「年収1000万円以上」の条件で転職できる人には、大きく分けて3つの特徴がある(写真:freeangle / PIXTA)

2016年の民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者4,869万人のうち、年収1000万円超の割合は、4.2%と少数派だ。しかし、リクルートキャリアが提供する転職支援サービス「リクルートエージェント」では、2009年以降、「年収1000万円以上」で転職を果たす人たちが増えている。

「変革」できる人材なら、異業種でも歓迎


それはどういった人たちなのか。また、なぜ企業は年収1000万円以上提示して、その人材を採用したいと思うのか。背景を探っていきたい。

年収1000万円以上で転職を実現している人を分析していくと、共通のキーワードが3つ出てくる。それは、「変革」「グローバル」、そして「組織バランス」だ。

第1に、「変革」というキーワードだが、業界を問わず、年収1000万円以上で人材を採用したい企業の多くは、何らかの変革期を迎えている。たとえば、既存事業を立て直す、第二創業期の成長をけん引する、新規事業を推進する……。そうした変革を担える人材に期待を寄せている。


国内マーケットの縮小、新たなテクノロジーやビジネスモデルの台頭などを背景に、既存事業だけでは成長が見込めないと考える企業では、新規事業として、異分野への進出を狙っており、新規事業をイチからつくれる人材や、経営改革を推進できる人材が求められている。そうした人を経営企画のポジションで採用するケースが増えている。

たとえば、コンサルティングファームで新規事業の立ち上げ・推進、経営改革などの助言を行ってきた人材が、大手金融機関に転職を果たしたケースがあった。その背景には「フィンテック」があり、既存のビジネスモデルは崩れ、大きく変化する事業環境に継続的に対応していく必要に迫られていた。そこで大手金融機関は、外部機関に委託していた新規事業の立ち上げ・推進、経営改革などの役割を内製化することで、迅速に対応しようと考えたわけだ。もちろん内製化によるトータルコストの削減も見込んでいる。

金融機関に限らず、あらゆる業界がこうした変化への対応に迫られており、それが業界の垣根を超えた人材の流動化を加速させているのだ。

製造業でも、デジタル化によるビジネス変革という「デジタルトランスフォーメーション」により、ITに知見がある人材が求められている。まず、デジタル化によるビジネスモデルの変化が訪れたのが電機メーカーで、その後、自動車メーカーや化学メーカー、素材メーカーなどに転職する事例も増えてきている。スキルを活かして、「企業の変革にチャレンジして、より社会に貢献できる仕事をしたい」という人は、異業種への転職の可能性を探ってみてもいいかもしれない。

内製化を目的とした採用が行われる一方で、当然、スピード重視で変革を行う企業もある。

「グローバルビジネス」を切り開く人材を渇望

自社での採用・育成はどうしても時間がかかるため、早期に変化に対応したい企業は、コンサルティングファームを利用するケースが増加している。企業の経営幹部から「今の変化は早い。費用をかけて解決できるなら、どんどん使えと指示している」という話を耳にする。こういった背景もあり、コンサルティングファームへの依頼が増えており、それにともなって、コンサルティングファーム企業では、そうした改革を提案できる人材を求めている。

また、変革を進めるうえで、経営課題の解決には必ずITが絡むことから、IT人材の採用を強化する企業も増えている。採用ターゲットはIT業界でITに関する知見・スキルを積んできた人たち。SIer(システムインテグレーター)といった、会社でSE(システムエンジニア)として働いていた人が、「経営課題に対して“芯を食った” 本質的なソリューション提案ができる」という点にやりがいを感じ、転職に踏み切る人が数多く見られ、年収1000万円以上での転職事例も相当な数にのぼる。

第2に「グローバル」のキャリアがあるかどうかもキーワードだ。グローバルでビジネスに携わってきた人は、年収1000万円以上での転職チャンスが豊富にある。中国、インド、東南アジアといった新興国での事業拡大を進める企業が、海外事業を推進できる人材の獲得に意欲的だ。

海外拠点の立ち上げや現地法人のマネジメントなどに携わってきた人たちは、日本に帰国すると裁量権が限定され、物足りなさを感じるケースが散見される。そうした人材が、裁量を与えられて、経営や事業に貢献していきたいと、転職活動を始め、現職以上のポジションで迎えられるケースがある。実際、電機メーカーで、欧州や米国で約10年間に渡り海外事業を推進してきた40代の担当部長が、異業種の売上高1兆円規模の製造業の統括部長として採用され、年収が400万円もアップする事例があった。

そして第3に「組織バランス」。だがその前に、年収1000万円以上での転職を果たす人の年齢に、注目しておきたい。

2013年のころは、40代前半(29.9%)→40代後半(26.2%)→50代(22.4%)→30代後半(14.0%)→30代前半(5.6%)の順で、多かった。が、ここ最近は少し傾向が変わっており、2017年度は多い順に、40代前半(32.4%)→30代後半(28.1%)→40代後半(15.1%)→50代(12.2%)→30代前半(10.8%)と、30代後半の割合が増えている。


今の30代後半の世代は、就職氷河期に就職活動した世代で、当時、多くの企業が新卒採用を控えた。そのために組織構成上、この世代の人材がどこも不足している現状がある。30代後半は経営層と若手社員をつなぐ、組織運営の屋台骨となる人材。企業側は、そうした役割を担える経験を積んだ30代後半の社員を、好待遇で採用したいと考えているケースも少なくない。

求職者側の状況に目を移すと、上にはバブル期の大量採用世代や団塊ジュニア世代がいて、ポストに空きがない状況。ただ、今勤めている会社では主任やリーダーのクラスだったとしても、リーダーシップとオーナーシップ(自主性)を発揮して事業に貢献してきた実績や海外事業を推進した経験があれば、社外に目を向けることで現職以上のポジションで迎えられる可能性は十分にある。

実際に大手電機メーカーに勤めていた主任クラスの社員は、転職活動をした結果、大手素材メーカーに課長として迎えられ、年収も900万円から1000万円にアップした事例もあった。

職務履歴書には「自分は何ができるか」を明示

最後に、経験・スキルを適正に評価してもらい、年収1000万円の待遇で転職を果たすためのポイントをアドバイスしておこう。

まず、「今、勤務している会社の事業目的」と、「その組織の中で、自身が果たした役割」、そして「成果(経営・事業にどのような影響を及ぼしたのか)」まで職務経歴書に記載し、経営視点をもって業務に取り組んできたことを伝えることが大切だ。

また、経験が豊富であるゆえに、記載内容は多岐に渡り、結果、強みが伝わりにくくなっているケースが意外と多い。応募をする企業が上場企業であれば、投資家情報などの資料を活用して現状を考察し、経営・事業課題を想像することからはじめる。そして、応募ポジションに求められる役割に落とし込み、その会社に合った売り込みの「テーマ」を見つけて、過去の経験から、「自分ができること、貢献できること」を明確に伝えることを意識するといいだろう。

転職を希望する会社に「この人に会ってみたい」「この経験についてもっと聞きたい」と思われる書類を作成することが大事だ。そうすれば、面接の場では、自分の強みについて話ができる。いかに自分の土俵で勝負ができる状況を書類選考の段階で仕上げておくか。それが年収1000万円での転職のカギを握るといってもいいだろう。

リクルートエージェントのデータでは、年収1000万円以上で転職を果たす人は、年収も上がる傾向にある。実際、2017年度上期の集計(2017年度上期に転職を実現した、求職者の転職前の申告年収と転職決定時に提示された理論年収を比較)では、約7割が年収アップを実現させた。外の世界(転職市場)に目を向けて、行動を起こしてみることで、現職以上のやりがいと報酬をつかむチャンスが広がってくる。