【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】国際実績はピカ1。8年ぶりのJリーグでフル稼働できれば悲願のロシアの道も開ける・内田篤人

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「体が動けるうちには戻ってきたいと思っていたんで、嬉しいです」

▽1月10日の鹿島アントラーズ新体制発表会見。8年ぶりに古巣復帰を果たした内田篤人は爽やかな笑みをのぞかせた。本人が「文化と歴史が違う」と繰り返し口にしたサッカー大国・ドイツから日本に復帰することは、どうしてもネガティブな見方をされることが多い。しかし彼自身は「僕は海外でやりたくて仕方ないってタイプの選手じゃない。何となく流れで出て、契約延長を何回かしてたら長くなっちゃった感じ」と実にアッサリしたもの。原点に戻ってサッカーできる喜びが今は何よりも大きいのだろう。

▽日本代表として2010年南アフリカ、2014年ブラジルの両ワールドカップに参戦し、シャルケでもUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)ベスト4を経験するなど、この男の卓越した国際経験値は誰もが認めるところだ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が右ヒザ負傷を抱えた状態の内田を2015年3月のチュニジア(大分)・ウズベキスタン(東京)2連戦でわざわざピッチに立たせ、2016年5月の欧州組合宿にも招集したことからも、期待値の高さが色濃く伺える。「協会とか代表スタッフの人がつねに連絡を入れてくれてましたし、ヒザの状態、試合復帰が近づいてきたといった手術からの経過は全て知ってくれている」と本人も話していたが、指揮官にとって内田は特別な存在なのかもしれない。

▽そこまで思い入れのある選手でも、以前のように国際舞台でタフなバトルを繰り広げることができる状態にならなければ、再招集には踏み切れない。実際、内田は2015年3月のホッフェンハイム戦以来、ほとんど公式戦に出ていない状態だ。シャルケ時代は2016年12月のUEFAヨーロッパリーグ(EL)・ザルツブルク戦で約10分間ピッチに立ったが、そこから2017年8月にチームを離れるまで出番は訪れなかった。出場機会を求めて赴いたウニオン・ベルリンでも9月に2試合に出ただけ。10月以降は左太もも肉離れを起こして長期離脱を強いられた。

「ちゃんと練習を取材に来てる人は分かってると思いますけど、練習からガツガツやってますし、まあやれます」と彼は11〜12月にかけてピッチに立てなかった要因がコンディションの問題ではなかったことを示唆した。現に鹿島に戻ってからの宮崎キャンプもフルにこなしていて、体自体は動けている様子ではある。が、やはり気になるのは、インテンシティの高いプレーをコンスタントに見せられるかどうか。それは2月にアジアチャンピオンズリーグ(ACL)とJリーグが始まってみないことには何とも言えない。ハリルホジッチ監督も自分の目で確かめるまでは代表再招集には踏み切れないはずだ。

▽しかも、今季の鹿島には西大伍、伊東幸敏、東京ヴェルディから新たに加わった安西幸輝もいて、右サイドバックを巡るポジション争いはし烈だ。昨年末に負傷で手術に踏み切った西は開幕に間に合わないものの、伊東は昨季も計算できる戦力として大岩剛監督から信頼を寄せられていた。安西もJ2時代はフル稼働していて、勢いと伸びしろは大いにある。3年間公式戦から離れていた内田が絶対的な地位を得られる保証はないのだ。

「ポジション争いはプロになった瞬間から始まってますし、シャルケでもそれを繰り返して試合に出てきた。今さら何とも思わない」と本人も少なからず自信をのぞかせたが、やはりケガのリスクは不安視される部分。そういう周囲の懸念やネガティブな目線を払拭するようなパフォーマンスを見せてくれるなら、内田を代表に呼び戻すことに何ら支障はない。

▽むしろ、彼がいた方がチームとしての経験値は上がる。昨年末の東アジアカップ(E-1選手権)の日韓戦(東京・味の素)のような困難な局面にぶち当たった時でも、内田なら冷静な対処をしてくれるはず。そういう安心感をもたらせる選手は今のハリルジャパンには少ない。彼の価値は大きいのだ。

▽右サイドバックの陣容を考えても、酒井宏樹(マルセイユ)のここ1〜2年の成長ぶりは間違いないが、両サイドのバックアップ要因である酒井高徳(HSV)が所属クラブでボランチ起用されるなどやや不安定な状況にいる。内田が戻ってきて宏樹との2枚体制になり、高徳は左で長友と併用できるような状態に戻れば、選手層は確実に厚くなる。右サイドバック専門の選手を2枚入れること、ブラジル大会と同じサイドバックの陣容で行くことの是非はもちろんあるだろうが、内田がいることで宏樹や高徳、長友にとって心強い部分は少なくない。そこは前向きに評価すべきだ。

▽内田が半年後の2018年ロシアワールドカップメンバーに滑り込むためには、2月からトップの状態を維持し、3月の欧州遠征に名乗りを上げること。それが必要不可欠だ。仮に3月遠征に選ばれなければ、ロシア行きの確率は大きく下がる。それを本人も強く認識し、これまで3年間蓄えてきた力と気持ちをこの1〜2か月間に凝縮させていくことが肝要だ。内田篤人の今後の動向が日本代表のロシアでの成否を大きく左右すると言っても過言ではない。【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。