ウイスキーの愉しさは香りと味わいにある。ただ、それだけでは何かが足りない。その酒が造られた蒸溜所の風土や、あるいは小道具にまつわる逸話に想いを馳せてみる。そんな「物語」と遊ぶのも、ウイスキーの愉しみではないだろうか。ウイスキーの奥深い世界の扉を開いてくれる東京でおすすめする「語り部のいるバー」をご案内。

もっと知れば、もっと美味しい 物語のあるウイスキー

英国の上流階級のお屋敷で、主人が大切な客人をもてなしているとしよう。豪勢な食事を終えて、シガーとシングルモルトを振る舞う段になると、主人は執事を呼んでこう言う。

「このお方は特別なお客様だから、いつものボトルではなく、タンタロスをお持ちしなさい」


「タンタロス」とは何か。即答できる日本人はごくわずかしかいないんじゃないかな。いまさら通ぶって希少な銘柄の話をしても新味がないだろうし、だいたい私はその手の薀蓄に興味がない。
今日はこうしてわざわざ取材に来てくれたんだから、少し変わった角度からウイスキーの愉しみ方を提案してみようかと思います。

私の左手にあるコレを見て欲しい。スコットランドの蒸溜所に樽を買い付けに行った際にエディンバラのアンティークショップで見つけた古い「タンタロス」なんだが、ひと言で言えばウイスキー用のデキャンタだね。
でも外側を覆う台座には鍵がかかっていて、そのままでは瓶を取り出すことができないようになっている。
タンタロスというのはギリシャ神話が由来で、「欲しい物が目の前にあるのに手が届かないじれったい苦しみ」を意味する言葉でもある。

鍵はもちろん主人が持っている。つまりデキャンタの中身にアクセスできるのは主人だけ。使用人が主人の目を盗んでこっそり味見をすることもできないし、そればかりか中に入っているウイスキーの銘柄は主人だけが知る「秘密」にしておくことだってできるわけです。うがった見方をせず普通に考えれば、中身はきっととびきりの上モノでしょう。

しかし元のボトルのまま出せばそこにはラベルがついている。客人がよほど無知な男でなければ、高価な酒の素性が分かってしまう。私が想像するに、タンタロスが生まれた背景にあるのは、「ひけらかさない」「自慢しない」といった英国一流の“アンダーステートメント”でしょうね。

ウイスキーは、スコットランドの厳しい自然と何十年もの時間が育むすばらしい嗜好品です。その愉しみは香りと味わいにこそある。なのに私たちは本来の味そっちのけで、値段や熟成年度、樽の種類をはじめとした「情報」に振り回されがちです。知識を蓄えるのは悪いことではないが、ある程度のところでいったんそこから手を離してみてもいいんじゃないかな。
頭ではなく、自分の鼻と舌が「うまい」と判断するものを素直に愛すればいい。タンタロスの存在からは、そんなことも学んだ気がしますね。

この部屋にはシングルモルトのボトルが常時250本ぐらい林立していますが、私の自慢は銘柄やスペック云々ではなく、抜栓していないものがただのひとつもないことです。ボトルに対する執着もない。どんなに希少な一本でも、飲み終わったらさっさと捨てる。
なぜなら、私は「コレクター」ではなく「愛好家」だから。
 

ちなみに私のタンタロスの中身は、在りし日の開高健さんが愛した思い出深い銘柄「マッカラン」です。ただしそれ以上は「秘密」のままにしておきますか。

蒸溜所からウイスキーの逸話まで楽しめる 語り部のいるバー

バー オーディン 恵比寿店(最寄駅:恵比寿駅)

アルコール度数は57%とかなり高いが、上品で深い味わいの「カリラ」

『バー オーディン』のオーナーバーテンダーの菊地貴彦さんが初めてスコットランドの地に立ったのは27年前のこと。名だたる蒸溜所を訪ねて回ったという。「当時は名物マネージャーといわれる人たちが健在で、彼らに案内してもらったのは忘れがたい思い出。訪れる人も少なく蒸溜所には家庭的な雰囲気があった」と菊地さん。その時の体験、現地で見た風景が菊地さんのウイスキーへの深い造詣を培ってきた。

出典: https://matomeshi.jp/articles/2115

東京都渋谷区恵比寿1-8-18 K-1ビル 地下1階 
[TEL]03-3445-7527 
[営]18時〜翌3時(翌2時半LO)、祝18時〜24時 
[休]日 
[席]カウンター10席、テーブル8席 計18席/喫煙可/予約可/カード可/サ10%、お通し代なし 
[交]JR山手線恵比寿駅西口から徒歩1分

Shot Bar ゾートロープ(最寄駅:新宿駅)

出典: https://matomeshi.jp/articles/2116

飲食店限定の「富士山麓」3200円(1ショット)。まろやかで豊かな味わいだ。日本ウイスキーと映画が好きという堀上さん。バックバーには地方の酒販店のオリジナルものまで揃う

「日本のウイスキーはスコッチの製法を踏襲しているものがほとんどですが、キリンウイスキーは国産の中でも少し特別。カナディアンウイスキーの流れを汲んでいるので、ほとんどバーボン樽しか使わないんですよ」と語るのは『Shot Bar ゾートロープ』のバーテンダーの堀上敦さん。

出典: https://matomeshi.jp/articles/2116

東京都新宿区西新宿7-10-14 ガイアビル3階 
[TEL]03-3363-0162 
[営]17時〜24時15分(23時45分LO) 
[休]日・祝 
[席]カウンター8席、テーブル10席 計18席/喫煙可/予約可/カード可/サなし、お通し代600円別 
[交]都営地下鉄大江戸線新宿西口駅D5出口から徒歩2分

ドンナ・セルヴァーティカ(最寄駅:渋谷駅)

2006年に瓶詰された「アードベッグ/1990 アリナームビースト」。「チョコレートアソート」は1人分1700円。良質なカカオ豆を使ったファインチョコレートは常時40種類ほど

上質な調度品、ゆったりとした空気感。バーで過ごす時間はそれだけで贅沢だが、ここでは『ドンナ・セルヴァーティカ』のオーナーバーテンダー・古屋敷幸孝さんに導かれて、チョコレートとウイスキーの世界へ旅立ちたい。

出典: https://matomeshi.jp/articles/2117

東京都渋谷区神南1-3-3 サンフォーレストモリタビル4階  
[TEL]03-6416-9272 
[営]18時〜翌2時(翌1時半LO) 
[休]日 
[席]カウンター6席、テーブル6席 計12席/喫煙可/予約可/カード可/サなし、お通し代1000円別 
[交]JR渋谷駅ハチ公改札から徒歩10分

バー・フィンガル(最寄駅:飯田橋駅)

出典: https://matomeshi.jp/articles/2118

アイリッシュを代表する「ブッシュミルズ」と「ジェイムソン」。口当たりは滑らか

「ウイスキーの魅力は味のバラエティの豊かさにある」と『バー・フィンガル』のオーナーバーテンダーの谷嶋さん。「蒸溜所詰めのほかに、ボトラーズ・ブランドもある。少量生産なのでボトルごとに味わいが変わるのも面白いですね。今まで定番品しかなかったアイリッシュウイスキーも、最近は限定品やボトラーズ・ブランドが出て評判が上がっています」と教えてくれた。

出典: https://matomeshi.jp/articles/2118

東京都新宿区神楽坂3-1 美元ビル1階 
[TEL]03-3235-2378 
[営]19時〜翌1時 
[休]日・祝 
[席]カウンター11席、テーブル5席 計16席/喫煙可/予約不可/カード可/サ10%、お通し代1000円別 
[交]地下鉄東西線飯田橋駅B4出口から徒歩5分