強靭な日本をつくるためにも小水力発電が必要だ(写真 : 笑と向日葵 / PIXTA)

本格的な人口減少時代を迎えるなか、消滅の危機に瀕している山村は多い。この解決策について、このたび『小水力発電が地域を救う』を上梓した中島大氏が提言する。

私は長年、全国各地の再生可能エネルギーのサポート、コンサルティングを行ってきました。


その経験を通し、再生可能エネルギーの中でもとくに「小水力発電」が、山村(山間地)を救う起爆剤になると考えております。

皆さんもご存じのように、日本の山村の多くは消失の危機にありますが、地域で小水力発電事業を起こせば、自前の安定収入を得て経済循環を生みだすことができます。

『小水力発電が地域を救う』でも紹介した岐阜県石徹白(いとしろ)地区のように、若者のIターン移住を呼び込み、地域の小学校を廃校の危機から救うことも不可能ではないのです。

小水力発電とはどのようなものか


砂防ダムを利用した小水力発電所。左側の建屋内に発電機が設置されており、パイプで導水されている。山梨県南アルプス市「金山沢川水力発電所」(撮影:中島大)

小水力発電といっても、皆様にはイメージがつかみにくいかもしれませんので、少しご説明しましょう。

水力発電というと、黒部ダムのような大型ダムで貯水池に水を貯め、巨大導水菅から落とした水で大型タービンを回し発電する大がかりな構造を思い浮かべるかもしれません。

でも、小水力発電で一般的なのは、川をせき止めて水を貯め、パイプ菅で水を下部に落としてタービンを回して発電するものです。その後、水は元の川の下流部に戻します。

地域で取り組む規模の小水力発電は、出力1000kW以下程度が想定されます。タービンなど発電施設も、ちょっとした小屋程度の大きさの建屋におさまります。

小水力発電の形式としては、河川に発電用の新たな取水堰を構築するほか、農業用水路や棚田などを利用したり、既存の砂防ダムを活かすこともできます。地域特性や経済性にあわせた方法を考えれば良いのです。

小水力発電は、全国の数千カ所で事業化の可能性があります。しかも今は、FIT(固定価格買取制度)がありますから安定的な売電収入が見込めます。

前述のように小水力発電は出力1000kW以下の規模ですが、全国で合計すれば毎年1500億円以上の売電収入が見込めると試算しています。

これは、日本全体の電力消費量からすれば微々たるものにすぎません。でも、これだけの電力があれば、小水力発電を行っている足元の山間地の需要は満たすことができます。山間地は電力の面で自立できるわけで、地域にとっては十分に大きな電力だといえるのです。

小水力発電事業を進めるにあたって、技術や資金面で外部から協力を受けることも必要になりますが、地域活性化のためにはいかに地元が主導権を握るかが重要であり、地元を含めた主体形成がカギとなります。

先述の石徹白地区では、発電事業のために住民が農業協同組合を結成しましたが、それ以外にも、地元土建会社が小水力発電事業を立ちあげる例や、村が事業主体となる例、土地改良区が農業用水を使った例、リタイア移住した事業家がリーダーとなっている例……などさまざまなケースがあります。

山村の土建会社は、地元インフラ維持のためにも欠かせない存在なのですが、厳しい事業環境下にあります。今後生き残りを図るためにも、小水力発電事業で安定した収益源を得ることが効果的な経営戦略となります。そもそも、発電所の建設工事や災害を受けたときの復旧工事など、小水力発電では地場の土建会社の出番が多いのです。

また土地改良区では、農家の高齢化と農家数減少により、年々維持管理費負担が重くなってきています。小水力発電事業で収入を得ることができれば、この負担を軽減し、地域農業の持続性を高めることができます。

いずれにしても地元主導で進め、利益を地元還元できることが重要であると私は考えております。このことが、山村など地域を維持することにつながります。

山村を維持することが日本を強くする

人口減少時代のなか、山村は維持できなくても仕方ないのではないかといった意見もあるようです。

でも私は、山村を失うことは日本全体にとって取り返しのつかない大きな損失であると考えています。よくいわれる山林保全機能のほか、山村には都会にはない「人を育てる」という機能があります。見過ごされがちですが、「山村の知恵」といったものがこれからの日本にとってかけがえのない宝になります。

単に農山村にとどまらず、強靭な日本をつくるためにも小水力発電が必要だと思うのです。

小水力発電導入の可能性のある地域の人々、地方創生の関係者、自治体関係者、参入を考えている企業の方はぜひ一度真剣に導入の可能性を考えていただきたいものです。

また、温暖化対策の面で日本は世界に遅れを取りつつあるようですが、温暖化対策・エネルギー問題の面からも、古くて新しい再生可能エネルギーである小水力発電のポテンシャルに目を向けていただきたいと思っております。