたほうが売れる』というマーケティングのもとに制作されている」ということ。これは裏を返せば、「世間の人々に向けたサービスとしてやっている」ということでもあり、消費者サイドにも一定の責任はあるでしょう。

ただ、見逃せないのは、かつて不倫は「非日常的なもの」であり、ファンタジーとして制作されてきましたが、近年は「日常的なもの」であり、リアリティー重視で制作されているという事実。「世間の人々にとって不倫が身近なものになった分、これまで以上に反応してしまう」という面は間違いなくあるでしょう。

感情を揺さぶる不倫ネタ

話をいったんメディアからそらすと、古くから成人向けビデオや風俗店では、不倫をテーマにした商品制作やサービスが行われてきました。それらを利用する人々は、「不倫はファンタジー」という認識があり、理性を持って利用していましたが、近年ではトラブルも少なくありません。

実際、私が取材時に聞いただけでも、「おカネに困って人妻もののビデオに出演したら、関係者にしつこく迫られ、ストーカー被害に遭った」(31歳、未婚)、「店の外で待ち伏せされて脅され、不倫関係を強要された」(34歳、既婚)などの被害に遭った女性がいました。

もちろん、これは一部の人に過ぎないのでしょうが、多くの企業が不倫をファンタジーではなく、リアル風のものとしてリリースすることで、理性を失ってしまう人がいるのです。

その一例が、「芸能人の不倫報道に飛びつき、批判の声をあげてきた」人であり、「今回急に週刊誌をバッシングしはじめた」人。各メディアのリアル風な不倫を見たことで、秘密が暴かれたことへの興奮、正義感を盾にした嫌悪、潜在的な願望、どこか拭えない嫉妬……さまざまな感情が揺さぶられているのです。

不倫というネタに各企業が依存し、リアリティーを醸し出すことで、人々の感情を揺さぶり……。このような世間の人々を誘導するようなビジネススタイルが、必要以上の批判を生み出しているのではないでしょうか。

すでにいくつかのメディアで伝えられているように、不倫は民法における不法行為に該当するものの、刑法上の犯罪ではありません。警察や国が刑罰を与えるものではなく、「夫婦と不倫相手などの当事者間で解決すべきもの」に過ぎず、損害賠償が求められ、慰謝料を支払うことはあっても、逮捕されて懲役や罰金が科せられることはないのです。

先述した不倫マンガや不倫ドラマは作品が最終回を迎えればおしまい。しかし、週刊誌で報道された実在する人間は、当事者ではない多くの人々から攻撃され、ビジネスどころか日常生活すらままならなくなってしまいます。

ほう助するのも、罰を与えるのもNG

実際、私がよく知る芸能人は、不倫疑惑を報道され、「僕は少なくとも半年間は出歩けなかったし、家族も近所のスーパーやコンビニで買い物すらできなかった」と言っていました。ちなみに、彼は「不倫というより、一度の浮気だった。家族に申し訳ない」と弁明していますが、もしこれが真実なら、やはり罰は重すぎる気がします。

本来、エンターテインメントも同様に、当事者間だけのものにすぎません。今回の例で言えば、世間の人々が作り出した重いムードが、「小室さんの楽曲を聴きたい人だけ聴けばいい」という当事者間の自然な関係性を崩したのです。それを感じ取った小室さんは謝罪や引退を決意したのではないでしょうか。

私は人間関係のコンサルタントもしていて、全国の人々からさまざまな問い合わせが届くのですが、不倫に関わる相談も少なくありません。「不倫相手と妻(夫)を何とか離婚させたい」「既婚ですが、好きな人ができて交際したい」など相談内容はそれぞれですが、「不法行為のほう助になってしまう(私も損害賠償の対象になる)」という理由ですべて断っています。

もし不倫が犯罪であれば、私は警察に通報しているでしょう。私だけでなく当事者以外の人にとっては、「ほう助をしてはいけないし、罰を与えるべきではない」ものに過ぎないのです。

話を週刊誌に戻すと、私自身、各誌と仕事をすることもあり、編集部員や記者の知人もいますが、「本が売れないことには給料がもらえず、生活ができない」というのが本音。もっと言えば、それ以前に「売れなければ怒られる。仕事をもらえない」という切迫した不安や、「不倫スクープで成績を上げて稼ぎたい」という強い欲望を抱いています。

また、不倫報道で売り上げが伸び、反響が大きければ、編集部は「引くに引けない」モードへ突入。私が取材した限り、前述したほとんどの週刊誌で「次も不倫を狙わなければいけない」「不倫を優先的に狙う」という状況が起きていたのです。

事実、知人の週刊誌記者は「昨年、不倫スクープを取った人が忘年会でヒーロー扱いされ、表彰されていた」と話していました。ただ、これもあくまで消費者サイドのニーズがあるから、編集部内でヒーロー扱いされてしまったのです。

ベッキーさんと川谷絵音さんの騒動以来、週刊誌だけでなく、世間全体で芸能人の不倫を叩き続けてきました。ただ、昨年中盤あたりから、「もういいのでは」というムードが少しずつ漂いはじめ、今回の騒動で「もうやめろ」という週刊誌サイドへの批判が顕在化。「もはや行きつくところまでたどり着いた」とも言えますが、だからといって世間の人々が「芸能人の不倫に興味がないか」と言えば、決してそうではないでしょう。

芸能人以外の不倫も口にしないのが得策

しかし本来、芸能人の不倫は、町内や社内の噂話と同レベルのはず。「一度も会ったことがない」という意味では町内や社内以上に縁遠い存在なのですから、立場のあるビジネスパーソンなら、こうした噂話レベルにすぎない他人の不倫に関してはコメントしないほうがいいでしょう。少なくともSNSでのコメントはリスクマネジメントの観点から避けるべきです。

最後に、小室さんは報道をきっかけに引退表明しましたが、会見を見る限り、その理由は不倫騒動だけではないのでしょう。体調不良、介護疲れ、売り上げや品質などへのプレッシャーなど、さまざまな理由を想像させるフレーズがあっただけに、今ごろホッとしているのかもしれません。

もし今後、小室さんが音楽人として再び表舞台に顔を出したくなったとき、「私たちはメディアに踊らされて騒動を蒸し返すのではなく、温かく迎えられる世間の人々でいられたら。そんな世の中であってほしい」と心から願っています。

そのためには、週刊誌だけでなく、マンガやドラマをはじめ、「不倫をめぐるビジネスが、世間の人々をいたずらに刺激しないものであってほしい」と思うのです。