「ブライトバートのサイト」より

写真拡大

 トランプ米大統領の最側近であったスティーブ・バノン前首席戦略官は昨年の11月と12月に来日していた。11月の来日は人権団体の招きによるものであり、その際に朝日新聞やNHKのインタビューに応じた。12月の来日は、保守系イベント「J-CPAC」の招きによるものであり、その際にバノン氏は、自身が会長(すでに辞任)を務めていた保守系ネットメディア「ブライトバート」の日本版をつくることを宣言した。

●ドメインはすでに確保

 日本版「ブライトバート」の住所となるドメイン「breitbart.jp」は、すでに確保されていた。取得しにくい「.co.jp」ではなく、「.jp」ドメインという比較的安価で取得しやすいドメインであり、使用料は1年間2,000円程度とされる。
 
 そのドメインを取得しているのは、木本亮(きもと・あきら)という人物である。木本氏はドメインを昨年11月29日に取得し、今年11月30日まで有効である。木本氏は、警護ユニット「SP7」を主宰し、フジテレビの連続テレビドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』の監修、NHKドラマ『4号警備』の考証を行ったことで知られている。大分県に生まれ、京都大学工学部を自主退学した木本氏は、ロンドンで要人警護学校を卒業、大手警備会社で要人警護の仕事などを行う。また、書籍『SPのお仕事』(産経新聞出版)の著者のひとりであり、同書では要人警護のノウハウが詳細に記されている。

 木本氏に直接メールで取材を申し込んだところ、木本氏は「ドメイン登録をしていることはご承知の通り事実であり、登録者情報が公開されていますことも存じ上げております」と答え、自身がドメインを持っていること自体は認めている。

 しかし、米国のブライトバートとの関係や、ブライトバート日本版の計画との関係などについての質問は、「いただきましたご質問にはお答えを控えさせていただきたく、何卒宜しくお願い申し上げます」として答えなかった。進行中の案件であり、まだ発表できるものでもないだろう。そして、木本氏がSPの仕事をやっていたということもあり、秘密主義でこの案件を進行しているというのもあり得る話である。

 昨年11月29日にドメインを取得したということは、バノン氏が来日したあとであり、おそらくそこでバノン氏らと木本氏が接触し、木本氏がドメイン取得に動いた。ドメインを確保したことをバノン氏に伝えた上で、バノン氏はブライトバート日本版の計画を発表した、ということだろう。

●ブライトバートとは何か

 ブライトバートは、アメリカの右派系ニュースサイトである。ニューヨーク・タイムズなどの一般メディアからは、フェイクニュースの温床であり、差別主義的な記事を発信しているとよく指摘される。

 2005年にアンドリュー・ブライトバート氏がサイトを立ち上げ、12年にはバノン氏を雇い入れ、動画にも力を入れた。ブライトバート氏は12年に亡くなった。それまではまとめサイト的なつくり方をしていたが、以降、独自記事中心のサイトづくりに変化させていった。
 
 ブライトバートが読まれるようになるにつれて米国では右傾化が進行し、トランプ躍進の原動力となった。日本には、米国の「バズフィード」や「ハフィントン・ポスト」が進出してきており、ほかにもさまざまなニュースサイトが生まれ、多くの人に読まれている。

 一方で、まとめサイトが右寄りの論調をつくり出し、「日本文化チャンネル桜」などの右派系動画サイトも影響力を持つようになっている。また、既存メディアでは産経新聞のニュースサイトが右派的な論調を強く押し出し、記事が無料で読めることから、ナショナリズムが広まりやすい状況になっている。

 こうした状況のなかでブライトバート日本版ができることは、日本のネットの論調がさらに右に傾くことになり、非常に危険であると筆者は考える。米国の右派は、人種差別主義的な主張を前面に押し出しており、その主張のなかには外国人に冷たい日本を高く評価しているものもある。ブライトバート日本版は、すでに動きだしている。ただし、今後のブライトバートとトランプ政権の関係、それにともなう本国でのブライトバートの経営状況の変化によっては、計画が頓挫してしまう可能性もある。
(文=小林拓矢/フリーライター)