カイル・エドモンド【写真:Getty Images】

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49位の英国の新星エドモンドが3位のディミトロフ破る、英紙「突風を起こした」

 テニスの全豪オープンは23日、男子シングルス準々決勝が行われ、世界ランク49位のカイル・エドモンド(英国)が6-4、3-6、6-3、6-4で同3位のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を破る金星を挙げた。大会公式ツイッターは「キング・カイル!!!」と称賛。英メディアも続々と快挙をたたえた。

 2時間49分の熱戦を制し、自身初のグランドスラム4強入りを決めた23歳の新星・エドモンド。英国勢ではアンディ・マレー以来の4強入りで、全豪オープン公式ツイッターは「マレーを除くと、1977年以来準決勝へ駒を進めた最初のイギリス人となった」と快挙をたたえた。

 英メディアも続々とマレーに続く“英国の新星”に反応。イギリスの公共放送「BBC」は「カイル・エドモンドがグリゴール・ディミトロフを呆然とさせる」と大きく取り上げれば、英地元紙「デイリー・テレグラフ」電子版も「カイル・エドモンドがグリゴール・ディミトロフを退け全豪オープンのレールに突風を巻き起こした」と見出しをつけて絶賛した。全豪では5度ファイナルに進んだマレーも自身のツイッターで「Wow!」とコメント。“後継者”の活躍に驚いた様子だった。

前回の対戦ではディミトロフに“救助”されたエドモンド。痛烈な“恩返し”を果たした

 実はエドモンドとディミトロフの対決には“伏線”があった。今月5日、2018年の男子ツアー今季開幕戦・ブリスベン国際でのこと。最終セット、4-4と接戦を演じていた第9ゲームの最中。ベースライン付近でエドモンドが声を上げ、突然、コートに倒れ込んだ。ラケットを手放し、両手で右足付近を押さえ、うずくまった。故障か――。会場の誰もが息をのんだ次の瞬間だった。

 対戦相手のディミトロフは血相を変え、ネット方向に猛ダッシュ。そして、ラケットを手にしたまま豪快にネットを飛び越え、全速力で倒れ込んだエドモンドのもとへ、関係者よりも早く駆けつけた。心配そうに二言、三言声をかけ、苦悶の表情のエドモンドが起き上がろうという素振りを見せると、両手で引っ張り上げたのだ。

 ディミトロフの行動とエドモンドの闘志に会場は一躍、拍手喝さいに包まれた。それでも、ディミトロフの行動は終わらない。自分と相手のラケットを拾い上げると、エドモンドに肩を貸し、腕を支えたままベンチまで寄り添ったのだ。およそ15メートルの距離を25秒かけてゆっくりと。その間、会場の拍手が鳴りやむことはなかった。

 当時、海外メディアで「スポーツマンシップの終着点」とたたえられたディミトロフ。あれから18日後、エドモンドが当時の“恩返し”を痛烈な形で果たしてみせた。

 ブリスベン国際で敗れた借りを返した格好にもなったエドモンド。オンコートインタビューでは「ディミトロフはこれまでハードな戦いをしてきた。消耗していたから、彼にとってタフであることはわかっていた」と最後まで相手を気遣う気持ちを忘れなかった。(THE ANSWER編集部)