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■男性の所得が高いエリアほど専業主婦が多くなる?

「女性が活躍できる社会を目指します」。行政も企業もこんな目標を掲げ、女性が働きやすい社会の実現のためにさまざまな取り組みを進めている。ところが調べてみると、女性の働きやすさには、都道府県ごとに明らかな差があるのだ。なぜか?

「同じ日本国内なのに大きな差が生じる原因のひとつに、『県民性』があります」と言うのはナンバーワン戦略研究所所長の矢野新一氏。県民性とはその土地の気候や産業構造、歴史的な経緯などによって、長い年月をかけて形成された人々の性格や行動の特色をいう。

「たとえば高知の女性は、土佐弁で“はちきん”といって行動的なタイプが多い。そのせいか女性管理職比率が22.7%と全国トップです」(矢野氏)

一方、労働経済学の視点から分析するのは、京都女子大学客員教授の橘木俊詔氏。

「“ダグラス・有沢の法則”という経済学の法則をご存知ですか? これは“資本主義国では、夫の所得が高いと妻が専業主婦になる確率が高くなる”というもの。これを日本の都道府県にあてはめてみると、極端に高い所得を得られる仕事は東京や大阪などの大都市に集中していますから、大都市には裕福な夫を持つ専業主婦が多くなる。したがって女性活躍度も低くなりやすいのです」

女性活躍の格差にはさまざまな要因があり、一概に原因を特定することはできない。とはいえ目を凝らせば一定の傾向が見えてくるはず。果たしてあなたの住む県は……?

■中国・北陸はワーママ率高。大都市圏は主婦が多い?

北陸地方は昔から育児をしながら働く女性の割合が高いことで有名。今回の調査でも3位福井、6位に富山・石川とベスト10に3県もランクインする大健闘ぶり。

「北陸3県は家が広く、3世代同居が多い。小さい子どもがいても祖父母が面倒を見てくれるので、女性が働きに出やすいのです」(橘木氏)

「3位の福井県は、もともと繊維産業で発展したところ。繊維産業で働くのは女性が多いので、結婚して子どもが生まれても働くのは当たり前だと考える人が多いのでしょう」(矢野氏)

一方、ワースト5には大阪や、東京のベッドタウンでもある千葉・埼玉・神奈川がランクイン。

「これはすでに述べた“ダグラス・有沢の法則”の応用で説明できます」(橘木氏)

高所得を得られる仕事は大都市に集中しているため、大都市で働く夫を持つ妻は専業主婦になる傾向があるという法則だ。

しかし、それでは最も仕事が多いはずの東京都が38位と最下位ではないのはなぜなのか。

「神奈川、千葉、埼玉は東京への通勤圏内ですが、都内よりも家賃が安い。だから専業主婦でもやっていけるのですが、都内では高い家賃が家計を圧迫するので、妻も働くのかもしれません」(矢野氏)

それになんといっても首都・東京には就労意欲の高い女性が多い。それが専業主婦率の高さと相殺されて、この結果になったのだろう。

■外国人労働者の増加が、男女の賃金格差に影響?

「1位の秋田県は美容サロンや理容サロンが日本一多い県。美容師さんや理容師さんなど手に職をつけている女性が多いので、男女の賃金格差が少なくなっているのかもしれません」(矢野氏)

2位と3位の沖縄と高知は、ともに女性の強い土地柄だ。3位の高知県は女性管理職率の高さが日本一でもあり、賃金格差が少ないのもうなずける。

一方、男性に比べて女性の賃金が日本一低いのは滋賀県だ。男性が100もらっているとすれば、女性は63.7しかもらっていない。この理由について橘木氏は次のように推察する。

「滋賀県は大都市・大阪に近く、その影響もあり、男性の所得が比較的高めです。一流企業の生産拠点(工場)が多く、男性向きの職種が充実している。工場の軽作業は女性が担うこともありますが、滋賀ではブラジル人など外国人労働者が増えているので、あえて女性を雇わなくてもいい環境になっている。これも、男女の賃金格差が大きい理由かもしれません」

また滋賀県は「近江商人」が活躍した土地として知られる。

「商人が活躍した地域では、女性が比較的早く結婚する傾向が見られます。その結果、男性より賃金が低くなることが考えられます」(矢野氏)

言われてみれば、確かに43位の山梨は甲州商人が、44位の愛知は尾張・三河商人が、45位の三重は伊勢商人が活躍した土地。説得力のある説だ。

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出典:育児をしている女性のうち働いている人の割合……総務省統計局「25〜44歳の育児をしている女性の有業率」/男女の賃金格差……厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2016年)」をもとに編集部作成

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矢野新一
ナンバーワン戦略研究所所長
東京都出身。市場調査会社、ファストフード業界などを経て独立。1990年より現職。『都道府県別ヒット商品の法則』『県民性は7392通り!』『「県民性」で結婚成就』など、県民性研究の第一人者としても知られる。
 

橘木俊詔
京都女子大学客員教授
兵庫県出身。小樽商科大学、大阪大学大学院を経て、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学名誉教授。著書に『東京大学 エリート養成機関の盛衰』『日本の経済格差』など。
 

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(ライター&エディター 長山 清子 写真=iStock.com)