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4K HDR記録に対応した「HXR-NX80」が登場!

2017年の年の瀬にSonyから新たに4K収録に対応した小型ハンドヘルドカメラPXW-Z90とHXR-NX80が発売される事となった。既にInterBEE2017で実機をご覧になられた方もいらっしゃると思うが、今回登場の2機種は既に発売されているPXW-X70の上位機種にあたる。

会場でこの2機種をご覧になられておやっ?と思われた方がいらっしゃると思うが、今回発売された2機種はPXW系とHXR系という2つ。この2台の大きな違いは扱えるファイル形式の差とSDI端子と言ったところだろう。外観はほぼ同じでPXW-Z90にはSDI端子が搭載されているくらいだ。この形はほぼ既に発売されているX70と同じである。

既に発売されているカメラのラインナップではZが付く型番は4K対応カメラだったので、HXR-NX80というNXシリーズの型番も4K対応となるという、型番からはどんなカメラか推察できなくなってきており、なんとも奇怪な状況になりつつある現状である。今回編集部よりHXR-NX80を預かったのでレポートしてみたいと思う。

SonyによればPXW-X70はディスコンとならず、今後も併売される予定。この事を踏まえ主な違いをまとめてみる。新旧の主な違いは下記のとおりである。

PXW-X70HXR-NX80PXW-Z90
センサー1.0型Exmor R1.0 型Exmor RS
ズーム光学12倍/超解像ズーム18倍(HD時24倍)
4K対応要オプション対応
AF方式コントラスト方式AF像面位相差検出方式+コントラスト方式AF
HLG/S-Log2・3-
HFR-
収録フォーマットXAVC Long、AVCHDXAVC S、AVCHDXAVC Long、AVCHD
SDI-
MCX-500タリー連携-

新型センサーのアドバンテージ

Sony HPより引用

今回Exmor RSという新しいセンサーが搭載された。このセンサーは位相差センサーと積層センサーが一体化された1インチサイズのセンサーである。画像処理エンジンはαシリーズにも搭載されている高速処理エンジンBIONZ Xを搭載したため、273点の測距の像面位相差情報によるオートフォーカス制御機能により、従来機より速度、精度ともにかなり高速化し、よりクレバーなカメラへと進化した。

高速かつ賢いAF

進化したポイントをいくつか紹介してみたいと思う。中でもAFの制御方法を状況に合させて変更できるようになった点は大きな進歩だ。

設定メニューにより、フォーカスのトラッキング幅を奥から手前までの広い範囲にするか、または狭い範囲にするかなどの選択が出来るようになった。また動きのある被写体に対する追従速度の設定やピントが外れた後の粘り具合など、撮影する被写体の動きに合わせたピントの調整が可能となった。さらにフォーカスを送る速度の調整も可能。X70よりもおよそ3倍速くピントを合わせることが可能になった。

SD時代からHDに変わった当初、ピントの問題が業界内で話題となった。解像度の低いビューファインダー内でピントを合わせても、実際の収録画像は微妙にずれているというトラブルが良く起こった。そして4K時代に突入となると実際問題、人の目で小型カメラのHD解像度に満たないデバイスでのピント調整というのはかなり難度が高くなってしまった。こう言う部分では信頼できるカメラであればある程度カメラに任せてしまったほうが結果的には良かったという事は多々あるようだ。本機での動くものに対するマニュアルピント調整はとてもハードルが高い。そこで道路を走行する車をAFで撮影してみた。

fig1 右上がマーカーFig2 グレーのマーカーが顔を追っているFig3 指定した車を追い続けた
(AF TRACKING DEPTH:5[フォーカス範囲広] AF SUBJ SWITCH SENS:5[敏感])

結果は非常に良好であった。こちらに向かってくる車にピントを合わせるために液晶部分をタッチすると、その部分を追従し始める。(fig1)途中手前を自転車に乗った学生が通ったが、補助的に顔認識がかかり顔を追ったのだが(Fig2)、そちらにピントを合わせるという事もなく指定した車両を追い続けるという結果になった。(fig3)今回は何度か試してみたが、どれもなかなかいい結果で途中被写体を外す事無くうまく追い続けてくれた。

この機能をうまく使う事により、列車や自動車レースなどのピント合わせにシビアなシーンでもそこそこ合わせてくれるのではないだろうか。

風景などはフォーカス範囲狭SENS粘るにするといいだろう

被写体の手前に人がいる場合など、動きの少ない被写体に対して粘ってピントを追う場合はDEPTHを下げ(フォーカス範囲狭)SENSを下げる(粘る)事で手前の人の動きに影響されにくいピントワークが出来るようになる。これらの機能をカスタマイズできるので、撮影条件に合わせた設定をすることで、マニュアルでは難しいシーンでもそつなくこなせるだろう。

ローリングシャッター歪を前モデルより低減

今回のExmor RS CMOSは撮像素子のすぐ裏側に高速信号処理回路を設けたことにより、今まで問題だったローリングシャッター現象(こんにゃく現象)を前モデルより抑えることが出来るようになった。今回高速で移動する電車をAX100と比較してみた。

 suzuki_EVA1_thinktank.jpgExmor R(AX100)
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 suzuki_EVA1_00003-5547b.jpgExmor RS(NX80)
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80km/h以上スピードが出ているであろう電車を近距離で真横からというかなり普通ではありえないフレーミングなのだが、これでおおよそのイメージは掴めるのではないだろうか。元々静止画で切り出す予定だったのでシャッタースピードを1/500に設定して撮影した。新開発のExmor RSの本機の方が以前のVerの撮像素子に比べ、ローリングシャッター現象が抑えられていることがお分かりいただけると思う。しかし、ストロボなどは今までと同じような映り方であった。読み出し方式がグローバルシャッター方式ではないのでこの現象はどうしても起きてしまうようだ。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2018/01/ong35_NX80_Still0105_00002.jpgXAVC S(HD)120fps
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本機にはスロー&クイックモーション機能が装備されている。このクイックモーション機能ではローリングシャッター現象は起こらない。ハイスピード収録する場合はローリングシャッターを気にせず収録できる(ハイフレームレートモードとは違いバッファ―に記録される分だけしか撮影できない※HDのみ)。

4K HDR

今後発売される家庭用4Kテレビは、HDRに対応する機種の割合が確実に増えていくことが予想される。実際にHDRの映像をご覧になられた方なら解像度以上のインパクトのある映像に驚かれたのではないだろうか。そのようなトレンドの中で本機もHDR対応と進化しS-Log2・3、HLG BT.2020に対応した。

HLGとはHybrid Log-Gamma(ハイブリッド・ログ・ガンマ)といい簡単に言うと放送に特化し、ガンマ特性を持たせたハイダイナミックレンジな輝度に対応した規格である。またBT.2020は現在のRec.709より広い色域をカバーする規格となっている。Log収録はグレーディング作業が必要となる事から作業時間やコストの面でなかなかハードルが高いという声を聞く。もっと手軽にHDR制作を行うなら今後、今回搭載されたBT.2020 HLGでの収録を用いる事でグレーディング不要のシンプルなHDR制作が実現できるのではないだろうか。

X70まではピクチャープロファイルが6種類だったが本機から10種類に増えた。新たに追加された部分は

  • PP7 S-Log2ガンマとS-GAMUTカラーモード
  • PP8 S-Log3ガンマとS‐GAMUT3 CINEカラーモード
  • PP9 S-Log3ガンマとS-GAMUT3カラーモード
  • PP10 HLG2ガンマとBT.2020カラーモード

が追加された。これはあくまでもメーカー設定のおすすめPPなので、今までと同じように設定を自由にカスタマイズできる。特に今回のHDR関連の設定項目はGAMMA部分で4種類(HLG、HLG1、HLG2、HLG3)、カラーモードで2種類(BT.2020、709)用意されている。

HDRについてはSonyのWebサイトで詳しく説明されているので一読いただければと思う。

スーパースローの強化

スロー&クイックモーション(以下:S&Q)は、1fpsから120fpsまで無制限で記録できるようになった(4K/HD)。また、スーパースローは240-960fpsまで記録可能に(HDのみ)。S&Qは任意のフレームレートでの撮影をそのままSDカードに記録していく。かたやスーパースローはカメラ内のバッファに高速で書き込みバッファが一杯になった時点でSDカードに記録するという違いがある。240fpsの場合およそ8秒間収録ができる(HD)。

低ノイズ

比較的暗い環境でのノイズの出方を比べてみた。

GAIN 0dBGAIN +33dB

極端に+33dBまで上げてみたが非常にノイズの乗り方が少ない。暗い環境での撮影なら+18dBでも問題ない範囲ではないだろうか。

その他の機能

MCX-500との連携によるタリー表示が可能となった。HXR-NX5Rが対応したことにより今後のSonyのハンドヘルドカメラはこの機能がスタンダードになるのではないかと思う。

細かい部分をはしょってのレポートだったが、気になった点が1点見つかった。それはマニュアルでのズームを行う時、レンズ部分に付いているリングを回すのだが、ゆっくり回すと引き尻から、ズーム最遠端まで360°以上回ってしまう。実際には450°程度まで回ってしまった。これは機械式ズームではないので回すスピードを速くすれば270°程度で回りきってしまう。それでも回転角が大きすぎる。試しに筆者所有のAX100で比較してみたがこちらの民生旧モデルはおよそ120°で回りきる。多分発売時には修正されているのではないかと思う。

総括

今回のラインナップでHXR-NX80とPXW-Z90は、本体・機能に関しては全く同じで、SDIが付くか、付かないかの違いだけで型番がだいぶ違うというユーザーにとっては??という感じがしてしまうが、もしかすると本機は今後のSonyの業務用カメラがどういった道に進んでいくかの分岐点になるカメラかもしれない。というのも使用している撮像素子はαシリーズと同じ技術で作られた2100万画素の1.0型CMOSであることが大きなポイント(FSシリーズではSuper35mmサイズでおよそ830万画素)。画像処理エンジンもαシリーズとの融合が図られ、より高度に進化した事を考えると今後のSonyの動きからは目が離せない。