小室哲哉さんが引退してしまいました。引退会見の直後は、各テレビ局が取り上げ、筆者の知人からは「職場に並んでる全部のテレビから、globeの曲が流れていて泣けてくる」「引退することないのに……」というLINEが複数届きました。

芸能人の不倫なんてどうでもいいし、不倫自体が当事者同士の問題で、他人がどうこうジャッジするものではありません。

こういうときにベッキーさんばっかり持ち出すのも申し訳ないですが、彼女のときですら私たちは、不倫を非難していたというよりも、嘘で煙に巻こうとされたことにイラッときただけです。その部分で、「当事者感」があったのです。

今回の件についても、「小室哲哉の不倫疑惑が週刊誌でスクープされるらしい」というニュースが流れ、事務所がコメントを出し……という時点では、周囲でも「最近、小室さんテレビによくでるようになったし、だから狙われたんだろうなぁ」くらいにしか思っていない人が多かったようです。

そして、編集部界隈で「小室さんが記者会見を開くらしいよ」と話題になっていたときも、これまでの男性芸能人の不倫疑惑釈明会見と同じようなやりとりが行なわれるのだろう程度にしか考えていませんでした。「私たちには関係ない話」だと。

しかし、実際には、まさかの「けじめとお詫び」で引退。ショック……。

いきなり、当事者感がむくむくとわき起こります。なぜなら小室哲哉さんの引退は、小室哲哉の音楽が好きな人にとって、「自分の好きなものの喪失」になるからです。

「けじめ」もよくわかりませんが、「お詫び」はもっと謎です。小室さんが仕事をやめることが、誰のお詫びになるんでしょう。

たぶん、これ、私たちなんだと思います。

ベッキーさんから、いろんな芸能人が不倫するたびに、その釈明会見をするたびに、許すとか許さないとか反省してないとかもうテレビ出るなとか。SNSで騒ぎ立てる私たちへ、小室さんが選んだ「お詫び」が引退だったんじゃないかと思うと、さらに当事者感がのしかかります。ごめんなさい、追いつめて……という気持ちです。

また、会見では不倫関係は否定したものの、その女性に心の支えになってもらっていることに後ろめたさを感じていたこと、そして不倫疑惑を週刊誌に報じられたことを「戒め」と感じたというようなことを言っていました。

介護って大変だもの……心の支えもほしくなるよね

「戒め」という罪悪感は、どんなに介護で疲れたからといって他人に頼ってはいけないんだと世間が、そして小室さん自身が思っているから生まれる言葉です。

会見で「(介護に)ちょっと疲れ果ててしまった」と小室さんが吐露していたことについて、安藤優子さんは、「介護を言い訳にするのはちょっとね」というようなコメントをしていたし、東国原英夫氏は「介護を理由にしたのは謹んでもらいたい」とキッパリ。「世の中には700万人、800万人と介護に携わっている人がいるので」と発言していました。実際、小室哲哉さんの引退会見直後には、こっちの意見のほうが断然多く、筆者はちょっと背筋が寒くなりました。「介護はみんな大変なんだから、甘えるな、不倫するなんてもってのほか」というのは、世の中の介護に携わっている全ての人たちへの牽制に感じたからです。

人格が変わってしまったり、コミュニケーションがうまく取れなくなったりした人の介護って、すごく大変です。その相手がパートナーであれば、親兄弟とはまた違う、特別な辛さもあると想像するのは容易です。真相は薮の中ですし、そもそも小室さんが誰とつきあっていようが私には関係ないのですが、小室さんが言っていた「わかってくれる人に話を聞いてもらっていると癒された」というのは、介護をしたことがある人ならもらい泣きしかねないシーンです。そこを、「何はともあれ不倫はダメ」で話を閉じるのはどうなんだろうと思ってしまいます。

しかも看護師の人には、一般人にはない医療や症状の知見があるわけです。自分も体調が悪い、納得いく仕事もできないという状況で、頼りにしたいという気持ちになるのは当然じゃないかと思うんです。そんな中、「疲れ果ててしまった」というだけで、ギャンギャン非難されるんだったらもう、ぜんぶやめちゃって、介護だけすればいいんでしょう、それが一番なんでしょう、ってなっちゃうんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

これって、介護離職を選ぶ人の思考の典型です。でも、介護離職は不幸の要因になることが少なくありません。小室さんも「今後の生活とか、お金のことはどうなるかわからないけど、とにかく今はこうするしかないと思って決めた」というようなことを言っていましたが、介護に行き詰まって思考が止まると、介護離職するしかないと思ってしまうんです。なんとかなると。でも、介護のために仕事をやめたらダメなんです。なんとかならないことのほうが多いから。

小室さんは59歳。一般人なら定年直前ですし、ご本人も60歳での引退を考えていたとか。それが1年早まっただけじゃないかとも言えます。でも、「介護するのは当然だし、ちゃんと介護できないんだったら仕事やめたら?」という世間の風潮が背中を押したのだとしたら、これは罪だと思います。会見で小室さんは、今回の幕引きについて「文春さんが起爆剤になっていただいた」というようなことを言っていました。「いただいた」って……。完全に心が折れているように感じてしまいます。

「不倫なんてどうでもいい。引退が残念でしかない。またひとつ青春が終わってしまった」「介護人生は明日は我が身。パートナーが高次脳機能障害になったらどうしよう」。その2では小室ファミリーが大好きだったアラフォーオーバーの方々に、今回の騒動で感じたことを聞きました。〜その2〜に続きます。

「介護を不倫の言い訳にしてる」って非難の声もあるけれど……。それって誰にも頼っちゃダメっていうようにも聞こえて、もやもや。