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前回は、航法の土台となる測位手段のうち、「イントロ」にあたる部分の話について説明した。今回はその続きで、戦後に広く使われるようになった無線航法支援システムと、機上で自律的に測位する手段の話をしよう。

○NDBとADF

前回に、「航空灯台」の話を書いた。これは船舶向けの灯台と同じで、光を出している。つまり、可視光線に頼った航法支援手段である。それでは悪天候の際に見づらいし、高度が高くなった場合も同様である。そこで、光の代わりに電波を出せば問題解決である。

ということで登場したのが、無指向性無線標識(NDB : Non-Directional radio Beacon)。長波(LF)あるいは中波(MF)の電波を出すのだが、指向性はなく、全周に渡って同じように電波を出す。

使用する周波数は160〜535kHz(200〜415kHzとする資料もあった)、あるいは1,605〜1,800kHzの範囲内で、NDB局ごとに周波数を変えている。送信する内容はモールス符号で、振幅変調(AM)を用いている。モールス符号だけが聞こえるラジオ放送みたいなものだ。

機上では、受信機として自動方向探知機(ADF : Automatic Direction Finder)を装備する。ADFのチャンネルをNDB局の周波数に合わせると、ADF計器の針が動いて、指定したNDB局電波の到来方向を表示してくれる。ADFが2セットあって、2カ所のNDB局から電波を受信できれば、それぞれのNDB局から引いた方位線が交差する場所が自機の位置ということになる。

また、自機がNDB局の直上を通過すると、その瞬間にADFの針がクルンと後ろを向く。それによって直上を通過したとわかるので、自機の位置はすなわち、受信対象に指定していたNDB局の位置ということになる。

考え方はわかりやすいのだが、1つ問題があった。長波や中波という低い周波数の電波を使用しているので、遠達性がある一方で、雷雲などによる邪魔が入りやすいのだ。実際、ある墜落事故では「本当はNDB局の上空に到達していなかったのに、雷雲の影響でADFが誤作動して針が反転したために位置を見誤り、山に突っ込んだのではないか?」との説が取り沙汰されたことがあった。

○VORとDMEとTACAN

その信頼性の問題と、無指向性という動作原理に起因する限界から、NDBとADFの組み合わせは廃れて、後から登場した超短波全方向式無線標識(VOR : VHF Omnidirectional Range)に置き換わっていった。VORの特徴は、電波の周波数に超短波(VHF、108.0〜117.95MHz)を使用するところと、指向性があって方位情報を得られるところである。

ただし、得られる方位が磁方位である点に注意が必要だ。御存じの方が多いと思うが、磁方位と、北極点・南極点を基準とする真方位にはいくらかのズレがある。もっとも、滑走路の方位を示す番号も磁方位に基づいて設定しているのだが(この話は、後日に取り上げる)。

ただし、VORでは距離はわからない。そこでVOR局に距離測定装置(DME : Distance Measuring Equipment)を併設する。機上のインテロゲータから出す電波は1,025〜1,150MHzの範囲内、DME局のトランスポンダから返ってくる電波は962〜1,213MHzの範囲内で、送信側と応答側の周波数には63MHzの差がつくようになっている。

機上からDME局に対して電波を出すと、それを受けたDME局から応答が返ってくる。応答が返ってくるまでの所要時間により、距離がわかる。ただし飛行機は上空にいるから、地図上の平面距離ではなく、高度を加味した斜めの距離になる点に注意が必要である。

ともあれ、VOR局にDMEを併設すれば、VOR局からの方位情報にDMEで得られる距離情報を加味することで、自機の位置を割り出すことができる。

VORとDMEの組み合わせと同じ機能を実現するが、周波数が違うのがTACAN(Tactical Air Navigation)。これは軍用で、使用する電波は極超短波(UHF、960〜1,215MHz)。TACANが持つ機能のうち、距離測定機能は民間機も利用できるようになっている。

陸上だと、軍用機と民間機の両方を相手にするために、VORとTACANを併設していることがある。これをVORTACという。航空機を搭載する軍艦も、マストの最上部にTACANのアンテナを備えており、自艦の搭載機が迷子にならないようにしている。陸上と違い、空母や水上戦闘艦は「動く飛行場」だから、ちゃんと誘導しないと自艦の搭載機が戻ってこられない。

○1次レーダーと2次レーダー

ともあれ、こういった航法手段の充実によって「ここはどこ?」の問題は解決した。では、「私は誰?」についてはどうか。実は、第82回「特別編・2次レーダーとスコーク7700」で取り上げた、2次レーダーの話になるので、ここでは割愛する。

1次レーダーによって、上空を飛んでいる飛行物体の位置(3次元レーダーなら高度も)がわかるし、2次レーダーを併用すれば正体もわかるというわけだ。その情報を使って管制業務を行うわけだが、その話は追って取り上げる。そこに話を進める前に、もう1つの測位手段の話をしておかなければならない。